映画『17歳は止まらない』(監督・脚本 北村美幸)レビュー 2023年8月4日公開作品
映画『17歳は止まらない』(監督・脚本 北村美幸)レビュー 2023年8月4日公開作品

映画『17歳は止まらない』(監督・脚本 北村美幸)レビュー 2023年8月4日公開作品

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2023年8月4日(金)新宿シネマカリテほかにて全国公開される映画 『17歳は止まらない』の事前試写をする機会をいただきました。そこで当記事では同作の内容紹介とレビューを行いたいと思います。 重要な内容のネタバレを避けた記事です。

映画『17歳は止まらない』レビュー 2023年8月4日公開作品

当記事で紹介する映画『17歳は止まらない』は東映ビデオが主催する新人発掘プロジェクト『TOEI VIDEO NEW CINEMA FACTORY』の記念すべき第1回にて、総数309本の企画と脚本の中から選出された作品。

※第1回では『神回』(監督・脚本 中村貴一朗)のほか、 『17歳は感じちゃう』(監督・脚本 北村美幸)も選出。

あらすじ

映画『17歳は止まらない』予告編
映画『17歳は止まらない』予告編

瑠璃(池田朱那)は農業高校で畜産を学ぶ二年生。母ひとり子ひとりの家庭で育った瑠璃は動物の世話で忙しい学校生活と家計を助けるためのアルバイトを両立させながら、モモ(片田陽依)、彩菜(白石優愛)、くるみ(大熊杏優)らクラスメイトと共に家畜たちから「命をいただく」という尊さを学んでいる。ある日、瑠璃はモモと近隣の高校の文化祭へ遊びに行き、同い年のマサル(青山凱)を紹介される。瑠璃に一目惚れしたマサルは後日猛アタックをかけるが、農業高校教師の森(中島歩)に想いを寄せている瑠璃はそっけない。森への情熱を募らせた瑠璃はある日、森の家へ押しかけて強引に思いを伝えようとするが・・・。

  • 映画『17歳は止まらない』
  • 【監督】北村美幸
  • 【脚本】北村美幸
  • 【出演】池田朱那、片田陽依、青山凱、中島歩
  • 2023年制作/日本映画/ 96分
  • 【製作】東映ビデオ 制作プロダクション:レオーネ 【配給】東映ビデオ
  • 映画『17歳は止まらない』 公式サイト

『17歳は止まらない』試写レビュー

農業学校というあまり映画やドラマで描かれない設定が興味深く、17歳の突っ走るような恋を描いた内容は素直に楽しめました。学校の超イケメン『森先生』に想いを寄せる主人公『瑠璃』の直球の行動力には、見ていて清々しさを感じるほど。「若いってうらやましいな」と思ったり、「そんなにグイグイ押し過ぎると引かれちゃうよ」と心配する気持ちの両方で、最後までヒヤヒヤしながら彼女を見守るように視聴しました。

農業学校で『生命の誕生』や『家畜を殺して食べる』という『生と死』についても描かれているのも印象的ですが、それらが瑠璃の行動や物語の展開に影響する直接的な関連性は少なく感じました。これらの部分をより分かりやすく描けていれば、もう少し深い内容になったのでは、とも思います。

後半に訪れる意外な展開もおもしろく、ストーリーに引き込まれるように最後まで退屈しませんでした。瑠璃の森先生への募る想いと、迷いの無さこそがまさに青春の輝き。対して、先生への想いで瑠璃が経験する辛さやほろ苦さが、青春の痛みを語っているのかもしれません。瑠璃の恋愛を通してその両方を描いた秀作と評価したいと思います。

17歳の恋

先述した『森先生』は校内で誰もが認めるイケメン。他の女子生徒も森先生に夢中で、瑠璃にとってのライバルもたくさんいます。先生を巡った想いが交錯するなか、ライバルに負けまいと押せ押せな行動力に出てしまうことに……。そんな猪突猛進さに思わず笑ってしまいました。シンプルに『すごいなあ』という気持ちと、何だか『うらやましい』という気持ちの入り混じった感覚でしょうか。

母子家庭で家計が苦しく、家に一人でいることが多い。そんな孤独を抱えている瑠璃は、森先生に猛アタックすることで自分の存在価値を探そうとしているようにも感じました。文化祭で知り合った他校の男子生徒マサルに好意を持たれるも、瑠璃は同世代の男子に興味を持つことができません。

瑠璃に子犬のようにつきまとうマサルのひたむきさが、彼女の孤独の隙間を埋めていく過程も描かれています。森先生とマサルとの関係を対比させることで、瑠璃の経験する17歳の恋心を絶妙に表現していました。

