『モバイル決済はリアル店舗での普及よりも、(まずは)ネットサービスに普及するべきだ!!』
……と、突然のシャウトですが、日本国内でも、ALIPAY(アリペイ/支付宝)やWeChatPay(ウィーチャット/微信支付)といった中国のモバイル決済についての紹介記事やSNS投稿を目にする事が増えてきました。
『コンビニでQRコードを読んで買い物できる』
『中国のコンビニやマクドナルドで現金出すと珍しがられる』
『中国は偽札対策でモバイル決済が普及した』
等々と、『リアル店舗でのキャッシュレス』ばかり注目されているようで、私個人としては『違うんだ!』『そこが重要なんじゃないんだって!』と煮え切らない思いをすることが多い昨今です。
筆者は年間を通して中国に滞在している期間の方が長い生活をしているのですが、コンビニやスーパー、そして麺屋さんなどで買い物をする時には今でも現金を使っています。バスに乗る時も現金で支払っています。そのほうが便利で早いからです。特に路線バスの支払いの場合は、小銭で支払ったほうがモバイル決済をするよりも遥かに短い時間で済みます。
しかし『電話料金の支払い』『ソシャゲの課金』『動画サービスの課金』『音楽サイトへの課金』といった時はどうしてもモバイル決済が必要となっている、という現状です。
もちろん個人の生活スタイルによって変わってくる所ではありますが、日本の報道やネットメディアで、『店舗でのQRコード決済や、キャッシュレス』ばかりが注目されるという理由としては、中国への旅行者や短期滞在の出張などで訪れた人が、コンビニエンスストアで買い物をする様な事はあっても、中国でゲームに課金したりペイパービューで動画を見たりすることが無いからなんだろうと思います。
財界の偉い人たちも同様に、課金ゲームなんてやらないし、ネットで課金して動画を見る事なんかもないせいで、日本の業者さんもメディアも、どうしても『店舗でのキャッシュレス』ばかりに注目しがちなのではないでしょうか。
例えば……最近何かと話題になる『Paypay』ですら、ソフトバンク株式会社とヤフー株式会社が共同で製作したにもかかわらず、SoftBankの携帯電話料金や、Y!Mobileの携帯電話料金をPaypayで支払えない、という状況です。本気で普及させる気あるのでしょうか。
そこで今回は、今まで日本であまり紹介されることが無かった『インドア=家の中でモバイル決済を使う』ということについて、中国の現状を元にご紹介したいと思います。
Index
中国で携帯電話料金を支払ってみる
中国の携帯電話料金をモバイル決済を使わずに支払ってみたいと思います。今回の紹介する『中国移動(China Mobile)』の場合、日本のように翌月に利用料を請求される形ではなく、プリペイド式での支払いとなります。
支払い方法は幾つかありますが、代表的なものは下の二つです。
- 店舗での手続き(電話に課金できそうな業者、店舗を探し、お金を渡して電話番号を伝える)
- ネットバンクを用いて支払う
『1』が明らかに面倒な方法なであることはご想像がつくとおもいますので、今回は『2』についての手順を説明してみましょう。
中国の携帯電話料金をネットバンク経由で支払う流れ
モバイル決済を使わずに払おうとする場合、まず携帯電話キャリアのホームページにログインします。
電話番号と暗証番号でログインをします。QRコードでもログインできますが、今回はモバイルを使わない手順の解説なので、二つの番号を入れます。
久しぶりにこのページにログインをしたので、SMS認証を求められてしまいました。携帯電話でSMSを受け取る必要がありますが、この辺りの手順は世界共通ですね。
程なくして、携帯電話にセキュリティーコードが届くので、それを入力します。
右下で入金額を選んで、立即充値(すぐにチャージ)を選ぶと楽ですが、今回は10元だけの入金をしたかったので其他を選びます。
10元を選んで开始充値(チャージ開始)を選択。
これ、数年前は毎月やっていた作業なのですが……今改めてやってみると、もう面倒で仕方がありません。
とはいえ、ネットバンキングを利用します……。
銀行口座名とパスワードを求められるので入力します。
ワンタイムパスワードと、SMS認証セキュリティコードを選択し、確定を押します。
ワンタイムパスワードは、ジャパンネット銀行などが用いているものとほぼ同じ仕組みのトークンを用いた物ですが、それに加えてSMS認証が必要です。セキュリティ上は堅牢になりますが、どちらか一方の場合よりも入力は面倒です。
※銀行によってはワンタイムパスワードではなくUSBキーで認証する場合もあります。
SMS認証コードには有効時間の制限があります。ワンタイムパスワードも一分間程度で次の番号に変わってしまいます。つまり同時に入力……というと大袈裟ですが、両方の制限時間内に入力することが求められます。
どちらかを一文字でも間違えると、両方の入力共にやりなおしとなりますので、さらに手間がかかります。
……という事で、やっと『10元』の入金が完了しました。(昔は毎月こんな面倒くさい事をやっていたのが自分でも信じられません)
……という事で、モバイル決済を使わずに電話料金を払うのはとても面倒でした。
中国の携帯電話料金をモバイル決済を使って支払う流れ
では、やっと本題。前述の手続きを、モバイル決済を使って行ってみようと思います。
携帯電話キャリアのアプリから、チャージを選びます。
先ほどと同様、10元を入金してみましょう。
支払はウィーチャットでも可能なのですが、今回はアリペイを選びました。
すると、アリペイのアプリが自動的に起動します。私の場合は、指紋認証が可能な端末なので、認証は指紋スキャナ=携帯電話の背中を触るだけでOK。
『アリペイと言えばQR決済』というようなイメージもありますが、この場合はQRコードすら使いません。
以上で入金完了です。ここまでの全プロセスに20秒もかかっていません。
面倒な番号入力はゼロ(指紋認証不可能な携帯電話を使っている場合は、一度だけ、アリペイのパスワードを入力する必要があります)。
以前は、ネットバンクでの入金には10分以上かかっていたので、1/30くらいの時間で済んだという事になります。
しかも、必要な作業は、入金額を選んで携帯電話の背中を触るだけです。
モバイル決済が最も効果的なのはリアル店舗ではない!
