映画『JOKER』 レビュー。 不安が共感となり没入してしまう……。 - uzurea.net

映画『JOKER』 レビュー。 不安が共感となり没入してしまう……。

画像 JOKER 日本公式webサイトスクリーンショット
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執筆: UZUREA編集部 アイコン UZUREA編集部

2019年10月4日から放映が始まった映画『ジョーカー』を観てきたので気持ちの冷める前にこの記事を寄稿します。

※当記事にはネタバレとなる記述が含まれます。 未視聴の方でネタバレが嫌な方はご注意ください。

映画『JOKER』レビュー

まずはじめに、僕はこの映画に対して、大きな期待はせず観に行きました。

もっと言うならば、そもそも観るかどうかという事を考えてもおらず、バットマンシリーズや、そこに登場するジョーカー達に対しても特別な思い入れはありません。 シリーズのファンや、熱心な映画ファン達の評価を見聞きしても、「そういう意見もあるんだな、ふーん」といった程度の感覚でした。

観に行った理由も、夜に時間が空いていたので、近所のシネコンの予定を見て『JOKER』のレイトショーが空いているようだったので、じゃあ観てみるか、と。 その程度の人間の感想としてお読みください。

『JOKER』のあらすじ

ピエロ装束のパフォーマーとして日銭を稼ぎ、コメディアンを目指す『アーサー』が、どういった経緯で『ジョーカー』となっていったのかという『物語』。

順調とは言えない生活の中、日々をなんとかやり過ごしているアーサー。 失敗を繰り返す事を上司に指摘され、仕事が終わると古びた集合住宅に戻り、病気の母を介護する……。

人として極端に誠実な訳でもなく、かといって特別に凶悪という事もない。 そんなおおむね善良と呼べる彼は、如何に狂っていき、結果的に悪のカリスマと呼ばれる存在に成ったのかを描いています。

現実的すぎる『沈んて行く描写』に没入してしまう

仕事で失敗を繰り返し、同僚のパフォーマーや上司からも距離を取られている様子のアーサー。 その上、突発的に『大声で笑いだしてしまう』という疾患を持っていて、その為なのか、それとも別の要因なのか……定期的に市の公的カウンセリングを受けています。

病気の母、自身の障害、上手くいかない仕事、人間関係、貧困……どれも絶望には至らないけれど、かといって改善や、現状を打破する手立ても見当たらない。 毎日を首の皮一枚で乗り切って、自分でも見えているのかどうか分からないような希望にすがって生きていく。

ゆっくりと老いて、ゆっくり沈んでいく。 そんな風に描かれるアーサーの生活を観ているうちに、肺の中に蜘蛛の巣が張っていくような、不思議なストレスを感じていきます。

カウンセリング帰りのバスの中、目が合った子供におどけた仕草をとるアーサー。 子供は喜ぶが、その母親が迷惑そうに『子供にかまうな』と吐き捨てます。 その刹那、間の悪い事に笑い出してしまう発作が発症し、バスの中に響き渡る笑い声。 バス内の他の乗客達はアーサー奇異の存在と認識し、『関わりたくない』という空気が漂います。

映画『ジョーカー』本予告【HD】2019年10月4日(金)公開
バスでのシーンが見られる、 映画『ジョーカー』公式予告動画

多くの人が本当は善良な人間として立ち振る舞いたい。 でも善良でいる事すら、じつは相応の能力が必用だという事を突き付けられる。 その能力が足りなかったり、やり方を間違えたりすると、一転して犯罪者か狂人、その予備軍のような扱いを受けてしまう。

道化にもなれない。 でも道化を続ける以外に、もう道が無い。

そんな状況に置かれ続けると人間はどうなってしまうのか。 この不安は共感となり、アーサーへの感情移入度が高まっていきます。

うすうす感じる破滅。 周囲とのずれ。その成れの果て。

小さな不幸や、ボタンの掛け違いは悪い方向に首をもたげて、時に最悪の事態を招きます。

地下鉄で酔ったビジネスマン3人に絡まれ、結果として彼らを殺害してしまう事をきっかけに、色々な出来事が目まぐるしく絡み合い、狂気の生み出した妄想と、周囲からの不当な扱いの成れの果てに、アーサーはジョーカーに成り替わっていきます。

結果としてアーサーは母を殺害し、部屋を訪ねてきた元同僚も殺害し、道化の化粧をして派手なスーツをまとい……かつて憧れだったTV番組に出演し、放映中に司会者を殺害します。

凶行の末に。

TV局での凶行の後に逮捕されたアーサーは、街で起こる暴動の様子を護送中のパトカーの中から眺め、笑います。

このシーンで、僕の大好きな曲のひとつ、Creamの『White Room』が流れます。

Cream – White Room – Lyrics

何かを大きな出来事を超えた達成感と、何もかもどうでも良くなった時の焦燥感が合わさったような曲。 この曲が絶妙なタイミングで流れてきた瞬間、僕にとっての映画『JOKER』のベストシーンが決まりました。

— 結果として、ジョーカーはパトカーから暴徒によって救出され、その場で彼らのカリスマとして崇められる場面で一旦物語は終わり、場面は切り替わってジョーカーが精神病院でカウンセラーと話しをしているシーンに。

どうやらジョーカーが、自分の半生を語っていたというような状況の様です。

……となるとこの映画で描かれてきた『物語』は全部がジョーカーによる創造=でっち上げだったのでは、という解釈もできそうです。

『誰もがジョーカーに成りえるかもしれない』という内容こそが、彼の扇動でもあり、『笑ってしまう発作』に至っては、「ここは笑う所だ」というジョーカーなりの演出だった……深読みしすぎでしょうか。

まとめ

アーサーが置かれていた環境……『何もかもうまくいかない状況』は、その度合いや時期、期間は違えど、多くの人が一度は感じた事があるのではないでしょうか。

うまく行ってない……むしろ悪くなってきている気もする。

そんな描写を過去の経験と照らし合わせて客観的に楽しむ事ができる人なら良いのですが、現在近い環境・状況に身を置いてる人間にとっては、かなり重い映画となるのではないかと思いました。

人は、自分が狂気に踏み込んだ瞬間は、それに気づかないのかもしれない。 狂ってると気づいたときには、もうどうしようも無いのかもしれない。 そんな漠然とした人生のバッドエンドについてしばらく考え続けてしまいました。

不穏な事ばかり書きましたが、それでも結論としては映画『JOKER』はとても見応えがあり、面白い作品でした。

あえて欲を出して不満点を書くならば、アーサーがジョーカーとなった後の悪役としての活躍をもっと観てみたかった。 鬱屈とした環境からやっと解き放たれ、最悪の存在として暴れる……そんなカタストロフィを堪能したかった。

Jimmy Durante – Smile | Joker OST
Joker (BGM + 挿入歌) by Various Artists. Youtube プレイリスト
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