当記事でご紹介するのは、 DVDFab社AIシリーズの新商品のひとつ『動画加工AI(Video Enhance AI)』。 このソフトはAIによるディープラーニングで使って動画の解像度を上げ、画質を向上させる『ビデオアップスケーリング・ソフトウェア』のひとつで、2021年11月時点では、Windows版のみ提供されています。
当記事ではソフトウェアのインストールから順を追って解説してきますが、アップスケールリングの結果が気になる方は以下の目次から『アップスケーリング後のデータを比較』をクリックして先へお進みください。
Index
DVDfab 動画加工AI 解説
DVDfab動画加工AIは、動画データのアップスケーリング(解像度の引き伸ばし)をするソフトウェアです。 通常はアップスケーリング時に発生する画像劣化を、AIによって補間して可能な限り綺麗な画質の高解像度動画に変換する……というのがウリの製品で、DVDのリッピング、動画変換などを行うソフトウェア『DVDfab』シリーズの製品として発売されています。
とはいえ、完全に独立したソフトウェアとして提供されており、類似する機能をもつ『DVDfab Enlarger AI』のように基本となるDVDFabソフトウェアをインストールしなくても動作します。
要求スペック、対応動画フォーマットなどは下記の通り。
推奨スペック
対応OS | Windows 10 64bit版のみ | |
---|---|---|
CPU (Intel) | 最小限:2015年以降のIntel CPU(第4世代~) | 推奨: core-i7最小限(第7世代~, 4GHz以上) |
CPU (AMD) | 最小限:AMD2016年以降のAMD CPU | 推奨: Ryzen 7以上(4GHz以上) |
GPUモード利用時
GPU | 最小限構成 | 推奨構成 |
---|---|---|
NVIDIA | Nvidia 750Ti(GPU Compute 3.5)~ 2GB以上のVRAM搭載モデル |
NvidiaRTXシリーズ~ 6GB以上のVRAM搭載モデル |
AMD | GCN 1.0~ 例 HD 7750など |
RX 500シリーズ~ 例 RX 560, RX 570など |
対応ファイルフォーマット
対応ファイル (拡張子) |
.3gp, .3g2, .avi, .divx, .flv, .f4v, .m2ts, .mts, .mov,. mp4, .m4v, .mpeg, mpg, .dat, .mkv, .ogm, .rmvb, rm, ts, vob, .wmv, .wtv, asf, dvr-ms |
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ライセンスについて
利用ライセンスは、以下から選ぶことができます。
ライセンス期間 | 価格 | 備考 |
---|---|---|
1ヶ月間 | 9,439円 | (キャンペーンにより変動) |
1年間 | 12,979円 | (キャンペーンにより変動) |
無期限 | 17,699円 | (キャンペーンにより変動) |
オプション DVDfab 3-Computer License |
3,539円 | 3台同時インストールが可能 |
オプション Extended Download Service |
1,179円 | 公式アップデート後も 旧バージョンのインストールがいつでも可能に |
なお、ライセンスを購入しない場合は、5つの動画ファイルまでアップスケーリングできます。機能に制限はありません。この段階で使用感の様子を見た上で購入の検討をしてみてはいかがでしょうか。
※DVDfabは頻繁に価格の変更や、値引キャンペーン、クーポンの配布を行っています。DVDFabシリーズの最新価格やクーポンはこちらの記事で随時更新中です。
ダウンロードとインストール手順
ソフトウェアのダウンロードとインストールやライセンスの購入・支払いはDVDfabのホームページからオンラインで行えます。
DVDFab、Webサイト上部にあるメニューから、動画加工AIをクリックし、製品ページに進みます。

※面倒だという方は下記リンクから……。
『無料ダウンロード』をクリックしてソフトウェアをダウンロードします。
試用版も製品版もインストーラーは同じものです。
※インストーラーのダウンロード、およびインストール実行した時点では料金は発生しません、ご安心を。
※インストール後、ライセンス登録を促されますが、それも一旦無視して試用する事が可能です。
ダウンロード完了後、インストーラー(EXEファイル)をダブルクリックしてインストールに進みましょう。 『クイックインストール』の横に小さくある『カスタムへ』をクリックすると、インストール先の変更、デスクトップへのショートカットの設置の有無や、エラー情報の随時送信の有無など、いくつかの設定変更が可能です。
『クイックインストール』ボタンをクリックすれば、あとは自動でインストールが実行されます。 この時、追加データのダウンロードなども行われるので、インターネットに接続している環境で実施する必要があります。
その後、システムへのインストールが始まります。 笑顔のDVDfabモンキー君(勝手に命名)が登場すると、インストール作業は終了です。
