日本の漫画家と漫画業界を描いた漫画作品【前編】黎明期~を描いた おすすめ作品9選
日本の漫画家と漫画業界を描いた漫画作品【前編】黎明期~を描いた おすすめ作品9選 ※この画像はAIによって生成したものを加工しています

漫画家やマンガ業界を描いた漫画作品【前編】黎明期以降 おすすめ作品

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戦後から現在に至るまで、漫画は日本の文化の一端を担っていました。その間に漫画は多種多様な進化を遂げ、中には漫画そのものを語る作品なども出てきています。今回紹介する作品は、漫画業界そのものを描いた作品です。

世界に誇る漫画大国となった日本の漫画家達によって描かれる漫画の世界。そんなテーマの作品達がおもしろくない訳がありません。血のにじむような技術の研鑽と、頭脳労働の結晶とも言える作品を生み出すクリエイター達の、奥深くも魅力的な世界を堪能しましょう。

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漫画家や漫画業界を描いたおすすめ漫画作品【前編】

まんが道(著:藤子不二雄A)

学校の同級生である満賀道雄(藤子A)と才野茂(藤子F)は、お互い漫画好きということで意気投合。そして、新聞に自分たちの漫画が載ったことから本格的に漫画家を目指すように……。

藤子不二雄A『まんが道』1巻 Amazonより
2人で歩んだまんが道
画像『まんが道』1巻
Amazon
より

言わずと知れた巨匠、藤子不二雄の半生を描いた本作は、1977年に連載開始。当時の漫画少年たちに大きな衝撃と影響を与えました。

満賀と才野は憧れの手塚治虫と出会いを得て、トキワ荘へ。そこには、兄貴分となる寺田ヒロオをはじめ、多くの漫画家仲間が集まってきます。やがて一同は『まんが維新』をおこすべく奮闘していきます……。本作の序盤には、激画大介という人物が登場しますが、モデルになったのはさいとうたかをではないかという説があります。

なお藤子Aは本作の後に『愛…しりそめし頃に…』という作品も描がいていますが、タイトルとメインテーマこそ違えど『まんが道』の続きとなる作品です。

余談:こんな人もトキワ荘に関わっていた

『まんが道』に登場しませんが、現実のトキワ荘に関わっていた漫画家は他にもいるようです。例えば、少女漫画家の先駆者と呼ばれた水野英子も現実のトキワ荘には入居していました。ただ、石ノ森や赤塚の方と親交があったようですが、藤子両氏とはあまり縁がなかったようで、『まんが道』に登場しなかったのはそのためかもしれません。

またつげ義春もトキワ荘に縁が無さそうに見えますが、赤塚不二夫と顔見知りであったため、たまにトキワ荘に顔を出していたそうです(『劇画漂流』に描写あり)。

ブラックジャック創作秘話』(著:宮崎克/絵:吉本浩二)

漫画の神 手塚治虫にも70年代初頭にスランプと呼ばれる時期がありました。漫画は売れず、虫プロは倒産し、手塚治虫は時代遅れのように思われ、引退まで囁かれていたそうです。

宮崎克/絵:吉本浩二 ブラックジャック創作秘話 1巻 画像はAmazonより
漫画の神は業が深かった……
画像 ブラックジャック創作秘話 1巻
Amazon
より

そんな時に手を差し伸べたのが、秋田書店の名物編集長である壁村氏。彼の計らいによって、手塚治虫は少年チャンピオンで最新作『ブラック・ジャック』を連載開始しました。当初、編集者からは期待されていなかった同作ですが、次第に人気をあつめヒット作品となります。本作によって手塚治虫は見事に復活したのです。

手塚治虫と関りのあった多くの人から聞き出した天才の素顔。超人的な才能から繰り出される偉業の数々と、周囲をとてつもなく困らせた困った一面も。天才の業の深さを知ることができる珠玉の作品です。

『劇画漂流』(著:辰巳ヨシヒロ)

大阪の漫画少年 勝見ヒロシは、兄と共に漫画投稿に熱中していました。やがて、本格的に漫画家を目指すようになった勝見は、『日の丸文庫』という貸本漫画専門の出版社でデビューすることになります。

画像 劇画漂流
Amazonより
子供向けだけが漫画じゃない
画像 劇画漂流
Amazon
より

本作は漫画家・辰巳ヨシヒロの自伝的作品です。日の丸文庫は実在した出版社で、辰巳ヨシヒロや、さいとうたかを等、多くの漫画家を世に送り出しました。辰巳は、日の丸文庫の仲間たちとともに、それまでの漫画のようなコミカルタッチではなく、シリアスな漫画を創りだそうとします。辰巳はそれを劇画と名付けました。

劇画の生みの親が描いただけあって、陰影のある大人の雰囲気。日本漫画の一時代を築いた『劇画』とは何なのか。時代背景や当事者達の思いを知る事のできる作品です。

補足: 辰巳ヨシヒロの実兄は、あの漫画キャラがモデル?

