リモートワークが浸透し、同僚と机を並べずとも働ける環境は整い、実際に多くの人がこの環境に慣れつつあります。とはいえ、ミーティングやアイデア出しなど、同じ時間と場を共有しワイワイやった方が良いケースがあるのも事実ではないでしょうか。
そこで、おススメしたいのが離れていながら現実的なミーティングの臨場感を再現&体感できるオンラインホワイトボードサービス。 便利で無料でもつかえる2つのサービス……LucidsparkとMiroをご紹介しましょう。
Index
オンラインホワイトボードサービス2選!
『Lucidspark』と『Miro』を紹介
オンラインホワイトボードは、インターネット上の仮想ホワイトボードで複数の人間がそれぞれ離れた場所からリアルタイムで書き込みと閲覧ができるツールです。
リモートワークが広まってきた昨今、オンライン会議の中で効率的に意見を集約するツールとしていくつかのサービスを利用した筆者が、使いやすいと思った2つのサービスを紹介します。
はじめに:オンラインホワイトボードでできること
1人で使う分には、線を引く、画像を貼りつける、図形を描く……といったお絵かきソフトのような感覚に近いサービスです。しかし、これが複数のメンバーでの共同作業になると、また別の側面が見えてきます。
オンラインホワイトボードの真骨頂は、複数のメンバーで同時に、思い思いに書けるという点です。 文字通り、ホワイトボードに文字を書く、図形を描く、付箋や写真を貼り付けて共有する、といった作業が実現できます。
下記は実際に私が参加した、オンライン会議のホワイトボードです。
30分弱のZoomミーティングと併用したオンラインホワイトボードで上記のようになりました。
Lucidspark(ルシッドスパーク)
まず最初にご紹介するのは、Lucidspark(ルシッドスパーク)です。
Lucidsparkを提供するLucidはアメリカの企業で、複数人で同時にチャートやダイヤグラムを作成できる『Lucidchart』を2008年にサービスイン。その後2020年にこのLucidsparkを提供開始したという事もあり、同一画面での複数ユーザーの同時作業に関しては、多くの経験を積んでいる企業です。
Lucidsparkは、3シートまでであれば無料で使うことができます。
Lucidspark 機能解説
Lucidspark Webサイトから会員登録し、ログインすると以下のような画面が表示されます。
この画面から、自作のホワイトボード(空白のボード)や、いくつかのプリセットボードにアクセスできます。
Lucidsparkで利用できるツールは画面の左側にまとめられていますので、これらについて解説していきます。
テキストツール
範囲を指定してテキストを入力できる基本的な機能。フォント・大きさ・太字や訂正線などの装飾、ハイパーリンクの貼り付けなどもできます。
付箋ツール
キャンバス上にそのままテキストを書いてもいいのですが、付箋(ふせん)を貼り付けて書くことで、より即興的な雰囲気が出ます。このふせんは記入後に好きな位置に持っていき再度貼り付けることが可能です。
付箋ツールの中で改行をしたい時はCtrl+Enterでできますよ(Windows)。
図形ツール
簡単な図形作成もお手の物です。四角や三角、円の他に星型や矢印にも対応しています。
吹き出しを作成し、中にコメントしても面白いですね。


コンテナー(図形ツール)
図形ツールにあるコンテナーを利用すると
- 議論のテーマが複数に渡り、その整理をしたい場合
- 人気投票などのアンケートを取りたい場合
など、会議がスムーズに進みます。
上部にはタイトルなどを記入し、その下にはテキストフィールドや図形を配置できます。 このコンテナーに含めた内容は、ドラッグ&ドロップで一括移動できるので情報をまとめるのに役立ちます。
線ツール
矢印としても使える線ツールは、要素と要素を関連付けたい時の他、マインドマップを作りたいときなどにも便利な機能です。
コメントとコメント、ふせんとふせん、ふせんと図形や画像などを線で結び、プロダクト案の系譜や成立過程を明示する事ができます。 当然、結び付けた先の要素を移動させれば、線も追従してくれます。
線は、ベジェ曲線方式で動きをつける事もできますよ。
ペンツール
ペンツールを使えば、手書き風の書き文字や図形を描く事が可能です。マウスでの描画は慣れていないと難しいこともありますが、タッチスクリーンやペンタブレットを利用している場合には指先やデジタイザペンでの描画がしやすいでしょう。
