USBメモリ、SDカードなどは、いずれも数センチのICチップにデータを記録する『フラッシュメモリ(Flash Memory)』に分類されるデータ記憶装置です。
パソコンやスマートフォン、デジタルカメラを利用する人にとっては、すっかり身近になったこのフラッシュメモリについて『フラッシュメモリ』について、その種類と特徴や違い、特徴をまとめました。
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代表的なフラッシュメモリ製品一覧
私たちが普段生活していてる中で関わる身近な所にもフラッシュメモリ製品は沢山存在します。 そこでまずはフラッシュメモリ製品の種類について代表的なものをまとめてみました。
USBメモリ(USBフラッシュメモリ)
USBフラッシュドライブはフラッシュメモリの代表的な製品のひとつです。 USBメモリーという呼び名の方が普及しているかもしれません。
PCにType-AのUSBコネクタが搭載されるのが一般的になり、手軽にデータを移動し持ち運べる外部ストレージとして、この『USB接続のフラッシュメモリ』が普及しました。 衝撃や粉じんなどにも比較的強く、軽く小さくポケットで持ち運べ、書き込み/読み込みが自由にできるUSBメモリは今やデスクトップPC/MacやノートパソコンやMacBookを使う層にとってなくてはならない製品と言えるでしょう。
デスクトップ型PCの携帯可能な外部記憶装置としては、フロッピーディスクの後、しばらく書き込み専用のCD-ROMが身近な外部記憶媒体となっていましたが、OS側の対応とUSBフラッシュメモリの低価格・大容量化に伴い、USBフラッシュメモリは急速に普及していきました。
コネクタ形状はUSB Type-Aの形状が多いですが、昨今はType-C型のものも発売されています。 メモリ本体側の形状は特に規定はなく、多種多様な製品が発売されているのも特徴です。
SDカード
SDカード(エスディーカード)も身近なフラッシュメモリ製品のひとつです。 後述するmicroSDカードの登場により『フルサイズSD』という呼ばれ方もします。
主に、デジタルカメラや、デジタルビデオカメラの普及と共にその記録媒体として普及していきました。
昨今は、コンパクトデジタルカメラや、スマートフォンの普及によりmicroSDカードのほうが身近になってきている感もありますが、まだまだ需要の多いフラッシュメモリ製品です。
microSDカード
より小さなSDカードとして登場したのが、このmicroSDカード(マイクロエスディーカード)です。
デジタルカメラや、小型のデジタルカメラ、携帯ゲーム機、小型のドライブレコーダーの普及などによって、一般ユーザーにとってはもっとも需要があるフラッシュメモリ製品と言えるのではないでしょうか。
miniSDカード
SDカードとmicroSDカードの中間くらいの大きさのフラッシュメモリカードとして、miniSDカード(ミニエスディーカード)という製品もありました。
2021年現在、既に見かける事はほとんど無く身近な製品とは言えませんが、念のため言及しておきました。
TFカード
TFカードは、SanDiskが2004年に策定した製品規格で『トランスフラッシュ(TransFlash Card)』の略。『T-Flash』とも。
その形状や技術仕様は、後発のmicroSDカードに引き継がれているのでほぼmicroSDカードと同じ意味(※1)と考えても良いでしょう。
昨今この記述を目にするとすれば、古い製品のマニュアル(※2)や、海外マニュアルの安い日本語訳などでしょうか。
※1:厳密にはmicroSDカードには記憶領域以外にもメモリに関連しない機能を搭載する事ができます。 上位発展型というとらえ方がより正確でしょう。
※2:古い製品のmicroSDカードを用意する必要がある場合にはサイズの規格(SD/SDHC/SDXCなど)に注意しましょう。 詳細はSD/MicroSDカードの規格について解説した記事をお読みください。
コンパクトフラッシュ
コンパクトフラッシュは、SDカードより前に登場し、デジタルカメラやデジタルビデオなどに利用されてきたフラッシュメモリ製品。
SDカードよりも大きく重量も重いですが、一眼レフなど高価格帯のデジタルカメラではSDカードとコンパクトフラッシュ両方に対応したモデルも多数存在していました。 一説にはSDカードは機器との接続用の金属部が露出しているため、うっかり静電気などでデータに破損がでる可能性があり、金属部の露出が無いコンパクトフラッシュの方がより安心……という意見もあったようです。
同容量のSDカードと比べるとかなり価格が高いというのも事実。 2021年10月現在、256GBのSDカードが5000円前後とすると、256GBのコンパクトフラッシュは28,000円前後。 プロユースとして信頼性を求めるのであれば……という選択肢でしょうか。
Type1(42.8 mm×36.4 mm×3.3 mm)という当初からの規格に加え、Type2(42.8 mm×36.4 mm×5 mm)という形状のものも存在します。
CFカード
CFカード(シーエフカード)という名称の製品はコンパクトフラッシュと同じものと考えて良いでしょう。
『コンパクトフラッシュ(CompactFlash)』という名称が、SanDiskの登録商標なため、同規格の同性能のものを、他社ではCFカードとして販売しているようです。機能や対応機器に関しても、ほぼ同じ。Type1とType2があるのも同様です。
フラッシュメモリの外部メディア全般に言える事ですが、SanDisk製品よりはリーズナブルな傾向があります。
CFast
CFast(シーファスト)は、コンパクトフラッシュの後継となるべく、2010年に発表された規格。 コンパクトフラッシュ/CFカードと形状は同じですが、互換性はありません。
一部のハイエンドデジタルカメラ、デジタルカメラに採用されたようです。
XQD
XQD(エックスキューディーメモリーカード)は、コンパクトフラッシュの後継となるべく開発・発表された規格で2010年に採用、2011年に公表されました。コンパクトフラッシュやCFastカードとは互換性はありません。
