映画『超擬態人間 〜Mimicry Freaks〜』 幼児虐待×スプラッターホラーという狂気の掛け合わせ! - uzurea.net

映画『超擬態人間 〜Mimicry Freaks〜』 幼児虐待×スプラッターホラーという狂気の掛け合わせ!

映画『超擬態人間』レビュー 幼児虐待×スプラッターホラーという狂気の掛け合わせ!
画像 映画「超擬態人間」予告編 より

執筆: ヤマダマイ アイコン ヤマダマイ

日本だけでなく、世界でも社会問題になっている児童虐待問題。 被害者にとって心に決して消えない傷を残すだけでなく、死に至る事件にまで発展してしまう例も少なくありません。そんな社会問題を、あえてとんでもない題材と融合させた映画が登場しました。 それはスプラッターホラー映画『超擬態人間』。

幼児虐待とホラー……。 一番掛け合わせてはいけないジャンルを掛け合わせた、挑戦的作品が誕生しました。

映画 超擬態人間 〜Mimicry Freaks〜

あらすじ

ある朝、父親の風摩(杉山樹志)と息子の蓮は身に覚えのない森のなかで目を覚ます。状況が呑み込めない風摩は幻覚にも襲われ、その苛立ちから蓮に手を挙げてしまう。すると蓮は頭から血を流し動かなくなってしまった。

時を同じくして、山中にある結婚式場の下見に来ていたカップル(望月智弥、河野仁美)と、新婦の父(田中大貴)がいた。しかし車が故障してしまい、森のなかを歩く羽目に。ウエディングプランナーの女性(坂井貴子)と山中を歩き続けると、突如彼らの前に風摩が現れる。しかし風摩の背後には、巨大な肉体に恐ろしい凶器を持つ、なまはげの面をつけた“化け物”が彼らを見据えていたーー。

映画「超擬態人間」予告編
映画「超擬態人間」予告編

『超擬態人間』は“赤子を抱える男の幽霊”を描いた幽霊画『怪談乳房榎図』(伊藤晴雨・画)に着想を得て描かれたホラー映画ですが、天敵から身を守る『擬態』を独自の解釈で盛り込んでおり、様々な伏線や設定がちりばめられ、ミステリー要素も含んでいます。

さらに日本に先駆け海外でも展開しており、ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭(2019)でプレミアム上映されるほか、各国の映画祭からのオファーを受けてきました。(英題『MimicryFreaks』)

そんな『超擬態人間』の監督を務めたのは、『生地獄』(2000年)、『狂覗』(2017年)など、徹底して恐怖と社会問題をミックスした作品を描くジャンル映画の名手、藤井秀剛(ふじい・しゅうごう)氏。 ロイド・カウフマン(※)氏から『最高のホラー監督』と称されるなど、カルト作品を常に世に送り出す監督して知られています。

ジャンル映画の名手が、海外からすでに高い評価を得ている本作の魅力とは何なのでしょうか?

※編集注:ロイド・カウフマン(Lloyd Kaufman) アメリカ映画監督『悪魔の毒々モンスター』シリーズ等

ありがちなホラー映画と思うことなかれ!

『超擬態人間』のメインビジュアルやあらすじを見ると、一般的なホラー映画にありがちな「物騒な森に迷い込んだ一般市民が恐怖のどん底に突き落とされる」という設定をイメージするかもしれません。 『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999年)や『グリーン・インフェルノ』(2013年)など、ヒットした海外ホラーからもわかる通り、ホラーは相思相愛の関係です。

しかし、『超擬態人間』はオープンニングから他のホラー映画とは一線を画す、複雑な設定や伏線がちりばめられています。

例えば、森で風摩を見つけた警官は彼の身元を確認すると、風摩はすでに死刑執行済みとなっている囚人だということが分かります。ハードな展開と同時に最大級の謎がいきなりぶち込まれるのです。

それと同時に、森に迷い込んだカップルたちが風摩と出会ってしまったことで、彼らまで狂暴な“なまはげ”に命を狙われるという不可解な謎を視聴者に与えたまま、怒濤の展開になだれ込んでいきます。

風摩の過去、蓮との関係、彼のおかれた環境など……ホラー、ミステリーやSFといった要素も楽しめます。 思わず「もうやめてあげて……」と言いたくなる阿鼻叫喚な展開が続くも、風摩を取巻く秘密など、知りたいことが盛りだくさんゆえに、その先の惨い展開からも目が離せなくなるという“ドS”な展開が巻き起こるのです。

目まぐるしく展開するのは、ストーリーだけじゃない!

