アラフォー・イン・ザ・ライブハウス -中年はライブハウスでどの様に行動しているのか-

執筆: 藤井洋子 アイコン 藤井洋子

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『ライブハウスに行く』というと、若い世代の楽しみと思われがちですが、最近のライブハウスには中年の姿も多く見られます。かく言う私も、現在アラフォーながら月1回のペースでライブハウス通いをしているクチです。 というのも、現在の40代はインディーズバンドが華やかな時代に青春を送っており、音楽を楽しむ場としての『ライブハウス』に馴染んでいる人間が多いのです。さらに、当時のバンドが今も活動していたり、あるいは解散を経て再結成していたり。 ……結果として、いい年になってもライブハウス通いを続けてしまう、という訳です。 しかしながら、20代と40代ではライブの楽しみ方にも自然と差が出るものでして、今日はアラフォーがライブハウスに行くとどうなるか、という話をしたいと思います。
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アラフォーはどこにいる?

そもそも、ライブハウスで40代なんて見た事ないよ!という方。それはあなたが周りをよく見ていないからかもしれません。フロアで派手に飛び跳ねたり、肩車されたり、人の上を乗り越えていったりする人に目を奪われていませんか? そういう人達は大抵が若者です。 では、アラフォーはどこにいるかというと、実は最前列と壁際にいます。ライブハウスはどこも薄暗く、客の顔はよく見えないから分かりにくいですが、そこにはちゃんと”居る”んです……。 一見、最前列と壁際には共通点がないように思えるかもしれませんが、実は双方とも、アラフォーがライブハウスを楽しむ為に重要な要素があります。それは「支え」です。 そのあたりの話をする前に、まず、年齢による変化の話をしましょう。

年齢による変化

私は35歳を過ぎたあたりで、自分の変化をはっきりと感じました。 具体的に言うと、脳内でイメージする体の動きと、実際の動きにズレが生じてきたのです。 さらに、自分の体の先端まで神経が行き届かない感じが出てきました。普段の生活でも物を落とす事が増えたし、ちょっとした段差でつまずきました。同じように、ライブハウスでも足元や指先に神経が行き届かず、他人の足を踏んだり、振り上げた手が隣の人に当たってしまったりするのです。 こうなると何が起こるかと言うと、まず踊れなくなります。 たとえば、10年通っているバンドのライブでも、10年前から聞いている曲は、若い頃から身に染み付いた感覚で踊る事ができます。 ……しかし、半年前に発表された新譜を憶えるのには苦労します。 運動神経も反射神経も鈍っているので、キメの音から半拍遅れて手を挙げてしまう……といった事が発生します。さらには持久力も落ちてきて、若い頃のようにずっと腕を振り上げている事もできません。 そして、1曲終わると何かに掴まって息を整えるというスタイルがルーティーンになってきます。

アラフォーの生息エリア

結果として、全曲は踊れないけど、ある程度は楽しみたい!というレベルのアラフォーは最前列かフロアにある柵のところに行きつきます。1曲終わるごとに柵に掴まって呼吸を整えている人がいたら、それはほぼ『アラフォー』でしょう。 一方、もう踊るのも大変、というレベルのアラフォーは柵よりも壁際に居る事が多いでしょう。若い子に混じる元気はないけれどライブは見たい、というのがこのタイプ。 腕を組んでいたりして、傍目にはスカした客に見えるかもしれませんが、そんな人も実はライブを楽しんでいるんです。

アラフォーはモッシュができない

そんな私も、若い頃はモッシュ&ダイブ派でした。 つまり、フロアの真ん中で誰かとぶつかったり、知らない人と肩を組んで飛び跳ねたり、他人の頭の上を乗り越えてステージに上がったり、さらに、そこからフロアに跳んだりするタイプの楽しみ方をしていたのです。 『モッシュ』とは、客同士がぶつかり合いながらグチャグチャに入り混じって踊る事を指し、このモッシュはフロアの真ん中で起こります。 ライブハウスを真上から見ると、ステージセンターの真正面に当たるフロアの中心から前方に掛けてが『モッシュゾーン(またはモッシュピット)』と呼ばれます。 モッシュをする人としない人は分かれているので、モッシュゾーンを取り巻いて『見えない壁』が存在します。その見えない壁からフロアの本物の(物理的な)壁に向かう左右から後方のゾーンが『安全圏』で、壁際が最も安全な場所となります。 20代の私は、モッシュゾーンで踊っているのが普通だったのですが、やはり35歳を過ぎてそこから退きました。 理由は簡単。踏ん張りが利かなくなったのです。 モッシュゾーンにいると、他人にぶつかられるのが当たり前です。20代の頃はぶつかられても、1歩か2歩で踏み留まれたのですが、35歳を過ぎるとそれが3歩か4歩になります。狭いライブハウスで4歩も流れたら、軽く2人くらいは突き飛ばしてしまいます。 自分が転ぶだけならまだ良いですし、モッシュゾーンの中であればお互いがぶつかり合うので何とかなります。ですが、モッシュの外側=『見えない壁』の向こう側に居る人達にまで迷惑をかけると、これは大問題です。 自分スタートで将棋倒しを起こしたくない!という思いから、私はモッシュゾーンを去り壁際組へとなったのでした。

