『悪魔』が出てくる・テーマにした漫画作品13選 敵か、味方か、それとも……。 おすすめ作品をピックアップ

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神秘学(オカルト)や黒魔術等をテーマにした作品には、時として『悪魔(あくま)』という存在が登場します。忌まわしい存在でありながら、多くの作品に登場しさまざまな役割をになう悪魔には、背徳的な魅力があるのかもしれません。

そこでこの記事では、作中で『悪魔』を重要な存在として取り扱う漫画作品というテーマに絞って選定してみました。ある作品では敵対者として、またある作品では主人公の味方や僕(しもべ)として活躍する彼らの姿をお楽しみください。

敵か?味方か? 『悪魔』をテーマにした漫画作品13選

悪魔よりヤバい、ヒーロー(?)
『チェンソーマン』

2019年に週刊少年ジャンプで連載が開始し、2022年にはアニメ化され、当記事執筆時点でもっとも話題となる事の多い悪魔作品といえるであろう本作。作者は藤本タツキ。

第1部はハードでグロテスクな描写と、悲惨な状況でも前向きで欲望に忠実な主人公デンジを中心にした物語。主人公意外の破天荒で魅力的なキャラクターも人気を得る要因でしょう。

冒頭、デンジは彼が『ポチタ』と名付けた悪魔とともにデビルハンターをしていましたが……雇い主の裏切りで悪魔に殺されてしまいます。結果、ポチタの力でチェンソーマンとして復活し、謎の女性マキマの勧誘で、悪魔を狩る組織に所属することになります。

デンジやポチタ以外にも、まともでない(狂った)キャラクターが多数登場し、ストーリーは混乱を極めます。一方、理性的に見えるマキマの言動や行動も謎が多く、彼女が指示を出すデンジや悪魔達より気味が悪くすら感じます。はたしてその正体は……。

AKUMAを破壊する黒きエクソシストたち
『D.Gray-man(ディ・グレイマン)』

架空の19世紀末のヨーロッパを舞台に、AKUMA(悪魔)と名付けられた兵器を破壊するエクソシストの活躍を描く物語。こちらも週刊少年ジャンプ誌上で2004年から連載された作品です。

悪魔を、魔法のような力で生み出された兵器にするというプロットや細やかな設定、そして、ゴシックホラーでダークな世界観が魅力的な作品。主人公のアレン・ウォーカーは、エクソシストになるべく黒の教団に入団し、AKUMAを作り出している『千年伯爵』という人物と対峙することになります。

死んだ人間の魂を使った兵器であるAKUMAは、それぞれに悲劇的なストーリーが関わってきますが、その一方で、ジャンプらしく個性的なキャラクターによるドタバタ劇的な演出で、ほどよくバランスをとっています。

悪魔と戦う双子の兄弟
『青の祓魔師(エクソシスト)』

修道院で育った、奥村燐(おくむら りん)と雪男(ゆきお)の双子の兄弟が主人公。燐はある日、自身がサタンの息子であることを知ります。

サタン、悪魔達と戦うために、祓魔師(エクソシスト)になる事を決意した燐は、祓魔師養成機関『祓魔塾』に入学。ところがそこには、既に祓魔師となり、しかも講師をしている弟 雪男の姿が。

エクソシストや悪魔、サタンといった設定をベースにしつつも、倶利伽羅(くりから)や迦楼羅(かるら)といった仏教の概念も登場します。全体的に東洋的な雰囲気で仕上げられたユニークな世界観が特徴的と言えるでしょう。

物語の主軸となっているのは、燐と雪男。正反対の人間性をもつ双子のドラマでしょうか。この二人の絆と確執がどうなっていくのかが、見所のひとつです。

補足1:エクソシストとは?

