Netflixで配信された大ヒットドラマ『イカゲーム』で冷酷なヤクザであるドクスを演じたホ・ソンテをご存じでしょうか。同作の他にも数々の映画、ドラマに出演している韓国の俳優です。
当記事では、このホ・ソンテに注目し、彼が出演している映画作品についてまとめてみました。
Index
- 1 名優ホ・ソンテが出演する映画8選! 『イカゲーム』で名を上げた韓国の実力派バイプレーヤーに注目
- 1.1 韓国俳優ホ・ソンテのプロフィール
- 1.2 ソン・ガンホからのビンタを喰らうシーンが話題に『密偵』(2016)
- 1.3 こんな情けないホ・ソンテ見たことない! 『男の本性』(2016)
- 1.4 過去イチ見た目が怖い役ですが……? 『犯罪都市』(2017)
- 1.5 勝つためには汚い手段も取るチンピラを熱演『鬼手〈キシュ〉』(2019)
- 1.6 ホ・ソンテ史上最大のヒール役?『マルモイ ことばあつめ』(2019)
- 1.7 【祝】チンピラ役からお堅い検事役に!『権力に告ぐ』(19)
- 1.8 コメディもいけるホ・ソンテ『ヒットマン エージェント・ジュン』(2020)
- 1.9 そして社長役へ……『ステラ SEOUL MISSION』(2022)
- 2 おわりに
名優ホ・ソンテが出演する映画8選! 『イカゲーム』で名を上げた韓国の実力派バイプレーヤーに注目
ホ・ソンテは、日本での知名度はまだそれほど高くないかもしれませんが、本国では60作品以上の映画やドラマ作品にクレジットされる、名バイプレーヤーです。
そこで今回は個人的におすすめしたいホ・ソンテの出演作をまとめました。『イカゲーム』に負けず劣らずの鬼畜外道役から、強面なのにどこか抜けている……三枚目な役など実にさまざまな活躍を楽しめます!
韓国俳優ホ・ソンテのプロフィール
名前 | ホ・ソンテ (Heo Seong Tae) |
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ハングル表記 | 허성태 |
生年月日 | 1977年 10月 20日 |
身長/体重 | 180cm, 75kg |
デビュー作品 | 『王になった男』(2012) |
『イカゲーム』の役ではすがすがしいほどの悪人役ですが、ご本人のインスタを見ると中々愛嬌のある役者であり、同時に猫を愛する人であることがわかります。
ブレイクのきっかけは映画『密偵』でのビンタシーン
本国でのブレイクはソン・ガンホ主演作の映画『密偵』(2016)と言われています。作中で主演のソン・ガンホにビンタされるシーンが話題となり、その後様々な映画・ドラマに出演しています。(デビュー自体は 2012年の映画『王になった男』への出演)
『密偵』は2016年と最近の作品ですが、ホ・ソンテは35歳で俳優を目指すという、俳優としては少し遅めのキャリアです。俳優になる以前は大手企業の営業部に勤めていました。
子どものころから映画が好きで、偶然見た俳優のオーディション番組に応募。脱サラしてゼロから俳優業に転身しました。日本で例えるなら、公務員から役者を目指した役所広司みたいな感じでしょうか…?
遅咲きゆえに、今後どんな作品に出演するのか気になる俳優のひとりです!
