仮面ライダーを描いたおすすめ漫画 石ノ森章太郎作品ほか、リメイク、オマージュなど

仮面ライダーは、現在でもシリーズ化されている特撮番組の傑作です。漫画家である石ノ森章太郎原作ではじまった1971年の特撮ヒーロー番組から、現代まで続いているというロングラン作品ですが、2023年には庵野秀明監督の映画『シン・仮面ライダー』が公開され、こちらもさまざまな評価を集めました。

ところが、その漫画となるとあまり身近ではないという人も多いのではないでしょうか。そこで当記事では、仮面ライダーを描いた漫画作品を10作品ご紹介します。

漫画で楽しむ『仮面ライダー』
本家 石ノ森章太郎作品ほか、リメイクや関連作品も

仮面ライダーは原作者が漫画家石ノ森章太郎な事もあり、漫画作品も数多く執筆されています。そしてTVシリーズをただ漫画化しただけ……というものはむしろ珍しく、TVと違う展開や、後日談を描いたもの、オマージュしたものなど、多様な作品を生み出すテーマとなっています。

その全てを網羅するというのはまた別の機会にするとして、この記事では新旧問わず10作品をピックアップしてご紹介いたします。

すべての原点『仮面ライダー』（著：石ノ森章太郎）

主人公本郷猛は秘密結社ショッカーによってさらわれ、バッタの改造人間にされてしまう。ショッカーの元を脱走した彼は仮面ライダーとなり、ショッカーと戦う決意をする……。

偉大なシリーズの原初となる仮面ライダーの漫画版は怪奇ホラーとも言える内容で、1970年代に問題となっていた公害をはじめとした社会問題などがテーマとなっています。特殊なアイテムを使って変身するライダーではなく、謎の組織によって体を改造されサイボーグ＝異形となった者の悲哀を感じさせる作品。

補足1： 仮面ライダーが企画された経緯

仮面ライダーが誕生したのは、1971年で、当時の東映プロデューサーである平山亨と漫画家である石ノ森章太郎によって企画されました。企画当初は『十字仮面（クロスファイヤー）』として進められ、オートバイに乗るヒーローという案は、この時点で顕在していましたようです。

スタイリッシュなヒーローが考案されていましたが、石ノ森が異形のヒーローにこだわったため、企画は二転三転、最終的にバッタをモチーフとしたヒーローとなりました。石ノ森が同氏の息子にデザイン案をいくつか見せたところ、バッタをモチーフにしたデザインを選んだため、現在の仮面ライダーになったという逸話も。

漫画版は、TV版と平行して石ノ森章太郎によって執筆され、中盤以降はＴＶと別のストーリー展開を描いています。

終末に現れた漆黒の仮面ライダー 『仮面ライダーBlack』（著：石ノ森章太郎）

ニューヨークの下水道に怪物が出るという噂を取材に向かうTVスタッフ。そこに居たのはワニのような怪人。スタッフに襲い掛かるワニ怪人を倒したのは、バッタのような怪人に変身した日本人青年……南光太郎でした。

1987年に放映された『仮面ライダーBLACK』の漫画版が『仮面ライダーBlack』。仮面ライダーの漫画作品としては石ノ森章太郎が執筆した最後の作品。

TV特撮版よりも生物的でグロテスクなデザインの仮面ライダー。そして80年代後半にあったオカルトブームの影響もあり、超能力や神秘現象などがテーマであり、終末論を感じさせるストーリー展開。……そのとてつもない結末は、今なおファンたちの間で語り継がれています。

人々の笑顔を愛したヒーロー 『仮面ライダークウガ』
(脚本：井上敏樹/作画：横島一/企画：白倉伸一郎)

長野県九郎ヶ岳にある古代遺跡でベルトを身に着けたミイラが発見される。別の怪事件を調査していた警視庁の刑事である一条は、事件の背後に古代遺跡と謎の怪人の存在にたどり着きます。捜査中に一人の男と五代雄介と出会いますが……彼は、古代遺跡で眠っていた戦士『クウガ』の力を受け継いだ男でした。

2000年に放映され、名優オダギリジョーが演じたことでも話題になった『仮面ライダークウガ』の漫画版。本作は、五代のパートナーである一条の視点から物語が始まっており、オリジナルキャラクターが多数登場するなど、漫画独自の展開が繰り広げられています。