アラフォー×ダイブ=肩を壊す

続いて、ダイブはどうでしょう。 ちなみに、『ダイブ』とはミュージシャンがステージから客席に飛び降りる事を言い、昔は客がステージに跳び上がる事を『逆ダイブ』などと言いました。 しかし、昨今ではミュージシャンが客席に飛んでくる事が少なくなった所為か、客が跳ぶ事を『ダイブ』と呼ぶのが一般的になっていますので、今回はそれで通したいと思います。 とにかく、その『ダイブ』をする為には、ある程度の人数が必要です。実際に跳ぶのは1人でも、ステージに辿り着くまでには多くの人に支えて貰う必要があります。(人間を持ち上げるには少なくとも2人、肩車だとしても1人は飛ぶ人と別の人のサポートが必要です) そんな訳でダイブをする客は、人の多いモッシュゾーンの中から生まれてきます。 近くにいる適当な人間の肩に手を掛けると、なんとなく空気を読んだ周りの人達の助力によって持ち上げて貰え、結果として人の波に乗り、ステージやその前の柵などへ至る……という流れです。 逆に、誰かがダイブしようとしている事に気がついた場合、それを可能な範囲で補助……相手の腰やベルトなどを掴んで……上へ向かって投げるような感じで思い切り押し上げます。私も同様の状況になれば、渾身の力で相手を持ち上げてきました。
編集部注 会場やライブによってはモッシュやダイブ、それらに類する行為が禁止されている場合がありますので、ルールを守るようにしましょう。また、禁止されていなくても著しく他者に迷惑となる行為は慎み、アーティストと会場、イベントの空気や、客層などを最大限に理解し、相互理解が得られた現場にのみに発生する、現象の一例としてお読みください。
  しかし、アラフォーの身で人を持ち上げると肩を壊すのです。 昔取った杵柄というやつでどうにか上げる事はできるし、ライブでアドレナリンが出ている所為か、その瞬間は大丈夫なのですが、翌日に異変に気づき、それから1週間は肩が上がりません。

アラフォーはライブの翌日以降も大変

何せアラフォーにもなると、流石に普通に仕事をしているので、肩が上がらないのは非常に不便です。そして、仕事というものは往々にして思わぬ事が起こるもので、こんな時に限って緊急会議が招集されたり、取引先の新しい担当者が挨拶に来たりするのです。 そもそも、ライブ翌日というのは仕事をするコンディションとしては決して良いものではありません。 まず、爆音にさらされた耳がよく聞こえず、会議で上司に質問されても聞き取れないのです。ひとくちに耳が聞こえないと言っても、年齢によってその影響は大きく異なります。 10代なら親の小言が聞こえなくてむしろ快適ですが、アラフォーが上司の質問を「はい?」などと聞き返し続けたら、他意があると勘繰られてさまざまな悪影響が発生します。 また、例えば肩が上がらない場合には名刺を出すにも一苦労。 相手には「どうしました?」などと訊かれ 「ライブハウスで人を投げたら肩を壊しました」 とも言えず、「いや、その……四十肩でして……てへ♪」などとごまかすしかありません。よく考えたら、ライブハウスで肩を壊すのと、四十肩どっちが恥ずかしいのか悩むところですが、これぞまさにアラフォーの冷や水。年甲斐のない事はするものでは無い、という結論に至るのです。

アラフォーは安全に跳べない

少し話を戻して、『ダイブ』の跳ぶ側。人を投げる時ではなく、投げられる時のアラフォーについてはどうでしょうか。 私は幸いにして10代の頃と殆ど体重が変わらないので、今でもダイブ自体は人に迷惑をかけない範囲で出来ると体形だと自負しています。しかし、無事に戻って来る自信がありません。 『遠足は家に帰るまでが遠足』 『ダイブは無事にフロアに戻って来るまでがダイブ』です。 そして、この『無事に戻る』というのは、自分だけではなく他人にも怪我をさせない、というのを含みます。35を過ぎると、これが難しいのです。 ダイブの際は、背中から移動するのがマナーだと思っています。つまり、仰向けになった体勢で、背中を沢山の人に支えて貰いながら、人の手から手へと移動し、然るべき所へ至り、そしてフロアへ跳ぶ時にはやはり背面跳びの要領で背中から下りるのがマナーです。 これは、支える側はうっかり触ってしまうとトラブルになる部位(女性なら胸、男性なら股間)を触る危険が減るし、飛ぶ側は万が一滑落してしまっても比較的痛くない、という理由から生まれた作法です。さらに運ばれている際には足を上げるのが鉄則です。そうしないと、誰かの頭を蹴ってしまいますからね。ブーツなどの打撃力の強い装備をしている時なら尚更です。
編集部注! 会場やライブによってはモッシュやダイブ、それらに類する行為が禁止されている場合がありますので、必ずそれらのルールを守りましょう。また、禁止されていなくても著しく他者に迷惑となる行為は慎んで、アーティストさんや会場やら、イベントの空気やら、客層を最大限に理解した上で、相互理解が得られた現場にのみに発生する現象の一例としてお読みください。
しかし、これがアラフォーにはなかなかの難題なのです。何せ、自分の体の隅々まで神経が行き届かないので、足先なんてもってのほか。 自分では足を上げているつもりでも、思ったほど上がっていない、という事態になるのです。そうなれば、意図せず他人の頭を蹴るのは必至です。 うっかりと他人の頭を蹴りたくない!と思い、私はダイブとも決別したのです。