ライセンス未適用でも試用期間として、5つの動画まで機能制限なく利用ができますので、購入前にどの程度まずはいくつかテストしてみると良いでしょう。
ライセンス 購入と認証の手順
ライセンスを購入し、製品版を利用する際には、インストール後にインターネット経由でDVDfabサーバーに接続し認証する作業が必要となります。
ライセンスの購入は、動画加工AIのソフトウェア起動画面で今すぐ購入をクリックしてもいいですし、DVDFab公式サイトの今すぐ購入をクリックしてもOK。 いずれにせよ、DVDFab 動画加工AIの決済ページにアクセスし、オンラインで支払いを行う事になります。
決済方法は、各種クレジットカード、Paypal、ビットコインなどに対応しています。
製品を購入する際には、メールアドレスとパスワードを設定します。 すでにDVDfab製品を利用している人であれば、購入時に同じメールアドレスを設定する事で、既存アカウントと紐づけれます。
このメールアドレスとパスワードを、動画加工AIのライセンス設定に適用する事で製品版機能が解放されます。
![右上の[▼アイコン]クリックし さらに[認証]をクリック](https://uzurea.net/cwp/wp-content/uploads/2021/05/dvdfab_videoenlAI08-500x357.png)
さらに[認証]をクリック

動画のアップスケーリング手順
インストールが終了し、ソフトウェアを起動すると下記のようなホーム画面が表示されます。
アップスケーリングしたい動画ファイルを、ホーム画面左上の[+動画を追加…]、もしくはホーム画面にドラッグ・アンド・ドロップでソフトウェアに読み込ませます。
動画が読み込まれると、画面が切り替わり各種設定が行えるようになります。
アップスケーリングの設定項目
アップスケーリングの各種設定は、右カラムに表示される箇所から変更が可能。 2021年5月現在の設定可能項目は以下のとおり。
AIモデル | 動画の種別にを選択する。 アップスケーリングの方針を決定し、結果に影響するものと思われるので、元動画に合った設定を選択しましょう。
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出力フォーマット |
出力される動画のフォーマットを選択。 雑に解説するならば、MKV=品質・柔軟性重視、MP4=汎用性重視、H264=汎用性重視、H265=高圧縮(データ軽減)&高解像度対応、とったところでしょうか。 良くわからないという場合は、MP4.H264にしておけば多くの環境再生させられるでしょう。
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出力時解像度 |
オリジナル同等を選ぶと、解像度は変更せず画質のみを向上させます。
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出力ビデオ画質 |
ビットレートの設定。
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基本的な設定項目などはこれだけです。 当ソフトのUIはシンプルにまとめられています。 細かい事はAIに任せて……という開発思想なのでしょう。
AIプレビューの実行
各種設定が完了したら、エンコードを始める前に画面右上にあるオレンジ色のボタンで『AIプレビュー』をすることができます。エンコードを開始してしまうと数十分~数時間かかる事はざらですので、ここで各種設定の効果を確認しておいた方が良いでしょう。
AIプレビューを実行し数分待つと、新しいウインドウがひらき、元動画とアップスケーリングを実行した後を比較で確認する事ができます。
このウインド中の更に左下で拡大表示などもできるので、細部もチェックできます。
アップスケーリングの具合を簡単に確認できるという点で有用な機能ですね。
アップスケーリングの実行
出力設定の選択が完了したら、画面右下の[開始]をクリックすると、いくつかの確認画面が表示されたのち、アップスケーリングが実行されます。

CPU、GPUの負荷が高い処理を行うので、リソースに余裕があるときに実行するのが良いでしょう。

『ハードウェア情報』 アップスケーリング実施にあたってCPU、グラフィックボードの対応状況がチェックされる。 画像は編集スタッフの年代物PC……
なお、ふたつめに表示されるハードウェア情報の下部にはこんな事が記載されています。
ヒント:変換速度はハードウェア配置によって異なります。 弊社の技術テスト結果では、動画加工 AIで1時間のビデオをアップスケールすると、NVIDIA GeForce GTX 1660 Tiが約7時間しかかかりませんが、Intel Graphics 630の場合は約50時間、Intel CPU i7-7700の場合は120時間です。
という事で、映画など長時間の動画を変換するには、現時点(2021年10月)では3~4万円のVGAを搭載したPCでも数時間。 それ以下であれば数日にわたって処理をし続ける……という事になりそうです。家庭用普及価格帯のPCで利用しようと考えているのであれば、後者(数日にわたる処理)を覚悟しておきましょう。