辰巳ヨシヒロの兄は、桜井昌一という漫画家で、弟ともに日の丸文庫で漫画家として活動していましたが、後に出版社を設立することになります。

あまり有名とは言い難い人物ですが、実は、水木しげると親交が厚く、彼の作品に登場する、眼鏡をかけた出っ歯のキャラクターのモデルになった人物でもあるのです。

『藤子スタジオアシスタント日記 まいっちんぐマンガ道』(著:えびはら武司)

アニメ化されたヒット作『まいっちんぐマチコ先生』の作者である えびはら武司ですが、藤子・F・不二夫の弟子としても有名でした。

えびはら武司がアシスタントをつとめていた頃、まだ藤子F、藤子Aのふたりは一緒の事務所で働いていました。物静かでマイペースな藤本先生(不二雄F)と、遊び好きで社交的な我孫子先生(不二雄A)。まったく対照的な両先生と共にすごした日々が語られています。

藤子Fは、当時ヒット作にめぐまれず、『ドラえもん』でさえ、まだ現在ほどの人気は無かった頃……『ドラえもん』がどうやって復活したのか。ヒット作『オバケのQ太郎』が誕生した経緯なども語られています。

本書は単行本1冊の作品ですが、その後『名作秘話編』、『ドラえもん達との思い出編』も描かれています。

『激マン!』(著:永井豪)

主人公は漫画家・ながい激の視点でストーリーが進みます。激の描いた『魔王ダンテ』に興味を持ったテレビ局が、悪魔をヒーローにしたアニメ『デビルマン』の原作を依頼。それまでコメディしか描いてこなかった事もあり、ストーリー漫画を描くチャンスと快諾しました。

画像 激マン! デビルマンの章上巻
Amazonより
あの悪魔的名作はこうやって生まれた
画像 激マン! デビルマンの章上巻
Amazonより

永井豪が描く自叙伝的マンガ作品。本作に登場する『ながい激』はもちろん永井豪の事であり、自身の分身を中心にデビルマンやマジンガーZを作成した経緯が語られています。本作では特に『デビルマン』へかける思いはただならぬ物だったことが伺いしれます。

デビルマン編、マジンガーZ編、キューティーハニー編、Z&グレート編と各作品の出自や制作の経緯や裏話などを堪能できるシリーズ。永井豪作品のファンであれば必読の作品です。

『チェイサー』(著:コージィ城倉)

本作の主人公、海徳光市(かいとく こういち)は、戦記漫画を得意とする漫画家。そんな彼が、作風もジャンルも、そもそも友人でも知人でもない売れっ子漫画家手塚治虫に対して、ライバル心とも憧れともつかない想いで、同氏の真似をしようと奮闘します。

この人物は実在した・・・?
画像 チェイサー1巻
Amazonより

手塚治虫が、複数の漫画の原稿を公平に仕上げていると聞けば、自分も真似をしてみる。クラシック音楽を聞いていると聞けば、自分もステレオセットを購入してしまう。周囲には「手塚の事なんて興味が無い」と言い放つ彼ですが、妙に詳しい手塚治虫のエピソードに批判的なコメントをしたり、彼の単行本をしっかりと収集したり。本当は誰よりも巨匠を敬愛している海徳の涙ぐましい姿が描かれます。

手塚治虫をリスペクトしてやまない主人公の目を通して、巨匠の偉大さや異常さをコミカルに描いた作品です。

補足: 『注 この人物は実在した!』の意味は?

『チェイサー』に度々登場する「注 この人物は実在した!」という文章。一見すると、主人公海徳光市のことを意味していると思われそうですが、海徳光市という漫画家や類似したペンネームの漫画家は居ません。結局、最終回まで、誰をモチーフにしているのかは謎のままで、読者の間でも度々話題になっていました。梶原一騎作品の演出法を模倣したという説もありますが、決定的な結論は出ていないようです。

『ルーザーズ~日本初の週刊青年漫画誌の誕生』(著:吉本浩二)

本作の舞台は1960年後半……双葉社で『マンガストーリー』の編集長をしていた清水文人はある日、ゴミ箱に落ちていた同人誌の表紙に目を留めました。その斬新な画風に興味を抱いた清水は、表紙を描いた者と連絡を取りますが……その人こそは加藤一彦、後のモンキーパンチでした。やがて、彼を中心に新たなる漫画雑誌『アクション』が誕生することになります。

画像 ルーザーズ~日本初の週刊青年漫画誌の誕生 1巻
Amazonより
出版界の敗北者達が生み出した青年誌
画像 ルーザーズ~日本初の週刊青年漫画誌の誕生 1巻
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双葉社の雑誌は、元々大人向けの風刺漫画を載せていたこともあり『アクション』は漫画界初の大人向けの漫画雑誌となり、今日まで続いています。本作は『ブラックジャック創作秘話』でも作画を担当していた吉本浩二の作品。