ダイブの作法

そんな訳で自分ではモッシュもダイブもしなくなり、柵や壁際へと至った私ですが、やはり傍目には、モッシュもダイブも楽しそうだと思っています。 反面、年配者の常で「最近の若い子は……」という気持ちになる事もありますので、ここで少しだけ、前述の『ダイブの作法』について掘り下げておきたいと思います。
編集部注!! 会場やライブによってはモッシュやダイブ、これらに類する行為が禁止されている場合があります。また、禁止されていなくても著しく他者に迷惑となる行為は慎み、アーティストと会場、イベントの空気や、お客さんの顔ぶれなどを最大限に理解し、相互理解が得られた現場にのみに発生する、現象の一例としてお読みください。お願いします!
まず、運ばれる時は足を上げて他人を蹴らないようにするのが鉄則なのですが、これが守れていない人を時々見かけます。気持ちは分かりますが、腹筋や太ももなどに気を配って、足が人に当たらないような姿勢を心がけましょう。 また、蹴られる側に問題がある場合もあります。後ろから人が運ばれてきた時は、むしろ支える事に参加した方が安全で、下手に避けたりその場を逃げたりするとかえって危険です。避けた人の分だけ支え手が減り、その分、人の体が沈み、結果的に足も下に下がってしまいます。支えてあげればより高く上がるし、自分の手で相手の足を遠ざける事もできるので、蹴られるリスクが減るんですね。 支える義理なんてない!と人の思う気持ちは分からないでもありませんが、ババアっぽく言うなら『情けは人のためならず』です。巡り巡って自分が助かる、と割り切るのも、ひとつの考え方ではないでしょうか。 また、『足を上げる』とか『背中から下りる』といった事は、長い月日(?)によって培われた現場のマナーなので、守らないと手厳しい処分を受ける事があります。 若い頃、とあるライブで1人の客がステージからドロップキックのような姿勢で跳び下りたのを見た事があります。すると、その場にいた全員が一斉に避け、その客は足から落ちて悶絶していました。 客同士は基本的には他人です。マナーを守っていれば『お互い様』で支えて貰えますが、自分が怪我をしてまで赤の他人を助ける義理なんて誰にもありはしないのです。
編集部注…… 会場やライブによってはモッシュやダイブ、それらに類する行為が禁止されている場合がありますので、それらのルールに従いましょう。また、禁止されていなくても他者に迷惑となる行為は慎み、アーティストや会場、イベントの空気や、客層などを最大限に把握し、相互理解が得られた現場にのみに発生する、現象の一例としてお読みください……

まとめ

一般論として、ライブハウスにおけるアラフォーは割とおとなしく、無害な存在だと思います。中にはそうではない人もいますが、それは年齢とは関係がない個性の問題でしょう。 私個人としては、最前列にいるよりは、モッシュゾーンと安全圏の境目あたりにいて、時々モッシュ組を押し返す方が好きです。押し負ける事もありますが、まだそこそこ踏ん張れていると自負しています。 足を踏まれたり、突き飛ばされたり、肘鉄を喰らったりする事は、あまり気になりません。そもそも、ライブハウスにいるアラフォーはこの手の衝突に割と寛容だと思います。そのようなライブを20年も経験しているので『ライブハウスではぶつかる位は当たり前』という意識が根付いているからです。 少なくとも私は、ぶつかられるのが嫌な時は壁際にいればいいし、フロアに降りる以上はぶつかられても仕方がない、と認識しています。 だから、という訳ではありませんが、若い皆様にはリズムに乗り切れていないアラフォーに気づいても大目に見ていただきたい、と思います。古い曲の時だけノリノリなのは、昔からのファンである事を鼻にかけている訳ではなく、単に新しい曲を覚えられないからなのです。 『ロックを楽しむ』という事は『大人げなく生きる』という事とニアリーイコールなので、私はこれからもライブハウス通いを続けると思います。

好きな音楽を自由に楽しめる空間は尊いもの

ですから、どこかのライブハウスで動きの鈍いアラフォーを見かけたら、大人げない大人がいると思って、温かく見守っていただけると嬉しいですね。誰だって、歳をとらずに生きる事はできないのですから。 そして、もし年齢や、体力の劣えからライブハウスに行く事を躊躇している人が居たら、 『まだまだ現場には沢山の中年~アラフォー、アラフィフ、それ以上の人達だって来ていますよ!』 という事をお伝えして、当記事をしめさせていただきたいと思います。
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