映画『ホウセンカ』試写レビュー 『オッドタクシー』タッグが贈る、人生と愛の物語 10月10日放映作品
映画『ホウセンカ』試写レビュー 『オッドタクシー』タッグが贈る、人生と愛の物語 10月10日放映作品

映画『ホウセンカ』試写レビュー 『オッドタクシー』タッグが贈る、人生と愛の物語 10月10日放映作品

評価:3.5 

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2025年10月10日に公開予定の劇場用アニメ『ホウセンカ』は、予測不能なストーリーで話題をよんだアニメ『オッドタクシー』を手掛けた木下麦(監督・キャラクターデザイン)✕此元和津也(原作・脚本)に加え、『映画大好きポンポさん』『夏へのトンネル、さよならの出口』を手掛けた制作スタジオCLAPによる、オリジナルアニメ映画です。

その公開に先駆け、オンライン試写の機会を頂きましたので、同作のあらすじと感想を紹介します! 広げた風呂敷が綺麗に畳まれた映画を見たのは久しぶりで、シンプルに言えば、とても面白かったです! なお、ストーリーに関して映画体験を損なわない程度ではありますが、若干のネタバレがありますのでご注意ください。

映画『ホウセンカ』試写レビュー “大逆転”に人生を賭けた、ある男の愛の物語

オリジナルアニメ映画『ホウセンカ』本予告
オリジナルアニメ映画『ホウセンカ』本予告

『ホウセンカ』あらすじ(ネタバレなし)

無期懲役囚の老人・阿久津が独房で孤独な死を迎えようとしていたとき、声を掛けたのは、人の言葉を操るホウセンカだった。“会話”の中で、阿久津は自身の過去を振り返り始める。1987年、夏。海沿いの街。しがないヤクザの阿久津は、兄貴分として慕う堤の世話で、6歳年下の那奈と、庭にホウセンカが咲く素朴なアパートで暮らし始めた。生まれたばかりの那奈の息子・健介も一緒だ。
「退路を断ったもんだけに大逆転のチャンスが残されてんだよ」
不動産バブルに乗じたシノギに成功し羽振りがよくなった阿久津は、享楽的に過ごし家を顧みなくなる。そんなある日、事態は一変。健介の身体に“心臓の病”が見つかったのだ。命を救うには、海外での高度な手術が必要だった。その費用は、渡航費、闇ブローカーへの仲介手数料を含めておよそ2億円。そこで堤の兄貴は事務所の金を奪おうと阿久津に提案する。

『ホウセンカ』の感想

映画『ホウセンカ』 ティザービジュアル
映画『ホウセンカ』 ティザービジュアル
©此元和津也/ホウセンカ製作委員会

本作はアニメ『オッドタクシー』のクリエイター(木下麦✕此元和津也)が再びタッグを組んだ事が大きくアピールされていますが、登場人物は動物たち……ではありませんし、オムニバス形式でもなく、内容自体は全く別の物語となっています。当然、オッドタクシーを観ていなくても楽しめる内容です。

ちなみに筆者は『オッドタクシー』を視聴したことがありません………。話題なのは知っていましたが、見るタイミングを逃して今に至ります。

端的に言うと、あるヤクザ(人間)の人生を描くわりと地味な物語です。しかし、その“地道さ”がじわじわと後半に効いてきて、意外な展開に。予想外のストーリーにハラハラしてしまい、いつのまにか心を掴まれていました。

過去と現代が交差するストーリー

以下はストーリーに関する解説が含まれます。重大なネタバレは含んでおりませんが、ご注意ください。

ストーリーは主人公『阿久津(あくつ)』の視点を中心に、過去と現代が入り交じる形で描かれます。現代で刑務所の中にいる阿久津が過去を回想。その過去の答え合わせを、現代パートで行う、という仕組みですが見ていて混乱することはありませんでした。

正直、序盤は見ていてかなり退屈に感じていました。阿久津は子供が喋れるようになったことを那奈(ナナ)に言われるまで気付かなかったり、そのくせ家族愛はあると言ってみたり。阿久津という人物を理解できず、そんな彼の独白で進んでいく物語に少々辟易し「私には合わない映画かな」なんて思ってしまいました。

那奈もキャラクターとしての奥行きを感じず……本作の主要人物ふたりに感情移入できなかった私は『これは合わない映画だな』と。

映画『ホウセンカ』場面カット 手に紙を持った若かりし頃の阿久津と、彼の前を歩く那奈
過去編での那奈(右)と阿久津(左)
©此元和津也/ホウセンカ製作委員会

しかし、中盤にさしかかったあたりから展開する物語に見事に感想は大逆転。退屈に感じていた序盤にも伏線があり、いくつかの謎が隠されていたことに気づかされます。

思わず、「そうくるか。」「言われてみれば確かに!」と口にだしてしまうほど、驚きの展開が連続します。

ヤクザ仲間に足元をすくわれないように。そして那奈とその子共を守るために綿密に計算された行動をとる阿久津。序盤は『情に熱いだけの愚直な男』という印象だったのですが、“覚悟”をもって立ち回るその姿にその評価は一転。彼は『やるときにはやる男』でした。

映画『ホウセンカ』場面カット 青空の下、阿久津の背中をやや下から写した映像 風になびく上着
評価が一転した、阿久津の人物像
©此元和津也/ホウセンカ製作委員会

次第に緊張感を増していく展開と人間ドラマが見事に融合した後半には強く感情を揺さぶられ、「おもしろい!」と確信しながらその内容に引き込まれていきました。

なぜ阿久津は刑務所にいるのか。その代償として手に入れたモノはどうなったのか。子供は。結局、阿久津の思惑は成功したのか……。しっかりとそれらの答えが描かれ、結末へと収束していくストーリーは必見です。