泥臭い人間ドラマや、埃っぽさが漂う昭和の空気感が、何とも言えない味となっている作品です。

『コロコロ創刊伝説』(著:のむらしんぼ)

1977年当時の漫画は作品には対象年齢があり、また劇画の流行などにより子供向けの漫画は今より軽視されている時期がありました。そんな中、小学館の千葉和治は、平山隆とともに『ドラえもん』を中心とした新しい児童誌を立ち上げます。七転び八起きのコトワザにちなみ、そのタイトルは『コロコロコミック』としました。

画像 コロコロ創刊伝説 1巻 Amazonより
名前の由来は七転び八起き
画像 コロコロ創刊伝説 1巻 Amazonより

『つるピカハゲ丸くん』の作者である、のむらしんぼが描いた本作は、作者の自伝を交えつつ、コロコロコミックの制作経緯が語られている漫画です。

漫画はいつだって子どもの読み物。その信念のもとにコロコロコミックは制作され、ゲームセンター、中学受験、ミニ四駆などなど……当時の子どもたちが関心あるものはすべて取り入れていったのです。

何度打ちのめされても漫画家に! 『アオイホノオ』(著:島本和彦)

大作家芸術大学に通う焔燃(ほのお もゆる)は、漫画家かアニメーターの『どちらか』になろうと考えていましたが、同期のアニメーター志望の学生(庵野秀明)の才能に打ちのめされ、漫画家を目指すことにします。

画像 アオイホノオ 1巻
Amazonより
画像 アオイホノオ 1巻
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作者である島本和彦の自伝的作品で、大阪芸術大学に通っていた本人の経験談をもとに描かれています。大幅に脚色しつつも1980年代当時のアニメや漫画といったサブカル事情や、空気感が伝わってくる作品。作中では、ガイナックスの原型となった『DACON FILM』の創設に関連する話も登場します。

焔は夢に向かって突っ走っていく一方で、たびたび挫折し、つまずき、落ち込みます。その姿には、なぜか共感と羨ましさを覚えてしまいます。第1巻に収録された(因縁の?)庵野秀明との対談も必見です。テレビドラマ化された作品でもあり、作品名を知っているという人も多いのではないでしょうか。

まとめ 漫画の黎明期を描いた作品で紡がれる漫画業界

当記事で紹介した作品を読む事で、各作家や登場人物の印象だけでなく、当時から近代までの漫画業界をイメージする事ができます。

戦後になってから手塚治虫がストーリー漫画を描き始めると、多くの子供たちが漫画に夢中になりました。『まんが道』の藤子不二雄と『劇画漂流』の辰巳ヨシヒロは、目指す漫画の方向性が違っていましたが、手塚治虫を目標としている点は一緒でした。このあたりは漫画業界の黎明期と言えるかもしれません。

辰巳ヨシヒロも、日の丸文庫の仲間と共に東京へ向かうと、1959年に『劇画工房』を設立し、多くの出版社や漫画家たちに『劇画宣言』という挨拶状を配りました。当記事で紹介した『チェイサー』にもこの出来事は描写されています。1960年の後半から漫画業界は大きく変わり劇画作品中心の時代へと変革していきます。

一世を風靡した、手塚治虫の作品は時代遅れとさえ言われるようになっていきますが、そんな中1973年に『ブラックジャック』が起死回生の大ヒット。また、その一年前には永井豪が『デビルマン』を生み出しています。

また『漫画アクション』創刊に続いて青年誌も多数創刊されるようになりますが、反面児童向けの漫画雑誌は学年誌だけという時代もありました。そんな中『ドラえもん』を中心とした『コロコロコミック』の創刊。『ドラえもん』は藤子Fの代表作というだけでなく、児童誌の中心的な存在となりました。

1980年代となると黎明期の漫画やアニメに大きな影響を受けた若者が登場します。『アオイホノオ』では焔燃がアニメ化された『ドラえもん』を見て、その以前に日本テレビで放映された『ドラえもん』のアニメと比べているシーンがありますが、これは『まいっちんぐマンガ道』で語られていた初期の『ドラえもん』作品を指しています。

巨匠や気鋭の作家たちによって紡がれる『漫画業界』を描いた漫画作品によって、かの時代とその背景を楽しむ事もできるのです。なお、この『漫画家や漫画業界を描いたおすすめ漫画作品』というテーマで、【後編】も公開中です。

日本の漫画家と漫画業界を描いた漫画作品【前編】黎明期~を描いた おすすめ作品9選

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漫画考察者、ライター。80年生まれ、90年代育ち。尊敬している漫画家は水木しげる、荒木飛呂彦。好きな作家は江戸川乱歩。

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