補足2： 脚本家 井上敏樹について

漫画版の仮面ライダークウガの脚本を手がけているのは、脚本家 井上敏樹。彼は、『仮面ライダークウガ』（メインライターは荒川稔久）をはじめ、数多くの平成仮面ライダーシリーズで、脚本を手がけている人物です。

ハードなストーリーやクセの強いキャラクター造詣も特徴で、多くのファンから評価を得ています。同氏の父親は、初代仮面ライダーのメインライターを担当した伊上勝であり、親子二代で仮面ライダーの脚本を担当していることになります。

俺たちは、2人で1人の仮面ライダーだ！ 『風都探偵』
（脚本：三条陸/作画： 佐藤まさき）

『風都』という街で探偵をしている翔太朗は、T字路の魔女という追いはぎに遭遇した男から、魔女を探してほしいという依頼を受けます。捜査を進めると、その正体がときめという記憶喪失の女性である事にたどり着いた翔太朗ですが、同時にドーパント（怪人）と遭遇。駆け付けたフィリップと共に、翔太朗は仮面ライダーＷに変身して戦います。

半人前の探偵である左翔太郎と不思議な力を持つ少年フィリップのふたりが1人の仮面ライダーに変身する異色の作品が、この『仮面ライダーW』の漫画版。本作はテレビ放映版のその後を描いた作品で、新キャラクターの『ときめ』、物語の背後で見え隠れする『裏風都』の存在など、新たな展開が見所。

補足3： 脚本家 三条陸について

漫画『仮面ライダーW』の脚本を手がけたのは三条陸。彼は、90年代に絶大な人気を博したジャンプ漫画『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』や、『冒険王ビィト』『ジガ -ZIGA-（佐野ロクロウ名義）』の原作を手がけたことでも有名です。

にぎやかなキャラクターと巧みな構成力で、多くの人気作品を作り上げる同氏は、本作以外でも、『仮面ライダーフォーゼ』や『仮面ライダードライブ』、『キョウリュウジャー』など、多くの特撮作品も手がけています。

仮面ライダーを愛する気持ちなら負けない！
『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』 （著：柴田ヨクサル）

子どもの時から仮面ライダーに憧れる東島丹三郎は、体を鍛え続けます。とはいえ、自身が中年になる頃、さすがに人生に不安を覚えます。そんなある日、お祭の縁日でショッカー（のような強盗団）が現れました。とっさに仮面ライダーのお面を被り、強盗団を退治する東島。この出来事を期にあらためて仮面ライダーになることを決意するのですが。

『仮面ライダーに憧れるひと』を題材とした漫画作品。本作を描くのは『エアマスター』、『ハチワンダイバー』などの作者 柴田ヨクサル。スーパーヒーローという存在が一般化し、そんな彼らに憧れる一般人がヒーローを目指すというメタ的なプロットが楽しめるのは映画『キック・アス』などにもみられる、世界的な潮流なのかもしれません。

本作の世界にはどうやらショッカーは実在しているようで……そんな本物の悪の組織に対し、一般人がどうやって立ち向かうのか。興味深いところ。

危機に集結した10人の仮面ライダー
『仮面ライダーSPIRITS』（著：村枝賢一）

ニューヨークで変死体が発見され、その捜査に当たるFBIの滝和也。事件の背後に、大コウモリ怪人の存在があることを突き止めるも怪人に追い詰められる事に。そんな時、仮面ライダー1号が登場し、共に協力し倒すことに成功するが……、それは新たなる戦いの序曲に過ぎなかった。

本作を手がけるのは、『俺たちのフィールド』のヒットなどで知られる村枝賢一。本作は『アベンジャーズ』よろしく、昭和に活躍した仮面ライダーが集結し、新たなる敵『バダン』と戦うという、ファンなら胸が熱くなる内容。そのベースとなっているのは、やはり往年のファンなら思い入れの大きいであろう『仮面ライダーZX（ゼクロス）』です。彼が10人目の仮面ライダーとなり戦う、そんな過程が描かれています。

補足：4 仮面ライダーZX（ゼクロス）とは？

『仮面ライダーSPIRITS』で中心的な存在となる仮面ライダーZXは、テレビシリーズ化されていないライダー。雑誌やイベントなどで登場し、1984年にテレビスペシャル『10号誕生！仮面ライダー全員集合』で、はじめてテレビに登場するというその独特な出自は、ファンならずとも興味深いところ。