今回のテストでは、以下の設定で、実写動画、およびアニメ(カトゥーン)動画のアップスケーリングでテストを行いました。
動画の長さ | 8秒・実写 | 7秒・アニメーション |
AIモデル | 映画 | アニメ |
出力フォーマット | MP4.H264 | MP4.H264 |
出力時解像度 | 200%UP (2560×1440) | 200%UP (2560×1440) |
出力ビデオ画質 | 標準品質 | 標準品質 |
作業所要時間 | 76分 | 60分 |
アップスケーリングを開始すると、ステータス欄に進行具合がパーセントで表示され、『経過時間』がカウントされていきます。 開始後少しすると『タスクの残り時間(=アップスケーリングに要する総時間)』も表示されますが、これは処理内容によってどんどん加算(ごくまれに減算)されていくので、あまり参考にはなりません。
ステータスのインジケーターが100%に達しすると、完了報告のアラートが表示されます。
アップスケーリングデータを比較
実写素材の結果
まずは、実写動画のコマ画像の拡大で仕上がりを検証してみましょう。
200%でアップスケーリングをしているので、動画の表示面積の大きさはシンプルに2倍になります。
PC上で視聴する分にはそこまで大きな違いを感じることはないのですが、拡大してみるとオリジナルではボヤケていた黄色いジャケットを着た人物やその周囲など、より輪郭が協調されています。 ブロックノイズがはっきり見えるようになってしまった、とも言えますが……。


実際の変換は、画質(標準/高品質)と、解像度(等倍/200%)と設定を変えて行ってみました。 各動画はYouTubeにアップロードしましたので、実際にご確認ください。
アニメ素材の結果
続いて、アニメーション素材の結果も確認してみましょう。
こちらも人物の描写に注目してみました。輪郭のラインがよりくっきりとシャープに描かれています。 こちらは分かりやすく良好な結果になっているように思えます。


こちらもYouTubeに動画をアップロードしましたので、あわせてご確認ください。
DVDfab 動画加工AI 総評
良い点
DVDfab 動画加工AIの良いところは、このシンプルUIによる使いやすさでしょう。
ホーム画面は基本的に動画を読み込ませる以外の機能が表示されていません。……厳密には右上の▼ボタンから、アプリケーションの設定などが可能ですが。一見して次にやることが理解でき、でシンプルに作業を進められるようにデザインされたUIには好感が持てます。
アップスケーリング設定も、動画の種類に合わせたAIモデルを選べば、期待通りの動画に仕立ててくれます。 微妙な調整はAIに任せてしまえる……というのもこのソフトウェアの良い特徴と言えるでしょう。
また、対応したGPU(グラフィックボード)がPCに搭載されていなくとも、CPUが最新版であれば、どうにか作業をこなしてくれる、というのもうれしいところ。 ノートパソコンでも、短い動画であればある程度は利用する事ができそうです。
アップスケーリングの結果についてもある程度満足しています。 解像度の拡大機能を使って200%に拡大したHD動画を、50インチのモニターで表示させてみたところブロックノイズや、ジャギーなどが気にならなく見れました。
今後のアップデートでよりこの性能がアップしていくと考えると、大いに期待できるソフトだと思います。
難点
まず最初に挙げるべきは、マシンパワーを必要とするところでしょう。 動画加工AIを利用したアップスケーリングは、クラウドサービスではなく、ローカルPCで処理されるのでCPUとGPUの性能に処理速度が依存します。
必要スペックの最小限例は比較的緩く提示されていますが、CPUに関してはCore-i7やRyzen7必須と言えるでしょう。ノートパソコンでも十分に使うことはできますが、大きく、長い動画になればなるほど、高性能GPUを搭載したグラフィックカードを持つデスクトップPCでの利用が必要になるでしょう。
ひとつの動画を変換するのに何時間、何十時間と費やす根気と時間があれば別ですが……。
また、画質(ビットレート)の向上機能(=ビデオ画質の高品質設定)については、よりマシンパワーが必要になります。 筆者のPC(Intel Core i7-1065G7 @1.50 GHz, iGPU IRIS)で試したところ、標準品質での処理の倍以上時間を要しました。
アップスケーリングを実行して、放っておけば良いか……と一晩試してみたのですが途中でアップスケーリングが止まってしまう事象も数回発生しました。 マシン構成や元動画などさまざまな要因があるかとは想定されますが、フルHDの動画を4Kにアップスケーリング……なんて事をしたいのであれば、相応のマシンを用意する必要がありそうです。
AIモデルの選択を迷うかも
AIモデルの種類がやや分かりづらい気もします。 風景の実写動画と、アニメ(カトゥーン)動画の処理が異なるのは理解できるのですが『映画』『ホームビデオ』『Webビデオ』という選択肢はどれを選ぶべきか悩むケースが発生しそうです。
また、セルアニメ系のアニメ作品と、CGモデリングで作られたアニメ作品が同じ『アニメ』設定で良いのか……など。 このあたりは実際にトライ&エラーで検証していく必要があるのかもしれません。
