日本国内『クラウドファンディング』の現状。 大企業の先行発売案件から地域貢献プロジェクトまで

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澤田 真一

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クラウドファンディング(Crowdfunding)』という単語は、広く知られるようになってきました。 少し前まではクラウドファンディングについて話すと「何それ美味しいの?」といった反応が返ってきたものですが、2019年には一般層にも『クラファン』という略語で通用するようになっています。

そこで当記事では、2020年1月現在での日本国内のクラウドファンディングの動向を、実例を交えてご紹介したいと思います。

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名作アニメを例に考えるクラウドファンディングのしくみ

筆者は昔、アニメの『キテレツ大百科』が大好きでした。

主人公のキテレツ君は、幕末期のご先祖キテレツ斎(さい)様の遺した文献を基にいろいろなものを発明します。 当時、自分の部屋にパソコンがある小学生は極めて珍しかったはずです。

そしてキテレツ君は恐ろしく聡明な少年で、二足歩行ロボットもタイムマシンも潜水艦も自前で作っています。 さらに、その材料費は月々のお小遣いでやりくりしています。 キテレツ君の両親も非常にしっかりしていて、お小遣いの範囲までなら好きに発明をさせています。 一方で発明品を使って野球でインチキをしようとした時に、お父さんは「キテレツ斎様はこんなことのために発明をしたんじゃない」とキテレツ君を厳しく叱っています。 実に理想的な教育方針の家庭ではないでしょうか

……話は少し逸れましたが、ともかくこの作品の発明品開発は、キテレツ君のお小遣いが原資なのです。 では、キテレツ君にこう呼びかけてみるのはどうでしょうか。

「君の発明品をクラウドファンディングに出してみない?」

資金調達成功後に『航時機』を生産すれば良い

キテレツ大百科の作品には『航時機(こうじき)』という名前の、いわゆる『タイムマシン』が存在します。 この航時機は木製で、小学生の家内制手工業で生産できるほど簡素な設計です。やや壊れやすいという欠点もありますが、1.21ジゴワットの電力を捻出するためにプルトニウムを使うデロリアンよりも遥かに安全です。

※航時機イメージ
※ 航時機のイメージ
実際の形状はgoogleで検索してみてください

これを1台100万円でクラウドファンディングに出展しましょう。軽自動車の新車が概ねそのくらいなので、まあ妥当(?)な設定ではないでしょうか。

クラファンで資金調達キャンペーンを始めた段階では、キテレツ君は出資枠分の航時機を量産しておく必要はありません。それはキャンペーンの目標金額を達成してから考えればいいことなのです。そして仮にこのキャンペーンが失敗しても、キテレツ君に金銭的負担は発生しません。

キャンペーンが成功した場合(即ち目標金額を達成した場合)、そこからクラファンの運営者がコミッションの取り分を引いて、残りをキャンペーン実行者であるキテレツ君に渡します。このお金を活かして、キテレツ君は航時機の量産に取りかかる……という流れとなります。

言い換えれば、クラファンとは『在庫を売る』のではなく『量産開始のために出資を募る』というプラットフォームでもあると考えられるのです。

大手企業によるクラファンプロジェクトも……

ところがこのクラウドファンディングには、誰もが名前を知っているような大企業が製品を出展していることも良くあります。

大手企業の出展も多くなってきているクラウドファンディングサービス
大手企業の出展も多くなってきているクラウドファンディングサービス

クラファンで、市場流通前に製品の出資を募るという行為は『売買契約』ではなく『出資』となります。本来は前述のキテレツ君のように『アイデアや企画』はあるけれど『資金力』が不足している、中小企業や、個人が資金を得るため、一般へ開かれたプレゼンテーションの場……といったサービスでした。

ところが、大企業であっても画期的な製品を開発してみたけれど社内会議で賛否両論が発生したという場。 ならば、クラファンで資金調達を実行し、ユーザーのニーズを判断し、結果としてダメならそのままボツ、好評=キャンペーンが成功すれば発売すればいい、という判断ができるのです。

これも昨今のクラウドファンディングというサービスの、ひとつの側面となりつつがあります。 とはいえ、プロジェクトを信頼のある大企業が手掛けていて、目標設定額も達成しやすい金額に設定してしまえば、それは実質『製品の先行販売』とも言えるのですが。

日本独自の進化を遂げたクラファンサービスの例

今、日本国内で最も先鋭的なキャンペーンを打ち出しているのが『Makuakehttps://www.makuake.com/)』というクラウドファンディングサービスです。

Makuake トップページ
Makuake トップページ
https://www.makuake.com/

このMakuakeが、他のサービスと一線を画している点のひとつは、前述のような大企業の一部署が製品を出展していることが多いという点です。 例えば、コンピューターのNEC。 実はこのNECも、Makuakeでプロジェクトを実施しています。