ここで少し余談となりますが『エクソシスト』という存在について触れておきましょう。

1973年のアメリカ映画(The Exorcist)で一躍有名となったこの単語は、元々カトリック教に実在する存在で、悪魔祓いを行う事やそれを執行する人を指します。日本語では紹介した漫画のように『祓魔師(ふつまし)』とも訳され、祈祷師や拝み屋などに近い存在のようです。

なお、キリスト教では『まじない=呪い』を否定していますが、聖書にはキリストが『レギオン』という悪霊を払うという場面も記されています。

エロイムエッサイム 我は求め訴えたり……悪魔を使役する作品
『悪魔くん』

水木しげるの名作のひとつ。アニメ化もしている程の有名作ですが、実はこの作品には三パターン存在しています。

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悪魔くん 水木しげる
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悪魔くん 水木しげる

ひとつは、松下一郎(まつしたいちろう)を主人公とした貸本漫画版で、後に『悪魔くん 千年王国』としてリメイクされました。

ふたつめは、山田真吾(やまだしんご)を主人公としたもので、この作品で初めてメフィストが登場します。

そしてみっつめが、埋れ木真吾(うもれぎしんご)を主人公とした作品。こちらがアニメ化されて人気を博しました。

いずれも共通しているのは、主人公が悪魔くんというあだ名で呼ばれ、すぐれた頭脳を持ち、魔術によって悪魔達を召喚する、という点。最初の『悪魔くん』は、打ち切りになってしまいますが、ラストで悪魔くんは蘇ると予言し、事実それは三回実現する事になりました。

そして2023年、NETFLIXで再アニメ化されます。

若返った天才科学者が、悪魔の力で無双する
『ネオ・ファウスト』

老いた天才科学者である一ノ関(いちのせき)は、悪魔のメフィストと契約して若返り、10年ほどの昔の時代にタイムスリップ。

坂根という実業家の養子となり、坂根第一と名前を改めて、優秀な頭脳とメフィストの力で、第二の人生をやり直すことになります。

作者である手塚治虫の逝去により絶筆(未完)となってしまった作品ですが、ドイツの伝説『ファウスト』をモチーフにしつつ、メフィストを美女とし、現代の日本を舞台にした作品です。

物語の構成は昨今の『異世界転生もの』にも通ずる所があるかもしれませんが、手塚治虫はタイムスリップした主人公の記憶を失くし、老人である本人と邂逅させるというタイムパラドックスの要素も入れてひねりをきかせています。

悪魔の世界も楽じゃない
『メフィスト惨歌』

こちらは藤子・F・不二雄が読み切りとして『漫画アクション増刊』で発表した作品。

主人公の高木健は、友人に裏切られ、失恋し、職まで失うなど、不運続き。そこへ、悪魔メフィストが現れ、彼の魂を得るために契約を結ぼうとします。

本作のメフィストは悪魔社会で魂の契約を得るために奔走するサラリーマンのような存在。おまけに、高木はマイペースで弁がたつうえに、やたらに理論家。難解な契約を取り交わし、最終的にメフィストが丸め込まれて一杯食わされてしまいます。

シニカルな描写で、悲哀を感じさせるメフィストに同情すらしてしまいます。

補足2:ゲーテの描いた『ファウスト』

前述の『青の祓魔師』にも登場し、『悪魔くん』や『ネオ・ファウスト』、『メフィスト惨歌』などで主要な悪魔として度々登場する悪魔メフィストの出自は、ドイツの文人ゲーテが生み出した戯曲である『ファウスト』です。

ゲーテの『ファウスト』では、魔術や科学を極めた老学者ファウスト氏が、悪魔メフィストの力によって若返り、グレートヒェン(マルガレーテ)という娘と恋愛関係を結びます。現在の『魂と引き換えに契約を取り交わす悪魔』のイメージは、このメフィストのイメージを踏襲しているといってもよいでしょう。

これは、2010年に放映された大ヒットアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』のプロットにも通じる点です。なお、手塚治虫の『ネオ・ファウスト』の主人公である『坂根第一』の名前は、英語の『ファースト(一番目)』とかけてあるのかもしれません。ドイツ語では『Faust=拳』という音も。

