最近、大手メディアなどでも「LGBT」という言葉が耳に入るようになってきました。
サブカルチャーという視点では、漫画やWEBコミックなどでも同性愛や性同一性障害(GID)といった『性的マイノリティ(少数者)』をテーマにした作品も多くなり、その作者本人がカミングアウトしている実録系も増えてきました。
ボク自身は男性で性的指向が女性である「女装趣味者(LGBTではなくフェチとなりますが)」なので社会的には少数者だと思います。また、自身やその周辺、カルチャーとしても昨今のLGBTを取り巻く話には常々関心を持っています。
そして色々な情報収集をする中で、毎年台湾で行われるアジア最大のLGBTパレード『台灣同志遊行 = タイワンLGBTプライド』へ興味を持ち、今回は思いきって妻と共に参加してきましたので、その様子をレポートしたいと思います。
Index
台湾のLGBT事情って?
台湾では今年5月、最高立法機関である司法院大法官会議が「同性婚を認めないことは憲法違反である」というアジアでは画期的な判決を言い渡しました。
これは事実上同性婚を認めるというもので、長年に渡り台湾で行われていた、LGBTの権利を求める運動が実を結んだ結果です。このように台湾ではLGBTや社会的マイノリティに対する関心度は非常に高く、活発な議論も行われています。
参考:「同性婚は欧米の文化ではない」 台湾で合法判断を勝ち取った弁護士語る
例えば、台北の地下鉄は車両とホームの段差が無く、車椅子が介助なしでスムーズに乗り降りができます。こういった所にも、社会的マイノリティに対しての意識の高さが現れているように感じました。
台灣同志遊行とLGBTパレードについて
『台灣同志遊行 – 台湾LGBTプライド』は、台湾のLGBT NGOとジェンダーグループが資金を提供する非営利団体(NGO)です。
2003年より始まった台湾でのLGBTパレードは、同団体の設立とともに定期的に行われ、2016年に行われたパレードは参加者8万人、今年(2017年)は10万人を超えると予想される巨大なパレードとなりました。
ちなみに、日本でもLGBT関連のパレードは各地で行われ、東京では毎年GW期間中に行われていて来年2018年は5月5日、6日に代々木公園で開催されます。
東京レインボープライド
http://tokyorainbowpride.com/
2017年10月28日 パレードに参加!
さて本題となりまして、2017年10月28日晴天の台北市で行われた「台湾LGBTプライド(台灣同志遊行)」の模様をレポートしていたいと思います。
最寄りの地下鉄駅から降りると、そこは沢山の人でごった返しています。
当初「10万人規模のパレード」というものがどういった感じなのか分からないで来たのですが、この時点で人の多さにかなり驚きました。そして賑やか!完全なお祭りです。浅草の三社か、神田祭か、はたまた大洗のあんこう祭かのような盛り上がり。
パレードのスタート地点に向かうに従い、どんどん増える参加者の数。近隣の公園も熱気に包まれ、参加者達が思い思いの格好で集まっています。特に目立つのがお揃いの衣装に身を包んだ男性グループ。非常にお洒落で1つのグループと思われる集団の人数が多いのが印象的です。
ちなみにボクは女装で参加しました。
スタート地点にはステージが組まれ、パレードに参加するフロート(山車)はガンガンに音楽を流しながら待機しています。
周囲がお祭り会場なら、そこへ向かう道路は野外ライブ会場の様な雰囲気。下手な所に行くと人込みで身動きが取れなくなる可能性が高いので、なるべく端の歩道を歩きます。また、あちこちにLGBTのシンボルであるレインボーフラッグやグッズを売る人がいるのでボクも購入。少しづつ気分も高まってきます。
途中、浴衣を着た女性カップルに日本語で「集合場所はどこですか?」と聞かれました。というか集合場所は聞かれた地点も含まれているはずなのですが、いかんせん広すぎて戸惑ってしまいます。とりあえず手元のマップを頼りに東京レインボープライドのフロートを案内しましたが、たどり着けていると良いのですが。
パレードが開始!
定刻の14時ちょうど、パレードが巨大なレインボーフラッグを先頭にスタートしました。昨年まではパレードルートが2つだったのですが、今年は参加者の増加が見込まれるため、3ルートになりました。
ボクはそのうちの1つ、西門と呼ばれる繁華街や台北駅前を抜けるルートを歩くことにします。所要時間は2時間ほど、ちなみに3つのルートが抜ける場所はそれぞれ「文化」「教育」「行政」を象徴する場所を通るようになっていて、集合地点からスタートし、同地点へ戻るという流れです。
とにかく自由。そして平和すぎる!