大企業によるクラファン先行発売の例『A-RROWG』

NECのプロジェクト『 美しく歩くためのスマートインソール A-RROWG』は、専用アプリと連動して歩幅、歩行速度、接地角度などを算出し、よりエレガントに歩行するためのトレーニングを指南してくれるという製品です。

NECの歩行センシングインソール A-RROWG Makuakeページ (Link

NECは、この『A-RROWG』をMakuakeで先行発売するという道を選びました。 目標金額は100万円で、当記事執筆時点ですでに7倍以上の出資を達成しています。

……日本のクラファンは海外のそれに比べて、このような『有名企業の先行発売』という色合いが強いようにも思えます。 これは、日本には技術力のある大企業が多数存在することの表れとも言えます。 アメリカ発のクラウドファンディングサービスである『Indiegogo (https://www.indiegogo.com/)』や『Kickstarter (https://www.kickstarter.com/)』は、知られざる新興メーカーを発掘するという側面を有していますが、それを鑑みると日本のクラファンが独自の進化を遂げているということが分かります。

地域産業にもクラファン 『まんまるファーム千葉』

もうひとつ、Makuakeが特徴的な点は『地域産業』にも力を入れているという点で、これに関して筆者が心の底から感動したキャンペーンがあります。

それは千葉県八街市の生姜農園『まんまるファーム千葉』の資金調達です。新鮮な生姜を地元の保育園や幼稚園に届けるということもしていたのですが、今年の台風15号でまんまるファームは甚大な被害を受けます。 ビニールハウスが吹き飛ばされた上、被災後1週間続いた停電がの影響で大半の生姜が腐ってしまったとのこと。 被害額は約1000万円。いち農家にとっては恐るべき損失です。

生姜農園『まんまるファーム千葉』 Makuakeページ (Link)

再建のための資金をどこからか調達しなければなりません。そこでクラウドファンディングという手段が浮上します。 クラファンで得た資金は『融資』ではなく、現物をリターンとした『出資金』です。

まんまるファーム千葉のキャンペーンも、たとえば3,000円の出資で葉生姜1kgというように、なかなかユニークなリターンが用意されています。

このキャンペーンについてさらに書かせていただければ、ここ数年、日本は『荒天の脅威』というものを骨の髄まで思い知りました。 2018年に発生した西日本豪雨の前日、筆者は災害用品を開発する企業に取材していました。 その時の「天災はいつ発生するか分からない」という社長の言葉は、取材終了からわずか1時間後に西日本各地で現実のものとなったのです。

大規模災害に遭う度に、我々は復興を余儀なくされます。 復興のための重要な手段として、クラファンは幅広く活用されています。

クラファンの問題点 もし製品が届かなかったら?

一方で、クラファンには製品開発プロジェクトの場合、資金調達後にそれが実現しなかったらどうするのかという問題が存在します。 先ほどのキテレツ君の話で説明するなら『資金は集まったが、航時機の量産に失敗してしまった』というパターン。 実際に海外のクラファンで度々発生していることでもあります。

資金調達達成後にリターンが届かない事も
資金調達達成後にリターンが届かない事も

人件費の安い国の工場に量産を依頼したはいいけれど、その後大規模な労働者デモが発生してしまいました。 仕方なく依頼先の工場を変更するも、そうこうしているうちに資金が枯渇。現実でも起こり得る事態です。

じつはMakuakeでも、そうしたことが発生しています。ガジェットの開発のために資金を集めたのに、道半ばで会社が倒産したという事例です。 クラファンの考え方に沿うと、こういう場合は出資者と当事者(倒産企業)の間で解決するしかありません。

ところが、このあたりは筆者がMakuakeを高評価する部分でもあるのですが、出資者への返金をMakuakeが実施しています。この決定により、出資者が泣き寝入りするという最悪のシナリオは避けられました。

まとめ

日本でもようやく根付いたクラウドファンディングは、日を追う毎に運営者の対応が洗練されているようにも思えます。上記の返金の例もそうですが、キャンペーン実行者により資金が集まりやすいように、また出資者が安心できるように、いろいろと仕組みを改良している形跡が見受けられます。

こうした運営者の努力により、クラファンはひとつの『ネットインフラ』として定着するところまできているように思えます。 クラファンでしか見ることのできない新製品や地域貢献活動など、様々なキャンペーンが実施されていますので、とりあえずページを覗いてみるだけでも、十分に楽しむことができます。

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澤田 真一

澤田真一(さわだ まさかず) 1984年10月11日生
ノンフィクションライター。各メディアで経済情報、ガジェットレビュー、ライフハック等をテーマに記事を執筆する。

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