皆さんは『ドロヘドロ』をご存じでしょうか?
当初は「月刊IKKI」にて連載。同誌が廃刊となるも、現在は雑誌「ヒバナ」にて連載が続けられている漫画なのですが、僕の周りではまだ読んでいる人があまりおらず、この素晴らしい漫画について語る機会が少なく寂しい日々を過ごしています。
反面、ドロヘドロは初見の状態で作品の世界に放り出されて、ワケが分からないながらもジワリジワリとそのストーリーの奥深さにハマり、染まり、引き込まれていく感覚が楽しさの一つなので、具体的内容を伝えて人にお勧めするのが難しいのです。
実際に僕自身も知人に「とにかく読めば楽しさがわかるから!」……と大雑把に勧められていたものの、実際に手に取り読み始めるまで数年放置していました。
今思えばもっと早く読むべきでした。全くもって人生損をしていたと言えます。
今回は、そんなドロヘドロを未読の方へ向けてあらすじは程々に、とはいえその魅力をお伝えできるようにご紹介したいと思います。
ドロヘドロ、その世界観と序盤のあらすじ
ドロヘドロでは、人間は『ホール』と呼ばれる世界で暮らしています。そしてそのホールへは別の世界から『魔法使い』と呼ばれる者たちが『ドア』を通じてやってきます。そして、魔法使いはホールの住人達を標的にして『魔法の練習』をしては帰っていきます。
この『魔法の練習』が結構エグいものが多く、犠牲者は身体の一部を異形……例えば昆虫などに変化させられた上に、最悪の場合は魔法の拒絶反応で死んでしまいます。
主人公の『カイマン』は頭部がトカゲ状にされているのですが、記憶喪失により魔法をかけられた当時の記憶がありません。さらにカイマンのトカゲのクチの中には『謎の男』が存在しています。
記憶・口の中の男・魔法をかけた相手の真相を知るべく、魔法使いを逆に追い詰め殺していくカイマンと相方の『ニカイドウ』。
そしてカイマンに部下を殺された魔法使いマフィアの『煙(えん)』ファミリーとの衝突を中心に物語は描かれて行きます。
また人間と魔法使いとは別に『悪魔』という存在達も登場します。
悪魔はどうやら、悪魔達を侮辱した魔法使いを処刑したり、死後の魔法使いを痛めつけたりしつつ、自称 何でもできて何でも知っている存在らしいのですが、基本的には本能の赴くままイタズラや嫌がらせをして楽しんでいるように見えます。
ストーリーについて
冒頭でもお話ししましたが、読み始めた最初の頃には、物語や世界を理解するのは中々に困難です。
単行本の巻末には、その巻で判明した些細ことから重要なことまで、さまざまな事実が箇条書きでピックアップされていたりするのですが、真相への歩みはじっくりとスローペースに語られます。
しかし、決して展開が遅いというわけではなく、人物像や世界観への没入感を深めるサイドストーリーが随所に散りばめられ、物語も中盤に差し掛かるころには主人公以外のキャラクター達の物語が同時進行で繰り広げられる群像劇へと発展していきます。
キャラクター達の描写について
ドロヘドロの世界は、殺し殺され、虐げられ、憎みあっている絶望的な世界……のはずなのですが、登場人物たちは基本的に底なしに明るく感じられます。本来、暗かったりグロテスクな内容などについても、その魅力的な描写によってブラックユーモアやギャグに昇華されています。
登場し活躍するキャラクター数はかなり多いのですが、それぞれが性格・容姿・服装・攻撃手段など非常にユニークな為、特徴を覚えやすく混乱する事は少ないでしょう。
主人公のカイマンはその容姿からは非常に攻撃的で暴力的な印象をうけますが、魔法使いを殺した直後、相棒ニカイドウの経営する食堂『空腹虫(ハングリーバグ)』の『大葉ギョーザ』を食べる事を思い浮かべてたり(またこのギョーザを美味そうで……)。
カイマンと敵対する勢力も、凶悪な魔法を使う割には妙に抜けてたり、人情味が厚かったり、頭の中では阿呆なことばかり考えていたり。ただの悪役では無く、とても魅力的に描かれているのです。
絵柄について
作者の林田球先生の絵柄は、書き込み、イラストの配色などとても特徴的でかつ高品質。巷での評価も非常に高い様です。
単行本各巻の表紙や、本編の中でも特に書き込まれたコマなどは何度見直しても見入ってしまうほどに格好いいのです。
そして、線や書き込みの多い絵柄ながらも全編を通して、場所や人物の位置関係を見失う事は殆どありません。コマ割りや構図になどついても、相当工夫されていると思います。
まとめ 『ドロヘドロ』はこんな人におすすめ!
当記事執筆時点(2017年6月)の最新単行本22巻では、いよいよ完結に向けてストーリーが収束してきた段階で、いよいよ残り数巻でクライマックスを迎えそうな気配です。
- ダークな世界観に没入したい
- ちょっとグロいのも大丈夫
- 書き込まれた漫画が好き
- ブラックジョークやギャグが好き
- 漫画の『ストーリー』を重視
- (大葉)ギョーザが大好き
上記のような要素、1つ、2つでも共感いただける方にはには全力でお勧めしたい漫画ドロヘドロ。ギョーザを片手にこの世界を語り、楽しんでくれる方がもっと増えてくれたらと思いでご紹介いたしました。
2017年7月現在、『ドロヘドロ』は電子書籍版が販売されていません(※)が、雑誌『ヒバナ』のオフィシャルサイトでは、序盤の数話を無料で読むことができるので、気になった方は是非一度読んでみてください。
今後どのようなクライマックスを迎えるのか。
それはまだ………混沌の中。
それが………ドロヘドロ!