ソン・ガンホからのビンタを喰らうシーンが話題に『密偵』(2016)
ホ・ソンテが脇役ながらも注目を集めた代表作。『パラサイト 半地下の家族』のソン・ガンホと『新感染 ファイナル・エクスプレス』のコン・ユが共演したスパイ・サスペンス映画です。
1920年、日本統治下の朝鮮半島を舞台に、日本警察として独立運動団体を取り締まる元朝鮮人イ・ジョンチュル(ソン・ガンホ)と、武装独立運動団体『義烈団』のリーダー、キム・ウジン(コン・ユ)の数奇な運命を描きます。
実は本作の主演を務めるソン・ガンホは、ホ・ソンテが尊敬する俳優のひとり。(ホ・ソンテの提案により実現した)ソン・ガンホからビンタをされるシーンが話題を呼んだと言われています。
ほかにも、日本警察側について『義烈団』の行方を追うシーンでは、日本語はもちろん、上海語をも披露していましたもありました。 ただ日本警察の下っ端であるため出演シーンは決して多くはありません。
上記のビンタシーンも、オム・テグ演じるハシモトのマシンガンビンタ(超パワハラ)が強烈すぎてが若干陰っていますが、その存在感といい「絶対いい奴じゃなさそう…!」と思わせる風貌は必見。
途中、ソン・ガンホとオム・テグの間に挟まれて、しどろもどろになる情けなさも良かったです。
駒扱い感 | ★★★★(4) |
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有能さ | ★★★(3) |
悪人面 | ★★★★(4) |
板挟み度 | ★★★(3) |
こんな情けないホ・ソンテ見たことない! 『男の本性』(2016)

スターチャンネルEX スクリーンショット
韓国の中華料理店の店長・テフンは、ある日美容師の女性に恋するも、少なからず下心があることに葛藤します。何とか美容師と食事の席を設けることに成功しましたが、そこにはプレイボーイなテフンの友人と、店でバイトする女子も交えて何かと面倒な流れに…。
『イカゲーム』などで見られる強面な印象を一切排して、終始冴えない中年男性をホ・ソンテが熱演! バイプレイヤーとしての地位を確立したホ・ソンテが主演を務める、貴重な作品でもあります(ただし作品は前後編の構成で、ホ・ソンテは前編のみ登場)
これまでのホ・ソンテ出演作が夢か幻かと思うほど、演じたテフンは声も気も小さい人物。美容師の女性を好きになった理由も「カットの最中、膝が股間に触れたから」という中学2年生かとツッコみたくなるレベルです。店長なのに、かわいい柄にエルモがプリントされたエプロンをつけている姿もシュールです。
『イカゲーム』ではヤりたいときにヤりまくっていたホ・ソンテですが(最悪の表現)、『男の本性』は男女それぞれの「我慢」を描く作品。ちょっとコメディチックな作風ですが、ヤりたくて悶々とする男の情けない姿を徹底的に描いています。
特にホ・ソンテ演じる主人公テフンは奥手ゆえに、その情けなさが際立っていました。男性なら、意味もなくムラムラしていた当時を思い出してもどかしくなる作品です。女性は「いるなあ…こういうみっともない男……」と蔑みながら観ていただくのがよろしいかと。
パッとしないおっさん度 | ★★★★★(5) |
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酒癖の悪さ | ★★★(3) |
ムラムラ度 | ★★★★★(5) |
共感度 | ★★★★(4) |
過去イチ見た目が怖い役ですが……? 『犯罪都市』(2017)
もはや嫌いな人はいない(怖くて嫌いと言えない場合も含む)、みんな大好き“マブリー“ことマ・ドンソク主演のクライムアクション。その人気を受けて、2022年には続編となる『犯罪都市 THE ROUNDUP』も公開されました。
第1作の舞台は2004年のソウル。主人公マ・ソクト刑事が毒蛇組とイス組の二大暴力団を取り締まり、組織のパワーバランスを保っていました。
しかしそこに中国の『黒竜組』が乗り出し、毒蛇組の組長を虐殺。組を乗っ取ったことで、ソクト刑事が管理していた組織のバランスは崩れ、街の秩序は崩壊し始めます。
その虐殺された毒蛇組の組長を演じているのがホ・ソンテです……涙。
ビジュアルからしてかなりラスボス感が強いのですが、見せ場といえば死んだ後の方が強烈です。
生前はマ・ドンソク演じるソクト刑事にプライドを蹂躙されたり、喧嘩相手のイス組の組長と無理やり仲直りさせられたりと、踏んだり蹴ったりでした。
ちなみに毒蛇組の組長を殺害した「黒竜組」のボスを演じるのは『プンサンケ』のユン・ゲサン。19年に公開される『マルモイ ことばあつめ』では、ホ・ソンテにひたすら蹂躙されるリュ・ジョンファンを演じています。
