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映画館 ミニシアターでの『宣伝』担当アルバイト 体験記

映画館のアルバイト ミニシアターでの『宣伝』担当 体験記

執筆: ヤマダマイ アイコン ヤマダマイ

皆様は『映画館の仕事』と聞いて何をイメージするでしょうか? チケットをもぎり、ポップコーンを売る……といった内容の他にも、映画館での仕事内容は種類も量も非常に多いのです。 筆者は過去に、ミニシアター(※)でバイトをしていた時期があり、仕事は過酷だがこれまで経験した中で断トツの面白さでした。

ミニシアター: 系列の映画館を持たない、インディー系の作品も上映する独立性の高い映画館。単館系とよばれる映画館も含む。 対して、 昨今都市部にあるような、ひとつの映画施設に多数のスクリーンがある映画館はシネマコンプレックス(=シネコン) と呼ばれる。

そこで今回は、多分ググってもあまり出てこない映画館の仕事(アルバイト)について、ミニシアターの『宣伝業務』を担当していた筆者の経験談を紹介したいと思います。(3分の2くらい失敗談なので反面教師として読んでもらえると救われます……。)

映画館で働くことになったきっかけ

大学生の頃、某レンタルビデオ店(フランチャイズ系)でバイトをしていた筆者は、就活をサボり卒業後もそのままバイトを続けるつもりでした。 ところが同社で、突然『レンタカー事業』という縁もゆかりもない業務が始まり、それを機に退職。

続いて『映画Tシャツが好き』という意味不明な理由(?)でアパレルショップに勤務(結局取り扱っているブランドは一度も映画とコラボすることはなかったのですが) 。 ところがこのアパレルでも、接客のロールプレイングコンテストというものに半ば強引に申し込まれたことを機に逃げるように退職。

やさぐれた筆者は「いっそ映画館で働けばすべて解決するのでは?(何が?)」と再び安直な理由から、客としても足繁く通っていた、スクリーンが3つほどのミニシアターにバイトの面接を申し込む……24歳の頃でした。

映画館での就業開始!

当時の面接での質問で今でもよく覚えているのが、「時給は最低賃金だけど大丈夫?」という質問。 反して「家賃3万の部屋に住んでいるので大丈夫です」と回答し、余計に心配をさせてしまったこと。 (筆者の職場に限らず、映画館スタッフの時給は相場より安いように思えます。)

結果としては、面接に合格、無事映画館のアルバイトに従事することができました。

映画館(ミニシアター)での主要な4つの業務

面接後、主に映画館には4種類の業務があることを教えられました。

映画館(ミニシアター)での主要な4つの業務

1つ目は『売店』の業務。 ポップコーンをはじめとする飲食物の販売や在庫管理、さらには公開作品にちなんだコラボドリンクなどを考案したりも。映画館の収益の多くを占める、重要な部門です。

2つ目は『物販』。 飲食物とは別に、パンフレットやサントラCD、原作本といったグッズを取り扱う業務。 私が好きな映画Tシャツの取り扱いもこの部門。

3つ目は『宣材』。 公開作品のチラシやポスターを発注するほか、館内の告知全般を担当します。

4つ目は『映写』。 公開作品のデータ(DCP)を映写機に取り込み映像をチェック(試写)したり、予告編を組んだりと責任重大。 ある程度勤続年数が経過しないと任されない業務で、それだけに映画と最も関われる仕事ともいえます。

筆者は前職で映画の紹介文を書いたり、アパレル勤務時もブログの更新をしたりしていたので、『宣材』担当を希望しました……が、ここに思わぬ落とし穴があったのです。

前任者が『デザインの猛者』過ぎて心が折れる 

私の想定していた『宣材』業務は『文章での告知』でした。 しかしミニシアター側の求める実際の『宣材』業務は『館内の装飾による告知』でした。 ポスターを掲示するにしても、見栄えなどいろいろな工夫を施す必要がありました。 そして館内装飾で使う文章は、雑誌などのメディアに掲載されたものを利用する事が多く、宣材担当者は文章があまり書けなくても勤まるのです。結果としてこの担当者に求められるのはデザイン力でした。

そして私に仕事を引き継ぎ・教えてくれた前任者は……なんと、ウェス・アンダーソン監督の某作品による『館内装飾コンテスト』で、グランプリを獲得するようなデザインの猛者。

対して筆者は、手書きの文字ですら「象形文字みたいだね」と褒め揶揄され、もちろんデザイン・イラストのセンスは皆無。人生で一番死にたくなった瞬間のひとつに『自画像を描き上げたとき』というトラウマすらもつ始末。