テンプレート選択
オンラインホワイトボードの使い方は自由ですが、白紙で始めるとなると何から手を付けたらいいのかわからないという時はテンプレートを使ってみるのも良いでしょう。
Lucidsparkでは用途に応じて複数のテンプレートが用意されています。オンラインホワイトボードでできることの見本のようなものでもあります。
まずはそれぞれのテンプレートを開いてみて、使ってみたいものを選んでみるといいでしょう。 既に長く使っている、という人でも新たな使い方を発見できるかもしれません。
外部サービス連携
外部サービスは、SlackやGoogle Drive、Zoomなどと連携が可能です。
Lucidspark 長所と短所、総合評価
シンプルにまとめられたオンラインホワイトボードです。 次に紹介するmiroの方が機能は豊富ですが、その分Lucidsparkは軽快で複数の人間で動かしていてもレスポンスよく反応してくれるサービスです。
筆者は実際にドイツで日本にいるクライアントとの会議に利用していますが、距離が離れていても、反応の遅延や違和感は感じませんでした。
無料では機能制限があり、保存容量も25MBまでとなっていますので、作成したホワイトボードはスクリーンショットを取っておくか、PDF形式でダウンロードしておくと良いでしょう。
機能 | ★★★★(4) ホワイトボードとして無料でも十分使える |
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操作性 | ★★★★☆(4.5) 感覚的に利用でき、軽快な動作。 日本語化も万全で使いはじめやすい |
拡張性 | ★★★(3) いくつかの外部サービスと連携可能 |
価格 | ★★★☆(3.5) 無料ではチャットなどが使えない。 800/月~の有料プランなら1Gの保存容量やプレゼン動画制作機能なども |
総合評価 | ★★★★(4) |
(最大星5つ/0.5刻み/9段階評価)
Miro(ミロ)
続いてご紹介するオンラインホワイトボードはMiro。 こちらもアメリカの企業が提供するサービスで、スペインの画家ジョアン=ミロからその名をとったそうです。
Miroも会員登録すれば3シートまで無料で利用できます。(それ以上のシートは古いものから順にアーカイブされ、閲覧のみ可能な状態で保存されます)
Miro 機能解説
MiroのWebサイトから会員登録し、ログインするとホワイトボードが開き、添付れーどテンプレートの選択画面が表示されます。
利用シーンごとにまとめられているので、まずは気になるものを開き何ができるか確認すると良いでしょう。 空白のホワイトボードを使いたければ左上にある『×(バツマーク)』をクリック&タップすればOKです。
Text(テキスト)ツール
ホワイトボードの基本となるテキストツール。予めキャンバスに書き込んでおいて指示出しのように使うのもおすすめです。
Sticky note(付箋)ツール
MiroでもSticky note=付箋ツールは利用できます。カラーは16色の中から好きなものを選んで貼り付け、コメントを書き込む事ができます。
Shape(図形)ツール
Miroの図形ツールは円や三角形、四角形などのシンプルなものから矢印や星の他、雲などユニークなものまで幅広く揃えられています。コメントの装飾に使用してもいいですし、コメントグループのまとまりを表すのにも使えます。
Connection Line(接続線)ツール
MiroのConnection Line(接続線)ツールも要素同士を接続して利用できます。
線タイプも4種類用意されています。
Pen(ペン)ツールと、Smart drawing(スマート・ドローイング)
Miroのペンツールには、『Smart Drawing(スマート・ドローイング)』という追加機能があり、いくつかの手書きイラストを自動的にきれいな形に整えてくれます。

スマート・ドローイングで描いたい図形(下)
Upload(アップロード)ツール
MiroのアップロードツールはPDFにも対応している点が嬉しいところ。
More Tool(その他のツール)
Miroの優れた点は、グラフやiframe、webサイトのキャプチャーや、他者のツールと連携させることが可能なところ。標準で以下のものが装備されています。
- Paste iFrame code:iFrameで公開されているものをmiro内で展開できます。例えばGoogleの提供するストリートビューなど