人相の悪さ | ★★★★★(5) |
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出オチ感 | ★★★★(4) |
強さ | ★★(2) |
分裂度 | ★★★★★(5) |
勝つためには汚い手段も取るチンピラを熱演『鬼手〈キシュ〉』(2019)
両親はおらず、最愛の姉は天才囲碁棋士によって死に追いやられた孤独な少年・グィスの壮絶な囲碁と暴力による復讐劇を描いたバイオレンス囲碁アクション。
ちょっと何言っているかわからないかもしれませんが、本当に囲碁で人が死んだり、碁石で人がボコボコにされたりします。主人公グィスを演じるクォン・サンウのアクションや、碁盤の様に割れた腹筋も必見の作品です。
今作でホ・ソンテが演じるのは、過去にグィスの師匠を殺したギャングのチャプソ(雑草の意味)。 囲碁の実力はそこそこですが、自分が賭碁で負けると、勝つまで何度も賭け続けるというギャンブル依存っぷり。しかも自分が勝てば、それまでの負債は帳消しにしろという横暴さ。
「勝つためならどんな手段もいとわない」と言われるとおり、掛け金がなくなれば不動産の所有権、それがなくなると自分の女を賭けに出すというクズっぷり。『イカゲーム』のドクスを彷彿とさせる極悪さがにじみ出ています。
しかし『イカゲーム』のドクスと徹底的に違うのは、主人公と対峙したあとの振る舞いです。
悪役の多いホ・ソンテですが、悪一色に染まりきっていないキャラもいいなあ…と再認識させてくれる良作です。
カモ度 | ★★★★★(5) |
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極悪度 | ★★★★(4) |
意外な素直さ | ★★★(3) |
囲碁の強さ | ★★★(3) |
ホ・ソンテ史上最大のヒール役?『マルモイ ことばあつめ』(2019)
『密偵』同様、こちらも1940年代の朝鮮半島を舞台にした歴史映画。
日本統治下であり、母国語が日本語に変えられるなか、ことばや方言を集める「マルモイ(ことばあつめ)作戦」を描いた感動作です。 これまで多くのヒール役を演じてきたホ・ソンテですが、個人的にその頂点に立つのが本作だと考えています。
『マルモイ ことばあつめ』でホ・ソンテが演じる上田は、大日本帝国側の朝鮮総督府として、ことばあつめを厳しく取り締まる人物です。
その手段を選ばない非道さはもちろん、目的のためなら少年にさえ手を上げ、目の前で銃を振りかざすという凶行まで。 『鬼手』のチンピラ役が赤子に見えるほど道徳心を持たない振る舞いは、これまで演じてきた役の中でも特に鬼畜生感がすごいです。
日本語も余すことなく披露しており、ことばあつめを弾圧する立場ゆえか、作中で一言も朝鮮語を話さない徹底した役作り。
ほか作品と異なり、声を荒げたり、部下に理不尽な暴力を振るわないインテリ風を吹かせているのも印象的。 その分、他人の弱みに付け込んだり、間接的に人を死に追いやるなど、鬼畜の所業の数ではやはり一番かもしれません。
インテリ度 | ★★★★(4) |
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神出鬼没度 | ★★★★(4) |
朝鮮語の使用頻度 | (0) |
冷酷さ | ★★★★★(5) |
【祝】チンピラ役からお堅い検事役に!『権力に告ぐ』(19)
韓国史上最大の金融スキャンダルとして悪名高い「ローンスター事件」(作中ではスターファンドという名になっている)をもとに、権力者たちと真っ向勝負を挑む検事の活躍を描く金融サスペンス。
予告やビジュアルから非常にシリアスな空気が漂いますが、ごり押しの検事=ゴリ検の異名を持つ熱血主人公がいいキャラをしているため、かなりアツい展開も見られます。池井戸潤の作品が好きな人はハマるかもしれません。
「ローンスター事件」とは、2003年にアメリカ系ファンドのローンスターが、韓国外換銀行(KEB)を不当な低価格で買収した後、売却で多額の利益を得たことで、脱税や株価操作などの容疑により国民からも批判を受けた事件です。
これまでゴリゴリの悪役ばかりを演じているホ・ソンテが、今作では中央捜査部でスターファンドにまつわる事件を追うチェ検事を演じてます。
熱血のゴリ検とは対照的に、冷静で淡々と事件捜査を行いますが、しぶしぶながらゴリ検に協力している様子にニヤニヤしてしまいました。
一方で、ゴリ検と自分の部長との間で板挟みになったり、ゴリ検とは味方になったり敵対したりと、立ち位置がブレにブレまくっている世知辛さも垣間見えます。
チンピラ・極道などの役が多いですが、意外とお堅い職業の役も雰囲気がマッチしています。さすがバイプレイヤー…!