ソニーや、ニコンのハイエンドデジタルカメラなどに採用されているようです。
CFexpress
CFexpress(シーエフエクスプレス)は、コンパクトフラッシュやXQDの後継として2発表されたフラッシュメモリ。2020年以降発売された一部の高性能デジタルカメラなどで対応が始まっています。
TypeAとTypeBという2種類の形状があり、TypeAはXQDと同じ形状ですが、規格としての互換性はありません。(製品側では両方に対応したものも発売されているようです)
2021年10月現在、その理論上の転送速度は2000MB/秒。 コンパクトフラッシュの理論値が167MB/秒。 SDカード(UHS-2)の理論値が312MB/秒ですので、その速さはかなりのもの。 当然お値段もまだまだかなりのもの。
SSD
ハードディスク(HDD)に代わって、パーソナルコンピューターの記憶ストレージとしての利用が増えているSSD(ソリッドステートドライブ)もフラッシュメモリ製品のひとつです。
HDDとくらべ物理的な動作機構が無い事で、静音性、処理速度、耐衝撃性、消費電力が小さいといったメリットがあります。 反面、当記事執筆時点(2021年現在)では同容量のHDDより価格が高いという点が難点でしょうか。
とはいえ、この点に関しても近い将来逆転し、完全にSSDがHDDに取って代わる時が来る……かもしれません。
その他フラッシュメモリ製品
上記以外にも色々な形状のフラッシュメモリ製品が発売されてきました。挙げていけばキリがありませんが、いくつか思いつく範囲でご紹介しておきます。
スマートメディア
スマートメディア(SmartMedia)は、東芝が主導してつくられ1995年~発売された、フラッシュメモリ。 正式名称はソリッドステートフロッピーディスクカード(Solid State Floppy Disk Card/SSFDC)。 SSDとフロッピーディスクの中間のような名前にびっくりですが、この規格は2001年に128MBが発売したのを最後にほぼ終息となっています。
カードの表面にあるのは接続用の端子。 現行の製品ではほとんどこのメディアを利用するケースはありませんが、パソコンやデジタルカメラと違い、シンセサイザーなどの電子楽器は今でも現役で稼働・愛用されているものも多く、それらの製品にはこのスマートメディアに対応した物もあるようで……わずかながらその需要があるようです。
xDピクチャーカード
スマートメディアの後継・代替となるべく富士フィルムとオリンパスが共同開発したフラッシュメモリーカードが、このxDピクチャーカード(エックスディーピクチャーカード)。 2002年頃発売。
富士フィルム、オリンパスのデジタルカメラに搭載されるも、それほど普及せず2010年以降発売のデジタルカメラには採用されていないようです。 使っている方は、早めにほかの媒体にデータをバックアップしておいた方が良いでしょう。
Sony メモリースティック
Sony主導で策定されたのがこのメモリースティック(Memory Stick)。 主に、ソニー製のデジタルカメラ、デジタルビデオ、携帯電話やPSPなどの記憶メディアとして採用されました。
小型化した『メモリースティック Duo』、さらに小さい『メモリースティック マイクロ(M2)』といった製品も登場。 転送速度や最大容量が増えた『メモリースティックPRO』なども発売されました。
PlayStation Vita専用メモリーカード
その名のとおり、PlayStation Vita専用のメモリーカード。
PlayStation 2/1 用メモリーカード
初代PlayStation、PlayStation2のメモリーカードもフラッシュメモリでした。
フラッシュメモリの技術的な分類
技術的な分類としては、大まかに2種類挙げられます。 普段生活している分にはあまり関わりのない情報かもしれませんが、その違いについても少しだけ記載しておきます。
- NAND型
- NOR型
NAND型
SSDカードや、SSDなど、当ページで解説した記録メディアのほとんどはこちら。製品化において、小さく、安価に大容量化できるという利点がある。 NOR型と比べ、連続リードが得意で、書き込みと削除なども比べ速い。
NOR型
ランダムアクセス読み出しの単位はバイト。 NAND型に比べて読み出し速度やランダムアクセスが高速だが、書き込みは低速という特徴。 これらの特徴に加えデータの信頼性も高いという事から、製品(コピー機、携帯電話やルーターなど)のファームウェア記憶領域などで使われています。
あとがき
軽い気持ちでこの記事を書き始めてみたところ、過去の終息製品や、新しい製品などを挙げていくと膨大な量になる事に気づきました。 終息してしまったメディアタイプなどを振り返ってみると、USBメモリが普及している理由がおのずと見えてきます。 結局のところ独自の規格を作って普及させる事ができれば企業としては大いに利益を得る事ができますが、ユーザーとしては汎用的な規格にあわせてメディアを作ってくれた方が嬉しい……という事ですね。
余談ですが、フラッシュメモリ製品は昨今色々なメーカー・ブランドから発売されていますが、その品質にはかなり差があるようです。
特にSDカードやUSBメモリでは、安い価格につられて、耳なれないメーカーのものをAmazonで購入するも、極端にデータの保存が遅かったり、はじめは問題なかったのに数週間で使えなくなったり……という経験を痛いほど味わってきました。
一説には、無名メーカーの製品は信頼性の低いチップや、大手メーカーの品質適合試験ではじかれたものなどを利用している、というような話も耳にします。
フラッシュメモリ製品は、すでに十分手頃な価格になってきています。数百円をケチって耳にしたことが少ないブランドのメモリを購入し、結果として大事なデータを失ってしまう……そんなリスクを負うのはもったいないように思えます。
よほどの事がなければ、SanDisk(サンディスク)、TOSHIBA(東芝)、Transcend(トランセンド)、Samsung(サムスン電子)、といった世界的な主要メーカーの製品の製品を選ぶのが良いのではないかと、個人的には思います。