- Web page capture:Webサイトのキャプチャを掲載
- IconFinder:SNSやUI、ブランドロゴなどさまざまなアイコンを利用可能です
- Wireframe Library:Webサイトのデザインワイヤーフレームを作成するのに便利なアイコンや図形
- Charts:円グラフや棒グラフといったチャート作成
- Mind Map:マインドマップ作成機能
- Google Image Serch:google画像検索を利用した画像挿入
- Miro Map:マインドマップの作製に便利な図形を挿入 (詳細 公式サイト)
- Kanban:タスク管理や、情報のまとめに便利な看板方式の業務内容表示機能(Lucidsparkのコンテナーのような機能)。 海外でもKanbanで通じます。
- Tables:テーブル=表組み機能
- Diagramming:ダイアグラム……多数の図形を挿入。Shapeツールの『All Shapes』と同じ
- Stickers and Emojis:絵文字などを挿入
- Card / D
外部サービス連携
Figma、Slack、Box、Googleカレンダー、Microsoft Teams、Notionといった大手ツールと連携できます。外部との連携に利用するAPIツールは公開されているので、コーディング技術がある方は自作する事もできます。
その他にも……
Miroでできることは上記にとどまりません。
キャンバス画面下部にもツールバーがあり、フレームの作成やメンバーとの画面共有をこちらから行うことができます。各パーツに対するコメントやチャット、課題抽出時に用いられるCardsなどもこちらから管理できます。
有料会員になれば、Miro内でビデオチャットを始めることもできます。キャンバス上に表示するタイマーを利用して、時間を区切っての共同作業をする事などもできます。
Miro 長所と短所、総合評価
オンラインホワイトボードとしてできることがとても充実しています。反面、できることが多すぎるので、慣れるまでは少し混乱するかもしれません。
そんな時は遠慮なくテンプレートを利用しましょう。オフィシャル提供のものだけでなくユーザーが公開しているものもあるので、普段使っている人でも意外な使い方に新鮮な驚きを感じることもあります。
また外部のコミュニケーションツールとの親和性も高く、APIを公開しているので、自分好みのソリューションやチームが本来求めていた形でのコミュニケーションを実現するハブになる可能性を秘めています。
拡張性能に秀でた面のあるMiroは、開発者や企業などでの利用に向いているかもしれません。当記事掲載時点ではUIは日本語化されていませんが、2021年には日本法人も設立され、スタッフも精力的にプログラムの改良と提携先の開拓を進めているので、今後のアップデートにも期待できそうです。
機能 | ★★★★(4) 基本機能も充実していて多機能 |
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操作性 | ★★★(3) 多機能な反面、UIが複雑。 いまのところ日本語化されていない |
拡張性 | ★★★★(4) 外部サービスと連携可能。APIも公開されている |
価格 | ★★★(3) 無料でも十分活躍する可能性をひめているが、 20ドル/月~の有料プランでさらなる機能が利用できる。 とはいえ、個人で使うには20ドル/月はやや高いかも? |
総合評価 | ★★★☆(3.5) |
(最大星5つ/0.5刻み/9段階評価)

追加機能が解放されるMiro
まとめ
当記事では最近注目を集めているオンラインホワイトボードについて解説しました。
日々の作業が単調になりがちなリモートワークですが、筆者が初めてこれらのツールに触れた時、コミュニケーションが円滑になりその便利さに感動したものです。
今回紹介したふたつのサービスはどちらも特徴があって、一概に比べる事はできませんが……あえて区別するなら、使いやすさや取っつきやすさでは『Lucidspark』に軍配が上がると思います。専門的なソフトや英語のソフトウェアに触れ慣れていない人がいる場合は、まずLucidsparkを使ってみるのが良いでしょう。
逆に、より実務的で海外のツールにも普段から使い慣れている人達だけで使うのなら『Miro』が良いのではないでしょうか。 拡張性や細かい所に手が届く機能性などでは分が有ります。