伏線を散りばめつつも、予断を許さない演出が続く『超擬態人間』。 しかし、目まぐるしく変わるのは話の展開だけではありません。 風摩が森で遭遇する様々な登場人物との関係性も二転三転していきます。

登場人物で相関図を書こうとすれば、だいぶしっちゃかめっちゃかになるほど、予想外の素顔を隠し持っているのです。

出演者のほとんどが裏方も務めている

もう一点すごいと感じたのが、主要キャストのほとんどが、裏方でもその手腕を見せていることです。2面性なのは演じる役だけでありませんでした。

例えば出演者のひとりである宮下純さんは、特殊メイクの腕を生かし“ミヤ・サヴィーニ”というアーティスト名でも活躍しています。

さらに新婦の父親を演じた田中大貴さんは、面打師(めんうちし 伎楽面ぎがくめんの職人)としての顔も持ち、本作中では自分たちの命を狙う狂暴な “なまはげ”のお面造りも担当するという、物好きにもほどがあるという働きっぷりです。

そして、その“なまはげ”を演じる安井大さんも、元暴走族の総長という異色な経歴の持ち主。公式サイトによると、「7人までのストリートファイトなら負けなし」らしく、『超擬態人間』の主要キャラは6人なので、数字の時点で勝利が確定してしまうというリアルガチっぷり。

他にも、新婦役を演じる河野仁美さんは、元美容師というキャリアを生かし、メイクを担当。新郎役の望月智弥さんは、自身でバイク改造をしていることから美術を担当するなど、チャリのパンクも直せない筆者からしたら、どのキャストも羨望のまなざししかありません。

なお、本作で主人公・風摩を演じる杉山樹志さんは2017年8月に28歳で逝去。 本作『超擬態人間』が遺作となりました。 風摩の“自分が置かれた立場が分からないまま、狂暴な刺客に追われる緊張感”を、これでもかと感じさせる演技は必見です。

大満足のスラッシャー展開

ホラー映画で一番がっかりしてしまう要素と言えば、“死に様のダブり”ではないでしょうか。せっかく5人も6人も揃っているのに、半数ぐらい同じような死に様だったり、尺の問題なのか、急に3,4人まとめて脱落したり……。

『超擬態人間』のすごい点は、限られたシチュエーションの中で皆、多種多様な死に様を見せてくれるところです。 そう、みんな違って、みんないい。(←?)

その“散りざま”も、やたら大爆発したり、無意味に体がバラバラになるといったぶっ飛んだ演出ではなく、非常に肉体的に仕上がっています。肉体的というは臓器・器官的な意味で、絶対にご飯とか食べながら観ないほうがいいタイプの演出です。 なかには『悪魔のいけにえ』(1974)のオマージュと思える残虐シーンもあり、ホラーファンも満足の“激痛”シーンも満載。正直、普段どんな生活をしていたら、こんな演出を思いつくのか……(褒)

個人的には、親の仇かと思うくらい散々な目に遭う天然パーマの人物が不憫でなりません。

さらに風摩たちが逃げ込んだある建物には、強制的に行為をさせるというマッドサイエンティスト大歓喜な“あるもの”も登場します。変な意味とかではなく、衛生的な面で病気になりそうな、物騒な雰囲気もプンプンしていました。 「ローションなくてもいけるね?!」は上半期ベスト10に食い込む名(迷)ゼリフです。

あくまで『幼児虐待』をテーマに描いている

「幼児虐待をホラーで描くなんて…!」と正気を疑う人もいるかもしれませんが、何を隠そう藤井監督は2児の父親。幼児虐待のニュースを耳にするたびに気分の悪い思いをしてきたと舞台挨拶で語っています。かといって、決して説教臭い映画にしたくないという思いから、今回のような予想外なジャンルとの掛け合わせが誕生したようです。

例えば、海外映画では子どもをふくめた家族にDVをする夫を、スリラーテイストで描いた『ジュリアン』(2017)といった映画もあります。

父親の狂気が少年を追い詰める…映画『ジュリアン』予告編
父親の狂気が少年を追い詰める…映画『ジュリアン』予告編

社会問題を意外なジャンルにかけ合わせる手法は、余計な説明を一切なくしながらも、その問題を真っすぐ観客に伝える効果を持っているのです。

他にも、『超擬態人間』の公式ツイッターでは、幼児虐待についてのニュースなどをつぶやくなど、社会性のある作品だということをしっかりアピールしています。何もいたずらに物騒なジャンルと掛け合わせたわけではないのです。

映画には“社会性”を好きなジャンルに乗せて作品にできる力があり、『超擬態人間』からは、そのパワーをビンビンに感じ取ることができました。 映画の力と現場の力。その両方を感じ取れる本作は、今の暗い世の中にこそ必要なのではないかとも思います。

本作は4月24日から全国順次上映の予定でしたが、コロナウイルスの影響で公開延期となってしまいました。 しかし、エネルギーに飢えている人にこそ見てほしい、パワフルな作品であることは間違ありません!

公開されたときには、ぜひ外出自粛でなまった体を本作で刺激させてはいかがでしょうか?

作品概要

  • 原題:超擬態人間 (ちょうぎたいにんげん)
  • 英語題:MIMICRY FREAKS
  • ジャンル:ホラー、スリラー
  • 素材形式:カラー
  • 本編尺:80分
  • 監督/プロデューサー/脚本/撮影/編集:藤井秀剛
  • キャスト:杉山樹志、望月智弥、田中大貴、河野仁美、桂弘、坂井貴子、越智貴広、宮下純、安井大貴

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