インテリ度 | ★★★★★(5) |
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ゴリ検に付きまとわれ度 | ★★★★(4) |
ゴリ検に振り回され度 | ★★★★★(5) |
正義感 | ★★★(3) |
コメディもいけるホ・ソンテ『ヒットマン エージェント・ジュン』(2020)
本人は漫画家になりたいのに、身寄りのないところを拾われて暗殺要因としての才能を開花させてしまった男のコメディアクション。
全然引退できないので、主人公であるジュンは任務中に自らの死を偽装。身分を偽って漫画家になるもまったく売れず、妻の養いで暮らすダメ人間に成り下がってしまいます。
ジュンが酔った勢いで描いた暗殺要因時代のエピソードが大ヒットしますが、当然任務はトップシークレットなので、元雇い主であった『国家情報院』は激怒。ホ・ソンテはとりわけ怒っている国家情報院の次長を熱演しました。
漫画を描いた人物がジュンだといち早く見抜きますが、キレ者要素はそこまでで、あとはどんどんダメ上司っぷりを発揮してくれます(笑)
マンガが出たタイミングと、当時ジュンが所属していた部隊の人間が殺される事件が重なったことで、根拠もないのにジュンを犯人と決めつけたり、使えない部下にはすぐ鉄拳制裁。キレキレのパワハラキャラを演じています。ホ・ソンテとパワハラキャラは相性がいい…(褒)
ダメ上司すぎて部下から「魚みたいな顔のくせしやがって!」と逆ギレされて、ちょっとうろたえているところもたまりません。
口よりも先に手 | ★★★★★(5) |
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有能さ | ★(1) |
部下からの信頼 | ★★(2) |
打たれ強さ | ★(1) |
そして社長役へ……『ステラ SEOUL MISSION』(2022)
最後に、当記事掲載時点で映画館で放映中の作品。
自動車金融の取り立て屋である主人公(ソン・ホジュン)が同僚に裏切られた挙句、社長の車を盗んだ濡れ衣まで着せられるアクションコメディ。主人公はレトロカー『ステラ』に乗って、社長からの追っ手をかわしつつ、逃げた同僚をさがします。
ホ・ソンテは主人公の勤める自動車金融会社のソ社長を演じました。社長とはいえ借金の取り立てに車を担保にさせるほか、無能な部下には冷酷な目に遭わせるなど、血も涙もない人物に見えます。
しかしコメディというだけあって、ちょいちょいギャップ萌えな要素を炸裂させるホ・ソンテ。
「逃げるなら足を切れ」だの「もう失敗しない最善の方法は死ぬことだ」だの、パワハラ上司も黙ることを顔色一つ変えずに言う一方で、主人公の父の葬式が終わるまで、捕まえるのを律義に待ってくれます。
何なら優雅にひとりで囲碁を打ってました。(『鬼手』ではあんなに負けたのに……。)
他にもJKのインスタで偶然主人公の足取りをつかんだソ社長はちゃんと(?)“いいね”をするなど、冷酷な一方でネチケットは備えていました。
発言と顔がずっと怖いのに、シュールな一面を見せるのでギャップ萌え最高の作品です。そもそもあんなに強面なのに、時速50キロのステラに追いつけない時点で可愛い。ホ・ソンテに萌えたい人はマストで観るべき作品です。
冷酷さ | ★★★★★(5) |
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ネチケット | ★★★★★(5) |
賢さ | ★★★(3) |
ギャップ萌え | ★★★★(4) |
おわりに
今回ご紹介したホ・ソンテの出演作はごく一部。ドラマやキャスト欄に名前が出ていないほどの脇役も含めれば、その数はもっと大きくなります。
そして今後期待したいのは、やはりホ・ソンテの主演超大作です。『男の本性』で主演を務めていますが、出番は前後編のうち前編のみ。インディー作品のため、まだまだ主演作としての認知度も低いのも惜しまれるところです。
個人的には冴えない中年男性という設定は活かしつつ、計り知れない巨大な陰謀とかに巻き込まれるホ・ソンテが見たいです!ヨン・サンホ監督かナ・ホンジン監督あたりでお願いします!