55kg超に育ったケヅメリクガメ 飼育記:飼い主の負傷編

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藤井洋子

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私は体重55kgオーバーのケヅメリクガメを飼育しています。

もちろん、最初から55kgだった訳ではなく、飼い始めた20年前は55g(なんと1000分の1……!)だったのですが(※)、それはさておき。

※編集部注:成長の過程などはこちらの記事もお読みください:『ケヅメリクガメと20年を暮らして。爬虫類の飼育と病院選びは大変だ!』

リクガメを飼っているといろいろな事が起こるもので、時には怪我をする事もあります。この場合の怪我というのは、飼育小屋を修理しようとして金槌で自分の指を打ったとか、エサにする草を刈っていて鎌で手を切ったとか(もあるのですが……)ではなく、カメによる怪我、という意味です。

猫を飼っている人がよく引っ掻かれるように、カメを飼っている人にもカメのならではの怪我というものがあります。今日はその話をしようと思います。

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カメは悪気なく噛む

良く食べます
良く咬み、良く食べます

ケヅメリクガメに限らず、ほとんどのリクガメは草食です(アカアシガメやキアシガメなど一部のリクガメは雑食傾向があります)。

つまり、牧草や野草、野菜類を食べます。カメを飼っていると言うと、「カメだからスッポンみたいに噛むの?」あるいは「リクガメってスッポンと違って噛まないんでしょう?」と訊かれる事があるのですが、この正反対の問いの答えはどちらも「NO!」です。

リクガメは草食性なので、スッポン※のような攻撃性あるいは肉食性による噛み付きはありません。

※ちなみに、スッポンは肉食寄りの雑食です。

しかし、まったく噛まないという訳ではないのです。

一番多いのは、「悪気なく噛む」というヤツでして、エサを手に持って与えている時に、エサと一緒に指まで噛まれる事があるのです。

では、噛まれるとどうなるのでしょうか? アニメ「ミュータント・タートルズ」の彼らは突然変異なのでカメなのに歯がありますが、普通のカメには歯がありません

代わりに鳥のようなクチバシがあるのです。

ケヅメリクガメのクチバシ

草食の割には噛む力が強く、ウチのカメのサイズだと、4つ割りにしたニンジンを噛み切る程度のパワーがあります。このクチバシで噛まれるのはニッパーで挟まれるようなもので、手の爪は簡単に割れてしまいます。

あまり必要ない知識かもしれませんが、万が一皆さんがケヅメリクガメに餌と一緒に指を噛まれるような状況になったたのであれば、強引に指を抜こうとしないようにしましょう。噛まれた状態から指を抜こうとすると、クチバシで指の皮も深刻なダメージを受けてしまいます。

エサではない、あるいは噛みきれない事が分かるとカメは口を開けるので、その一瞬の隙に指を引き抜きます。ボヤボヤしていると噛み直そうとするので、一瞬が勝負です。

また、大声をあげたり甲羅を叩いたりするのは絶対NG。カメは驚くと首を引っ込めるし、首を引っ込める際は口をぎゅっと閉じるので、より強く噛まれる事になります。噛まれたら声を上げずに歯を食いしばってカメが口を開けるのを待ち、一瞬で引き抜きましょう。

まぁ、手からエサをやらなければ回避できる話ですが。

誰もが通る道?  ぎっくり腰!

55kgオーバーのサイズ感、伝わるでしょうか

巨大ガメを飼っている人なら誰もが通る道と言えば、ぎっくり腰でしょう。

私も、もちろんやりました。そもそも、最初から55kgオーバーの体躯であれば、持ち上げようという気は起こらないのですが、前述の通り、最初は手のひらに乗るようなサイズから55gまで成長したのです。

徐々に大きくなり、段々「ん? 重たいかな?」と思うようになります。それでも日々持っていると(甲羅の下側を拭いたり、風呂に入れたりとカメを持ち上げる機会は意外と多い)、多少の重さは持てるようになります。日ごとに高くなる麻を飛び越えて跳躍力を鍛える忍者のように、飼い主も少しづつ腕力を鍛えられていくのでしょう。

しかし、カメの成長に対し、日常のお世話程度のトレーニング(?)で得られる筋力の強化には限界があります。さらには、年月の経過に伴い飼い主は歳をとって老化・衰退していくので、「その日」が突然来るのです。