実はリアル店舗で現金の代わりにモバイル決済を使う場合は、それほど時間や手間の軽減にはつながりなりません。反面、今までネット決済で行っていた取引を、モバイル決済に切り替える事で、大幅に時間と作業の手数を節約できました。
今回は、携帯電話へのチャージ例で比較しましたが、携帯電話料金は面倒でも殆どの人が支払わなければならないものです。
しかしこれが、定額動画配信サービスや、ペイパービュー放送、ゲームへの課金、有料音楽配信等のエンターテインメント分野となると話は少し違ってきます。
定額動画配信サービスなどは日本でも普及してきましたが、『お金がかかる』という事以上に『加入手続きが面倒』『クレジットカード登録が必用』といった理由で躊躇している方も多いのではないかと思います。
(あと『お試し期間終了後に登録解除を忘れてしまうので、自動更新で課金が発生した事があって嫌』ってのもあるかもしれません。)
特にライト層のユーザーは、iTunesやGoogle Playなどの大手が提供している以外の……新興サービスや、知名度の低い企業の有料ネットコンテンツは使ったことが殆どない方も沢山居るはずです。
このような状況は、ネットで新しいサービスを展開したい新規参入業者にとっては著しく不利となるのです。
つまり、モバイル決済の普及はネット上での有料コンテンツを普及させる環境を整えることに繋がっているのだと私は考えます。
中国のスマートテレビで定額動画配信サービスに登録してみよう
もう一つだけ事例をご紹介しておきましょう。
私の家には『海信(Hisense)』のAndroid OSで動くスマートテレビがあります。
面白そうな作品もあるのですが、VIP的なサブスクリプション会員にならないと見ることができないものがあります。
という事で上記の画面で『サブスクリプションサービス購入』を選択します。
利用期間の選択画面に推移。長期間契約すると割引になりますが、今回は使い方の説明なので1か月で良いでしょう。
支払いメニューが出てきます。
ここでも、アリペイかウィーチャットで支払うことができます。
カスタマーセンターに電話をすれば他の支払い方法も利用できるのかもしれませんが、メニューに出て来るのは上記のモバイル決済選択のみです。
あとは、スマートフォンでアリペイのアプリを開き、画面に表示されたQRコードをスキャン。
その後、電話料金支払いの場合と同様、指紋認証するだけ。以上で、サブスクリプションサービスへの課金も完了です。
やっぱり全プロセスで20秒かかりませんでした。
※ちなみに、自動延長はありませんので、一か月後には再び課金する必要があります。
まとめ
『小売店でのキャッシュレス』ばかりが注目されがちな中国のモバイル決済ですが、実は小売店よりも『ネット上での課金サービス』との相性が良いのです。
当サイトを見ている方々はインターネットコンテンツにも関心がある方が多いので、ネットフリックスなどのサブスクリプションサービスに加入した経験のある方もいらっしゃると思います。
ユーザー情報を入力して、パスワードを決めて、クレジットカード番号を入力して……といった煩雑な手続きが全くありません。また、個人情報漏洩などの心配も少ないです。(これはサービスの提供側にも言える事だと思いますが)
こういった事からも、知名度の低いサービスの場合でも、ユーザーは気軽に課金しやすい、という事だと思います。
電話代を払うため、ウェブマネーを支払うために雨の中コンビニまで走って行った経験のある方も多いのではないかと思います。でも『モバイル決済』は、コンビニへ等のお店に走って行った先で使うものではなく、家の中で用事を済ませるためにこそ活用すべきです。