瑠璃を演じる『池田朱那』の魅力

瑠璃を演じる池田朱那という方について事前知識が無く本作を観ましたが、どこにでもいそうな女子高生を自然体に演じていている事に感心しました。友人と学校のゴシップや恋愛で盛り上がるシーンは、本当の女子高生の会話を切り取ったような瑞々しさに溢れています。

先生に猛アタックするピュアな行動力と、マサルを翻弄する小悪魔のような演技のバランスも絶妙で、今後の活躍が楽しみな女優の一人だと思います。

【TOEI VIDEO NEW CINEMA FACTORY】第1回製作作品『17歳は止まらない』メイキング特報
【TOEI VIDEO NEW CINEMA FACTORY】第1回製作作品『17歳は止まらない』メイキング特報

命をいただくということ

本作の主人公瑠璃は農業高校に通っています。「動物ならなんでも好き。哺乳類だろうが爬虫類だろうが」と言う瑠璃。しかし学校では子牛の誕生を目撃し、その世話をし、やがてその子牛の出荷を迎えることにもなります。名前を付けて育てた鶏をその手で絞める授業もあります。

授業を通して家畜がいずれ食肉になることを意識している瑠璃は、授業に対して「ちょっと残酷」と青年らしい感想を漏らしてしまったマサルに対して強い語気で怒るシーンも描かれます。

食事の前は必ずいただきますと感謝の気持ちを込めて言っているのも印象的でした。当たり前だと思っていることが、当たり前ではないという事実を思い知らされ、自分は食事の前に「いただきます」ときちんと言っているか? と思わず考えてしまいました。

おわりに

瑠璃の恋を”はつらつ”に描いた青春映画であると同時に、農業高校を舞台に命をいただくことの大切さを描いた映画でもありました。エネルギーに満ちた作品で、青春のまぶしさとほろ苦さを絶妙に表現した秀作映画でした。

ストーリー ★★★★(4)
瑠璃が大好きな先生に猛アタックしていく過程と、学校で学ぶ命をいただくということの意味を説いたストーリー。後半の意外な展開もおもしろい。
キャラクター ★★★☆(3.5)
先生への想いが募り猪突猛進していく瑠璃、瑠璃を落ち着かせようとする周りの友だち、イケメン先生、瑠璃にアタックするマサル、とキャラクターがしっかりとたっている。
エンタメ性 ★★★(3)
農業学校が舞台でエンタメ性は高くない。イケメン先生を巡って盛り上がる女生徒達の姿には思わず笑みがこぼれてしまった。
感動 ★★★(3)
瑠璃の恋愛を通して青春の輝きとほろ苦さを描いている。同世代なら共感し、大人であれば懐かしさとうらやましさを感じるだろう。多くの人が感じたことのある思春期の感情を共有できる。
総合評価 ★★★(3)
瑠璃の恋愛と農業高校の教えがもう少し分かりやすくリンクした内容だとさらによかった。ユニークな設定と青春を真っ向から捉えたストーリーには魅せられた。
映画『17歳は止まらない』 レビュー
(最大星5つ/0.5刻み/5段階評価)

関連リンク

【TOEI VIDEO NEW CINEMA FACTORY】とは

【TOEI VIDEO NEW CINEMAFACTORY】は『百円の恋』、『愛の渦』、『アンダードッグ』など、公開規模の大小にかかわらずウェルメイドな作品で数々の映画賞を獲得してきた東映ビデオ(株)が立ち上げた、新たな才能を発掘する新プロジェクト。

東映ビデオが培ってきた制作能力(人脈)という財産を生かして、新進クリエイターとともに良質な“劇場映画”を作り、それを未来へと継続していくプロジェクト。企画コンペティションから演技ワークショップ、制作、プロモーション、劇場公開までの全プロセスをクリエイターとともに推進していきます。

第1 回【TOEI VIDEO NEW CINEMA FACTORY】は、「青春映画」をテーマに、約3か月の応募期間の中で、309本の企画と脚本を応募いただきました。その中から中村貴一朗監督の『神回』、北村美幸監督の『17 歳は止まらない』の2作品が第1回製作作品に決定いたしました。

映画『17歳は止まらない』(監督・脚本 北村美幸)レビュー 2023年8月4日公開作品

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オーストラリア在住の在宅ライター。2児の子育て中で料理が得意、フリータイムは大好きな海外ドラマ鑑賞に費やしています。 海外ドラマの記事を中心に執筆。ブログで海外ドラマの情報を発信中です。 ご希望リンク先

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