私の「その日」はカメが25kgに成長した頃でした。

いつものようにカメを洗ってやって、引っくり返して腹側を拭こうと持ち上げた瞬間、腰の辺りに激しい違和感が走り、激痛で動きが止まりました。それでもなんとか無事にカメを着地させたのは愛(?)ゆえですが、それっきり身動きがとれない状態に……しばらくコルセットを装着して生活を送る事になりました。

とはいえ、現在、私は55kgオーバーのカメを引っくり返す事が出来ているので、この時の決定打は重さそのものではなく、中腰の姿勢にあったのだと思います。

ぎっくり腰を起こさないためには、しっかりと腰を入れて、「自分は重たいものを持つんだ!」と自覚し、腰を入れて姿勢を正しくすれば、女性でも55kgを動かせるのです。力だけではなく技術も習得していったという事でしょうか。……カメを裏返す技術を。

実際、その後も私は一度もカメを落とした事がありません。世のお母さんは重たい米袋は持てなくても同じ重さの我が子は抱えて歩けるらしいので、それと同様に飼い主の「愛によるチカラ」と言えるのかもしれません。……カメへの愛です。

甲羅の下に手を入れるべからず

巨大ガメならではの怪我として、下敷きになる、というのがあります。

足を踏まれただけでも結構痛いのですが(55kgが4本脚に分散したとしても、脚1本に13.75kgの計算)、足は防ぐのが簡単です。私の場合、庭用の長靴は爪先に鉄板が入った「安全長靴」にしています。

ドラゴンの様な逞しい前足!

要注意なのは、飼育スペースを掃除するときです。カメというのは犬猫と違ってトイレのしつけができないので、掃除は欠かせません。なんたって、自分の排泄物を踏んで歩き回りますからね。

ですので、排泄しているのを見かけたら即掃除が鉄則です。

一刻も早くブツを撤去しないと、被害が拡大してしまいます(余談ですが、私の場合はペットシーツを雑巾代わりに使っています。そのまま捨てられるので便利!)。

ただし、この時に注意しなくてはならないのが、甲羅の下に手を入れない事。

大きいカメは手足も太いので、甲羅の下には人間の手が入るだけのスペースがあります。カメが汚れの上を歩こうとしていると、慌てて甲羅の下を掃除したくなりますが、これは大変危険です。というのも、甲羅の下のスペースは「人間の手が入るけれど、動かしたら甲羅に当たる」程度しかないのです。甲羅に手が当たると、カメはビックリしてしまいます。そして、カメはビックリすると脚を引っ込めるのです。

そうすると、それまで脚の分だけあった甲羅の下のスペースは一瞬でゼロになり、甲羅の下に差し入れた手の上に、55kgオーバーの身体が落ちて来る、という訳です。

甲羅は硬いのでクッション性はゼロ。岩……とまでは言いませんが、ゴムハンマーで殴られたようなもので、指は痣で変色し、1週間位は指が曲がりません。

まとめ:粗忽を憎んでカメを憎まず

このほかにも、カメ絡みの怪我はいろいろありました。

不意に突進してきた時は脛に甲羅が当たって痛かったし、しゃがんでいるところに後ろから体当たりされた時は、転んで手を擦り剥きました。

怪我はなくても、着ているシャツを齧られた事は何度もあります(薄手のシャツはカメに噛まれると穴が空きます)。しかし、これらの怪我は人間が注意していれば防げるもの。カメには言葉が通じませんし、犬猫と違って『しつけ』もできないので、とにかく人間が気を付けるしかありません。

注意不足で怪我をしたなら、カメが悪いのではなく、うっかりしていた私が悪いのだ、と思っています。

『粗忽を憎んでカメを憎まず』

これがケヅメリクガメの飼育20年間で得た私の結論です。

……念のため言っておくと、猫を飼っている人が引っかかれても猫が好きなように、私もカメが好きです。

自分のカメと他所のカメは見分けられますし、自分のカメは世界一可愛いと本気で思っています。しかし、カメを20年飼うと、「諦観」という言葉を噛みしめるようになりますね。

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藤井洋子

フリーランスのライター兼編集者。アラフォー。10代から始めたライヴハウス通いは、現在も月1ペースで継続中。ただし、本人はかなりの音痴。 20年飼っているケヅメリクガメのために郊外に引っ越しました。

コメント

  1. kikko より:

    ケヅメリクガメ飼育についてご相談したいのですが、コンタクトいただけませんでしょうか?

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