全身に武器が装着された仮面ライダーで、忍者のようにトリッキーな戦いをするのもユニークです。

絶望からショッカーにすがった者たち
『真の安らぎはこの世になく -シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE-』
(脚本：山田胡瓜/作画：藤村緋二)

緑川イチローは、ある日、通り魔に母親を刺されてしまいます。科学者である父親は、母を助けるためにとある組織に入ることになります。

しかし、結果的に母は亡くなってしまい、イチローは父親とともに、組織が運営する施設に引き取られることになります。

その組織は、とてつもない科学技術を持っており「SHOCKER（ショッカー）」と呼ばれていました。

映画『シン・仮面ライダー』の前日譚となる漫画。本作の主人公は、仮面ライダーの敵であるチョウオーグことイチローで、彼がいかにしてショッカーと関わっていくのかが語られています。また、映画に登場したオーグメント達も登場しており、彼らの背景も語られています。

シン・仮面ライダーの世界をより深く楽しみたい人は必読。

仮面ライダーの原型テロリスト 『スカルマン』（著：石ノ森章太郎）

人気女優の殺害、研究所施設の爆破。次々とおこる不可解な事件の背後には、不気味な怪人の姿がありました。その名はスカルマン。一方、事件の真相を追う立木興信所の元に、一人の男が雇われました。彼の名は神楽竜生（かぐらたつお）、彼の正体は……？

本作は1970年に発表された読み切り作品『スカルマン』。仮面ライダーの原型である事はファンの間では有名ですが、スカルマンはヒーローではなくテロリストという点も衝撃的。

同作は、1998年に島本和彦によりリメイク版漫画も描かれました。

補足5： 『スカルマン』とは

石ノ森章太郎は仮面ライダー企画段階で、一足先に誕生したスカルマンをモチーフにしようとしていた時期があったそうです。しかし、その出自やさまざまな理由によりこれは採用されず、結果としてバッタのヒーローとなりました。仮面ライダーとスカルマンは、善と悪、生と死という具合に、何もかもが正反対の存在となっていますが、社会悪に対する強い怒りという点では共通しています。

なおスカルマンは前述のとおり島本和彦によって再解釈された漫画が描かれたほか、『仮面ライダーSPIRITS』では武装した滝のコスチュームのモチーフとして、そして、『仮面ライダーW』では翔太朗の師である鳴海荘吉が変身する『仮面ライダースカル』と、さまざまな形でその存在が受け継がれています。

三頭身キャラのハードな戦いの物語 『仮面ライダーSD 疾風伝説』
（著：かとう ひろし）

かつて、ビッグウォーと呼ばれる大戦があり、戦いの果てに世界は荒廃。砂漠だらけの世界となった世界には、その征服をたくらむ悪の組織がグランショッカーが誕生。再び現れた巨悪の前に、伝説の英雄、仮面ライダー1号の魂を受け継いだ10人の仮面ライダー達が立ちはだかる……。

１号からRXまでの仮面ライダーが三頭身にディフォルメされた姿となって活躍する作品。1990年代にコロコロコミックで連載されました。SD化されたライダー達は見た目はコミカルですが、荒廃した世界を舞台としたハードなストーリー。映画『マッドマックス』のように、死の描写も容赦なく描かれています。

時を超えて蘇った伝説のコミカライズ作品
『尾瀬あきら版 漫画『仮面ライダーV3/X』（著：尾瀬あきら）

本作は1973年に雑誌テレビランドで連載された漫画。当時、子どもたちから絶大な人気があったものの、最近まで単行本化されず、2019年に復刊ドットコムによって書籍化されました。

作者の尾瀬あきらは『夏子の酒』の作者として有名で、石ノ森プロに在籍していたことがあります。当時は松本めぐむというペンネームでも執筆していました。

本作には、仮面ライダーV3とパートナーであるライダーマン、そして仮面ライダーXのエピソードが収録されています。V3では、少年ライダー隊達との交流が描かれ、ライダーマンでは結城丈二がデストロンにいたころの話が語られています。そしてXでは、幼馴染の女性との淡い恋物語が描かれています。

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まとめ

漫画家、石ノ森章太郎によって創られたヒーローという事もあってか、コミカライズの多い作品である仮面ライダー。この点は双璧をなすヒーローであるはウルトラマンとは大きく違うところと言えるかもしれません。

今後も続くであろう仮面ライダーの人気と共に、コミカライズや仮面ライダーに関わる漫画の登場にも注目したいところです。