大味・王道(?)なヤクザの描写も

ヤクザである阿久津の稼業やその生き方については、なんだかありがちな描かれ方だな、というのが正直な感想。特に阿久津とその兄貴分である堤の関係は、「それはそうなるよな、ヤクザだもの」と予想通りの展開に。

ホウセンカ場面カット 車の中で深刻そうな顔をする阿久津と堤
阿久津(左)と堤(右)
©此元和津也/ホウセンカ製作委員会

とはいえ、さらにそこから意外性のある後半へ転換していくのですが。

特に心に残ったセリフ

生まれたてと死にかけの人間だけが声を聞くことができる」と語る、ホウセンカ。このセリフも後から活きてくるのですが、そんな印象的な彼(?)の声を担当したのはピエール瀧

ホウセンカ場面カット 畳の上に置かれた空き缶のプランターに咲くホウセンカ
言葉を話すホウセンカ(CV ピエール瀧)
©此元和津也/ホウセンカ製作委員会

「大逆転はあったか?」

ホウセンカは口が悪く皮肉屋ですが、その声はディズニー映画『アナと雪の女王』でオラフを演じていたときの瀧さんを思い出し、個人的には嬉しくなりました。阿久津に対して「きもい」「馬鹿」と、視聴者のツッコミを代弁するかのような容赦のないセリフも、良い感じにラフで嫌味を感じません。

そんな、視聴者の声を代弁するだけのキャラクター(=舞台上の小物)かと思っていたホウセンカにも、後半にかけて予想外の役割がありました。このあたりはぜひ、劇場でご視聴の上お楽しみください。

まとめと総合評価

人間ドラマを中心としたストーリーラインは地味で、わりと大味なエンタメ映画であることも否めません。しかし後半になるにしたがって、広げた風呂敷が綺麗に畳まれるカタルシスを楽しめる=評価が裏返る可能性を秘めている作品だと感じました。

ひとりの不器用な男の人生と愛の物語に不思議な要素をエッセンスとして加えた映画、『ホウセンカ』。劇場公開日は2025年10月10日。前売り券は絶賛発売中です。

『ホウセンカ』ムビチケと特典
『ホウセンカ』ムビチケと特典
©此元和津也/ホウセンカ製作委員会
ストーリー ★★★★(4.0)
意外な展開が後半に押し寄せる! ぜひ最後まで見て欲しい作品
映像 ★★☆(2.5)
とりたてて特筆すべき点は無いように感じた
音楽 ★★★(3.0)
花火が打ちあがるシーンの音楽はとても良い
キャラクター ★★★(3.0)
序盤と後半で、印象が逆転。
総合評価 ★★★☆(3.5)
映像、音楽、キャラクターはほどほど。ストーリーは圧倒的に素晴らしかった。
映画『ホウセンカ』のレビュー (最大星5つ/0.5刻み/9段階評価)
ホウセンカ

ホウセンカ 作品情報

  • 原題: The Last Blossom
  • 公開日: 2025年10月10日(金)
  • 原作者: 此元和津也
  • 監督: 木下麦
  • プロデューサー: 松尾亮一郎, 伊藤絹恵
  • 脚本: 此元和津也
  • 制作会社: CLAP
  • 作品概要: 
    予測不能なストーリーで話題を呼んだオリジナルTVアニメ『オッドタクシー』を手掛けたクリエイタータッグ・木下麦(監督・キャラクターデザイン)×此元和津也(原作・脚本)と、国内外の映画祭で注目を集めた『映画大好きポンポさん』『夏へのトンネル、さよならの出口』を手掛けた制作スタジオ・CLAPによるオリジナルアニメ映画。実⼒派俳優陣に加え、声優界・お笑い界からも多彩なキャストが集結︕男が⼈⽣を懸けた“⼤逆転”と、その先に浮かび上がる物語とは︖
    「お前たちが来た⽇のこと、よく覚えてるぜ。」

関連リンク

オッドタクシー

オッドタクシー 作品情報

  • 原題: ODD TAXI
  • 公開日: 2021年4月6日(火)
  • 話数: 全13話
  • 原作者: P.I.C.S.
  • 監督: 木下麦
  • プロデューサー: 伊藤裕史, 鍋岩晶子, 数野高輔, 釜秀樹, 黒須信彦, 山田貢, 飯塚彩, 竹村崇史
  • 脚本: 此元和津也
  • 制作会社: P.I.C.S., OLM Team Yoshioka
  • 作品概要: 
    見慣れた街のはずなのに、この街は少しなにかが違う気がする。平凡な毎日を送るタクシー運転手・小戸川。身寄りはなく、他人とあまり関わらない、少し偏屈で無口な変わり者。趣味は寝る前に聞く落語と仕事中に聞くラジオ。一応、友人と呼べるのはかかりつけでもある医者の剛力と、高校からの同級生、柿花ぐらい。彼が運ぶのは、どこかクセのある客ばかり。バズりたくてしょうがない大学生・樺沢、何かを隠す看護師・白川、いまいち売れない芸人コンビ・ホモサピエンス、街のゴロツキ・ドブ、売出し中のアイドル・ミステリーキッス…何でも無いはずの人々の会話は、やがて失踪した1人の少女へと繋がっていく。

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映画『ホウセンカ』試写レビュー 『オッドタクシー』タッグが贈る、人生と愛の物語 10月10日放映作品

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沖縄生まれ、東京住みの新卒フリーライター。映画、ゲーム、アプリといったエンタメ系記事からキャッシュレスなどのお金系記事、美容系の記事までなんでも執筆しています。
ダースベイダーマニアです。

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