氷漬けにされた太古の魔王
『魔王ダンテ』

主人公の青年、宇津木涼(うつぎりょう)は、夜な夜なヒマラヤ山脈で氷漬けとなっている巨大な怪物の夢をみます。

そしてある時、登山の最中、何者かに引き寄せられるように、ヒマラヤにテレポートしてしまいます。宇津木を呼び寄せたのは、ヒマラヤで氷漬けにされている魔王ダンテだったのです。

永井豪によって1971年に描かれた本作は、連載打ち切りという憂き目にあいましたが、同氏による『神と悪魔』というテーマは、後の名作である『デビルマン』に受け継がれました。また、本作自体も2002年にアニメ化されました。

いわずもがな、イタリアの詩人ダンテによる『神曲』をモチーフとしており、魔王だけでなく、サタニストや黒魔術など、オカルト要素の強い作品です。

悪魔より悪魔的な人間が使役者
『よんでますよ、アザゼルさん。』

探偵の芥辺(あくたべ)は、黒魔術の使い手。『グリモワール』という魔道の書を使って、悪魔を召喚し、探偵業務の手伝いをさせます。

そんな、芥辺と契約している悪魔こそ、本作の主人公アザゼルです。

本作は、2007年から2019年までイブニングで連載されました。おどろおどろしい悪魔や黒魔術をテーマとしながら、破天荒なギャグマンガ=ブラックコメディ的な内容となっています。

アザゼルをはじめ、登場する悪魔はソロモン72柱に名を連ねる大悪魔たちばかりですが、本作では力が強く横暴な芥辺にこき使われるコミカルな存在として描かれています。

とはいえ、それでも彼らは悪魔。隙あらば契約者を出し抜こうと仕掛けてくるのですが。

悪魔の力で恐ろしいゲーム
ACMA:GAME(アクマゲーム)』

主人公の織田照朝(おだ てるあさ)は、頭脳明晰で運動神経抜群の高校生であり、日本有数の財閥『織田グループ』の総会長を務めています。そんな彼の前に、マルコ・ベルモンドという男が現れる。悪魔を召喚することのできる『悪魔の鍵』を使った『アクマゲーム』という勝負を挑んできます。

原作はメーブ、作画は『BLOODY MONDAY』の恵広史が担当する漫画。ゲームの勝者が要求するものを敗者からなんでも奪うという、デスゲーム的な作品となっています。

『BLOODY MONDAY』を彷彿とする緻密な心理的駆け引きによる迫力の頭脳戦や、異能力バトルが見所。

いじめたやつは絶対許さない!
『魔太郎がくる!!』

小柄で大人しい少年の浦見魔太郎(うらみ またろう)は、いじめのターゲットとなってしまいます。しかし、彼はただのいじめられっ子ではありませんでした。

「こ・の・う・ら・み・は・ら・さ・で・お・く・べ・き・か」

彼がそう言うと、いじめっ子たちは、悲惨な末路を遂げてしまいます。魔太郎の正体は、サタンを崇拝する黒魔術師であり、『うらみ念法』という超能力を駆使して加害者に制裁を与えるのでした。

1972年~1975年に藤子不二雄(A)によって描かれた本作は、瞬く間に人気を得ました。全国のいじめられっ子の鬱憤を晴らしてくれるような、カタルシスに満ちた物語でありますが、終盤になると一層ダークファンタジー的な展開になってきます。

魔法の世界も苦労は一杯
『ドラえもん のび太の魔界大冒険』

のび太が、ドラえもんの道具の一つ『もしもボックス』を使い、科学ではなく、魔法が発達した世界を実現させると……。

そこは便利な魔法の世界…と思いきや、魔法を使うにも勉強と修練が必要となる世界でした。さらに、宇宙には魔界星に住む悪魔族と、彼らを束ねる魔王デマオンの軍勢が、地球に迫りつつあったのです。

単なるファンタジー作品ではなく、現代のパラレルワールドとして描くあたりに、藤子・F・不二夫の創造性の高さを感じさせます。

意外な展開の連続と、多くの伏線を張っている点が特徴。中でも冒頭に登場する、のび太とドラえもんそっくりの石像に込められている秘密には驚かされる事でしょう。

補足3:黒魔術とは?