こういったパレードと聞くと、警察に許可を取り「デモ行進」的な扱いをされ、行進を乱したり、飛び入り参加や派手なことが慎まれるような雰囲気を連想する人も多いのではないでしょうか。
しかし台湾のこの『台灣同志遊行 – 台湾LGBTプライド』に参加してボクが思った事はとにかく、
「自由すぎるw」
に尽きます。
随所に警察官も沢山いますが、あくまでも交通整理の為。沿道では沢山の人がパレードに手を振り、支援団体がチラシやステッカーを配っています。飛び入りも自由、抜けて小籠包を食べに行くのも自由、台湾かき氷でもいいですね。
そして、服装も自由なので、ボクサーパンツ一丁、ほぼ全裸の男性参加者も多いです。日本では考えられないほどの自由さ。そして、フロートからはクラブを彷彿とさせる音量でEDMが流れたりして、皆が自由にパレードを楽しんでいます。
※参考:「ゲイ」という言葉さえなかったときにカミングアウトして30年|台湾の同性婚合法化の立役者、その半生
いよいよゴール!そして思うこと。
約2時間ほどパレードに参加するといよいよゴール。ステージで閉めの挨拶などもしていますが、この参加者数となると何となく……流れ解散に近い雰囲気です。
全体の感想としては、とにかくパレード全体の自由さに圧倒されました。多数の企業や大学、政党、団体が協賛し、実際に参加しています。
沿道のお店もパレード参加者を(当たり前ですが)拒むこと無く、ここぞとばかりに商売します。長いパレード途中ではトイレや休憩所を開放してくれる病院などもあり、入り口で警備員が「トイレはこっちだよー」と誘導までしています。
そしてそんなパレードに世界中から人が集まり、LGBT当事者だけでなく、障がい者や私のような女装趣味者もいます。全身ラバーに身を包んだ人や、緊縛されている人、皆好きなように「自分が自分であること」をアピールしています。
レインボーフラッグの持つ意味
そして写真にも幾度となく登場する「レインボーフラッグ」についてもご紹介しておきましょう。これには、LGBT権利運動のシンボルとしてパレード全体の賑やかで楽し気な雰囲気を演出するだけではなく、とても重要な意味が込められています。
『性別、人種、国籍、性的指向、障がい者も、全て垣根なく、
人間とは虹のようにグラデーションであり、明確な境い目は存在しない。』
という『境界のない世界』をシンボリックに表現しています。
ボク自身も、パレードの間、そこかしこにあるフラッグを観て、触れ、そして参加する人達と共に、『境界のない世界』を身をもって体感することができました。
で、日本ってどうなの?
台湾で自由さを満喫すると同時に、一部を除いて、日本の行政や企業によるLGBTへの取り組みや学校での教育が、非常に薄いということを痛烈に感じました。どこかよそよそしく”オリンピックを控えているので対応しないとね、流行りだから。” と、そんな空気を残念ながら感じてしまう事もあります。
思うに、日本の行政や企業の担当者の大部分は現状をよくわかっていないので、とりあえず他所がやったから真似しよう。そんな感じなのではないかもしれません。
2020年を前に、企業の偉い人や政治家は、台湾のパレードに一度は参加してみるのもよいのではないでしょうか。そこには日本には何が足りないのか、参加した人が確かに感じられる明確な答えがある筈、と思うのです。
まとめ 最後に…
今回の「台湾LGBTプライド(台灣同志遊行)」に参加してから、幾分日数が経ってこの記事を書きあげる事となりました。
今回は最終的に参加者が12万人を超えて、見込みを大きく上回る参加者だったそうです。ボク自身、始めての台湾旅行で、且つ始めて海外で大規模なパレードへの参加でしたが、実に気軽に参加できるとてもハッピーなイベントでした。
服装も自由、見てるのも自由、歩くのも自由と、賛同する人ならば誰でも参加できます。たとえばもしあなたが女装や男装、着ぐるみやコスプレをしたりする方で、興味があるなら参加してみるもの面白いかもしれません。「そんな軽い理由で参加していいの?」と思われるかもしれませんが、そのくらいの軽さこそが社会に溶け込んでいる証拠だと思います。
『人間とは虹のようにグラデーションであり、明確な境い目は存在しない。』
という事ですね。
(もちろんですが、特殊な衣装や仮装が必要という訳でもありません。)
ちなみに女装&ランドセル姿は(多分)ボクだけで、同行した妻もロリ服だったので目立っていたようで、パレード中沢山の人に写真を撮られました。
台湾はご飯は美味しいし、何となく日本語が通じるし(ボクは英語で話しかけて失敗しました。最初から日本語で声をかけたほうが良いです)とても楽しい旅だったので、来年も参加したいと思います。
ここまでお読み頂きありがとうございました。