……そんなことを打ち明ける間もなく、グランプリ受賞者の名に恥じない力量で館内装飾のお手本を披露する前任者さんは、「そんなところにも?」と言いたくなるようなデッドスペースまで、見事に装飾の場に変えてしまいます。 「わぁー! すごいですね!」などと努めて明るい声を出しつつも、内心『え、ここまでやらなければならないの……』と動揺し膝をガクガクと震わせていたのを覚えています。

館内の装飾による告知

そんな前任者さんが退職した後、私が作った館内装飾は社員さんがドンドン手直しをしていったは言うまでもありません。 スラスラと直されていく様子をみて、まるで他人事のように、「わぁ~!すごいっすね!」と、口にする有様でした。

ところがさらに2カ月後、さらなる試練が襲い掛かるのです。

アイドルに『宣材の極意』をマンツーマン指導する

何様だよ! と言いたくなる見出しですが……勤務開始から2カ月ほど経ったころ、ご当地男性アイドルグループのひとりが映画館の“1日支配人”になるという番組がケーブルテレビで放送されることに。

各担当がアイドルに付きっきりで仕事を教えていくという内容で、当時まだ試用期間中の筆者が『宣材』業務を教える担当となってしまいました。 館内で順番に各業務を教わるアイドルさん……という撮影が進み、ついに自分の『宣材』番。 なぜか舞台挨拶のゲストが使用する控え室に連れていかれ、密室かつ自分以外が全員撮影のスタッフさん……という超アウェイな中で、業務を教えることになったのです。

あらためて、宣材のメイン業務となる『館内装飾』の仕事は……

  • 告知する作品を決める
  • 配給会社から『パブリシティ(※)』が送られているか確認する
    ※パブリシティとは、雑誌や新聞といった各メディアで作品を紹介している記事を、まとめてデータ化したもの。劇場スタッフは、このパブリシティを使って作品を告知する。
  • お客さんが思わず目を留めて見てくれる装飾をする

といった内容。 これらをデザイン力の皆無な筆者がアイドルに伝授する……おそろしい状況!

誰にも助けてもらえない密室で完全に詰んだかとおもっていたのですが、不思議なものでカメラを向けられた途端に『前任のデザインの猛者』が教えてくれたことをスラスラと暗唱し出す筆者。 後にも先にも、あんなに長い話(※)ができた事はありません。 本番に強いタイプだったのでしょうか。

※筆者がこれまで暗唱できたことといえば『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(95)の少佐がボートの上で語るセリフくらい。

『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』特別価格Blu-ray 発売告知PV
※ 0:43あたりからそのセリフ

アイドルさんも非常に気さくな方で、終始穏やかなムードで館内装飾の制作作業は進みまみましたが……節々でアドバイスをするのがセンスのない人間(筆者)な為、完成した装飾は普段の業務で筆者が生み出す“負の産物”そのもの。 例えるなら小学生が「総合」の時間にB紙にいろいろ書き込んだクオリティ。もちろん悪いのは筆者であって、アイドルさんは完全に被害者です。 この場をかりてあらためて、謝罪したいです。 ごめんなさい。

ちなみに、『アイドルと密室で一緒にお仕事なんて羨ましい!』と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、筆者は男、アイドルさんも男性という事もあってそんなにウキウキすることもなく……撮影が終わると気が抜けて「普段どんな映画観てるんですかあ?」などと、馴れ馴れしくに話しかけてすらいました。 今、思い出すと……ごめんなさい。

後日、番組を収録したサンプルデータを頂きましたが、5年経った現在でもその内容は怖くて確認できていません。

ミニシアターのブログ更新を任される

そんなこんなで、当時の筆者の脳裏に早くも『退職』という2文字が浮かび上がってくる低迷期のさ中、ありがたい転機が訪れました。

ミニシアターでは、自社のブログを運営しているところが結構あります。 勤め先のミニシアターも例にもれずブログが存在したのですが、その更新はほぼ停止していました。 当時はTwitterなどのSNS運用にも取り組んでいなかったため、主な告知の発信源はこのブログだけ。そこで社員さんから「毎日、ブログを更新してほしい」と頼まれたのです。

ミニシアターのブログ更新を任される

任務①ブログを毎日更新せよ 

実は前職でもブログを書いていという事もあって、「そんなん余裕だわ」と心の中でドヤり、さっそくブログ更新に取り掛かりましたが……わずか3日でネタが尽きてしまいます。

それもそのはず、ミニシアターでは、毎週新しく公開される作品は多くても3作か4作。新作の紹介記事だけ書いても、1週間と経たずにネタ切れになるのは必至。 悩んだ筆者はブログをTwitterのように扱うことにしました。