AIプレビューの使い勝手について
実際にアップスケーリングする前にどのような結果になるのかプレビューする[AIプレビュー機能』。 動画の一部を2コマほど表示し、Before/Afterと見比べて表示する事ができます。 拡大表示して細部が把握できるので中々便利な機能なのですが……プレビュー実行自体に15分から20分ほどかかるケースもありました。
マシンパワーと動画ソースの状態に左右されるとはいえ、プレビューはもう少し時間が短縮されるとよいなと感じました。
マシンパワーが必要
本文を含め度々記載しているように、当ソフトウェアの利用には相応のマシンパワーが重要になります。 アップスケーリング・エンコードの開始時にも注意が表示されますが、PhotoShopやAftereffectsといったCPUやGPUを利用するソフトウェアは、同時利用しないようにしましょう。
4K動画へのアップスケーリングなどを本格的に行いたいというのであれば、動画編集プロダクションなどでエンコード時に使用するような高性能・安定重視のマシンで利用する必要があるでしょう。
Enlager AIとの比較
以前当サイト上で、DVDFabの追加アップスケーリング機能『Enlarger AI(エンラジャー・エーアイ)』をレビューしました。
機能としてはほぼ同様なものですので混乱しそうですので、あらためて『動画加工 AI』と『Enlarger AI』について比較しておきます。
ソフトウェア名 | 動画加工 AI | Enlager AI |
---|---|---|
パッケージ | 独立したアプリケーション | DVDfabのオプション機能という位置づけ |
AIモデル | 5種 | 1種(選択不可) |
出力フォーマット |
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UI | シンプルで理解しやすい | 設定事項は多く、操作も難解 |
アップスケーリング後の見た目 | アップスケーリングの恩恵を実感できる域になってきたと思える | まだ未成熟な印象(レビュー当時) |
その他 | 動画データを元にアップスケーリング(DVDから直接はできない) | DVDから直接アップスケーリングした動画を作成する事ができる |
DVDFabの追加機能としてリリースされた『Enlager AI』をより洗練したのが『動画加工 AI』という印象です。 出力設定などについてはEnlager AI上のものを踏襲していますが、AIモデルを動画のタイプに分けて選択できるようになっているなど、工夫がみてとれます。
前述したようにAIモデルの選択に迷うケースもありますが、とはいえ現時点では実写作品とアニメーション作品の違いをAIに判断させるよりも、ユーザーが選択する事で処理を効率化している……という事かもしれません。
まとめ
Enlager AIのレビューを行ったときは、正直その難解さとアップスケーリング結果のわかり難さに悩まされました。
ところが今回の『動画加工 AI』は独立したソフトウェアとして、使い勝手やUI、そして出力結果と、全てにおいて進化を遂げているように感じました。
統合ソフトウェアのオプションではなく、独立したアプリケーションとしてリリースされた、という点からもDVDfabのAIによるアップスケーリングへのチカラの入れ具合を感じます。
すでに動画はDVDやブルーレイといった物理メディアではなく、データでの運用が主流となっているため、DVDfabの本来の機能である『動画の複製やリッピング』という需要は衰退していくことは予想できます。 となると、新しい動画関連の技術としてAIをつかったアップスケーリング、そしてその先のソフトウェアまでを見据えているのではないでしょうか。
本文でも記載したとおり、現時点では長時間にわたる動画のアップスケーリングには相当な時間とマシンスペックを要します。 編集プロダクションなどであれば、相応のマシンを所持しているとは思いますが、そういった企業が動画を高画質に再編する……という需要がどれくらいあるのかはわかりません。
また、数時間にわたるような家族の記録……ホームビデオのアップスケーリングをするのに、プロユースのPCを用意する、というのもまだ現実的ではないでしょう。
以上を踏まえて、本ソフトが活躍するシーンを少し考えてみると、プレゼンテーションやマーケティング用の動画など、過去に制作し低画質のものしか存在しない……といった企業ユースで重宝するのではないかと。 製品やサービスの寿命が長ければ、こういった動画引き続き多くの人に見られる事になりますし、展示会など大きな画面で表示されることもあるでしょう。 短い動画であればアップスケーリングも速く終了しますし、画質向上の恩恵が大きそうです。
最後に、DVDfab製品の特徴として、レスポンスの速いサポート体制を挙げておきたいと思います。
本記事の執筆時もそうでしたが、使用していて不明点が出てきた場合、フィードバックとしてソフトウェアから送信すると、2日と経たずに返答が返ってきます。 DVDFabのwebサイト上の会員ページ内でのやり取りとなるので、場合によっては少々手間がかかりますが、この点は中々たすかりました。
アプリケーションのエラーなどの場合にはログファイルを同送すると、よりスムーズな返答を期待できますよ。