映画の記事だけではなく、売店の新ドリンク、物販の在庫状況、年末年始の営業時間のお知らせetc…. 当時はSEO(検索エンジン最適化)のSの字も知らなかったので、記事の構成もやりたい放題でしたが、与えられた『毎日更新』というノルマだけは守っていました。 ネタがなくてやけくそになったときは、無料配布されるステッカーを掘り下げてみたり、配給から使用許可を得た作品の場面写真にセリフを当てて「みんな、映画館に来てくれよな!」みたいな結びを迎える4コマ記事を投下したりもした。 画像を編集していないとはいえ、当時よく怒られなかったなと思います。

がんばって毎日記事を更新していたものの、一番“いいね!”が多かった記事が『年末年始営業のお知らせ』だったりと ……これもまた現実である。

任務②記事をバズらせよ

前述したように当時勤めていた映画館ではTwitterをはじめとするSNSアカウントを持っていませんでした。 そんな中でより多くの人達……ひいては普段映画館に来ない人達にも読んでもらうことができるのか考えていた折に、お客さんとして映画館に何度も来ているほどの映画好きという、女性アイドルがトークイベントを行うという企画が持ち上がりました。

そこで筆者はトークイベントをレポート風の記事にする事を考え、社員さんのアイデアもあり『面白い記事を書いて、アイドルさんにもブログを拡散してもらおう!』と、話し合いながら記事を書くことになりました。 (本当は打ち合わせの段階で、拡散のお願いをしておけばいい気もするけど)

結果としてこの記事は、女性アイドルさんに拡散して頂き、ミッションコンプリート! 成功体験を得て、やりがいを肌でビンビン感じ有頂天になる筆者でした。

町山智浩氏の名前を間違えて投稿する

これは、橋本環奈さんが自分の名前を間違えてツイートされていることを指摘し、トレンド入りする……という事がありました。 橋本さんの寛容さで、うっかりエピソードとして微笑ましく受け入れられているようですが、間違えてツイートした当事者は、もしかしたら上司に想像を絶する剣幕で怒られているのではないでしょうか。南無。

バズってしまったために修正できなくなってしまったツイートは、現在もそのままである。

かくいう筆者もまったく同じミスをして、それはそれはこっぴどく叱られ、以来トラウマとなる程。 それは映画評論界の首領 町山智浩氏のトークイベント告知記事に際して、その名前の漢字を間違えて投稿してしまったのです。当時、ブログ記事に対する校正校閲の概念がなく、投稿する前に誰かが文章を確認することは一度もなかったのですが、そのツケが、映画館内で最大級のイベントで回ってきてしまいました。

イベント前にミスが発覚したことが不幸中の幸いでしたが、この件以降、校正校閲が徹底されたのは言うまでもありません。楽しく記事を書いていた筆者の文章も、カッチコチの定型文のようになっていき……25歳の冬、こうして筆者の“ブログ最盛期”は幕を下ろします。

以後ブログでの告知業務は他のスタッフに引き継ぎ、映写業務(これはこれで楽しい)に注力していきました。

それでも、映画館の仕事はやっぱり面白い 

ほとんど『しくじり〇生』みたいな内容になってしまいましたが、これだけは声を大にして言いたい。 映画館の仕事はハードだが面白い

最初こそ苦い汁をずるずる啜っていましたが、ブログの更新はとても楽しかったし、ヤバいミスで得た経験は今のライター業でも生かされている(と思いたい…)。 映写業務もミスは絶対許されない神経を使う内容だけど、公開前の作品をテスト試写として観ることができて、その特権は絶大です。

映写業務も映画館バイトのひとつ

反面、仕事量に対して時給が圧倒的に安いのも事実。 でも、「給料が安すぎるんで辞めます」という人は筆者が働いていた頃には居なかったので、やはり仕事が面白いと感じている人が多かったのだと思います。

ちなみに、『映画館で働くには映画に詳しくないといけない』と思う人もいるかもしれませんが、そんなことは全くありません。 筆者は2年半程勤務したのですが「この映画の画角ってシネスコ? ヴィスタ?」なんていうようなマニアックな問い合わせは、片手で数えるほどしかありませんでした。

ポップや上映スケジュールが載ったチラシを作るスタッフさんは、全くというほど映画を観ない人でしたが、当時宣材業務でひーひー喘いでいた筆者にとって、Illustratorが使える……というスキルを持つその人は常に後光が射していました。

世間一般では供給過多とされるスキルでも、映画館の業務に活かせる事もあるので、少しでも映画が好きで、なにかちょっとしたスキルを持っているなら、臆せずに働いてみて損はないと思います。 様々なところで映画の面白さが取り上げられている昨今ですが、映画に関連する仕事に興味を持ってくれる人も増えたら嬉しいなあと思います。

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