黒魔術とは、魔術を極めて個人的な事や悪いことに使うものを指します。主に呪いや悪魔の召喚などが挙げられるでしょう。対して、社会のためや善なることに使う魔術を白魔術と呼びます。

漫画で魔術を本格的に取り入れたのは、水木しげるによる貸本版の『悪魔くん』でしょう。作中で登場する呪文「エロイムエッサイム 我は求め訴えたり」という台詞(呪文)は、実際する魔道の書『グリモワール』に記されている一文です。

このグリモワールは黒魔術の手引きとされ、やはり前述した『よんでますよ、アザゼルさん。』でも登場します。いくつかの種類があり、ソロモン72柱のことが書かれている本は『ゴエティア』と呼ばれています。

人間の業を描いた20世紀の問題作
『デビルマン』

永井豪原作である『デビルマン』は、1972年にテレビアニメと漫画版が同時進行で世に出ました。

ヒーローものとしてヒットしたアニメ版と違い、漫画版のデビルマンは救いようの無い終末論的な結末を迎えます。その設定としては、敵対者であるデーモンは先史時代に誕生したもう一つの人類であり、他の生物と合体する力を持っているというもの。

この合体能力を利用して、主人公である不動明は、デーモンの体を奪い取り、デビルマンとなります。つまりデビルマンとは、ヒーローではなく新人類のことだったのです。

終盤になると、デーモンによる策略で、突然変異した人類こそがデーモンではないか? という疑心暗鬼にかられ、人間同士で殺し合いをはじめるに至ります。フィナーレで待ち受ける衝撃的な展開は必見の価値あり。

魔界の勢力争いに巻き込まれる大悪魔
『アスタロト』

本作は、『パタリロ』で有名な魔夜峰央の漫画で、1990年に連載が開始されました。

アスタロトとは、ソロモン王が使役した72体の悪魔の一体のことで、本作では黒髪の美青年として描かれ、魔界の実力者として登場します。

物語は、魔界の二大勢力であるサタンとベール、そして彼らを出し抜こうとするベールゼブブの権力争いに巻き込まれてしまったアスタロトの活躍を描いています。魔界の大公爵と呼ばれ、時間と空間を操ることができるアスタロトですが、時折人間臭い失敗もします。

基本的に悪魔たちの謀略劇として物語は進行していきますが、一方で魔夜峰央らしいドタバタコメディも描かれています。

補足4:キリスト教と悪魔の関係は?

『デビルマン』や『アスタロト』からは、ダンテの『神曲』やミルトンの『失楽園』の影響を感じざるを得ないでしょう。

この両作品では、キリスト教における神と悪魔の概念が書かれており、悪魔とは神に背いたものであり、人類を堕落させる存在となっています。

元来、悪魔とはキリスト教に敵対した異教の神であり、また、ディアボロス(密告者)といも呼ばれていることから、言葉で人を誘惑する存在でもありました。『デビルマン』に登場する『デーモン』のように人にとりつく悪霊という存在でもあり、宗教の歴史に絡んでいくうちに、悪魔は複雑な存在へとなっていった事が伺い知れます。

おわりに

海外で生まれた『悪魔』は、日本の創作物においても欠かせない存在となりました。グロテスクでおぞましい存在として描かれる一方で、時に間抜けで滑稽な存在としても描かれます。

ここに挙げた以外にも、漫画の世界でも様々な悪魔が描かれ、今後も登場してくることでしょう。

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蔵無

漫画考察者、ライター。80年生まれ、90年代育ち。尊敬している漫画家は水木しげる、荒木飛呂彦。好きな作家は江戸川乱歩。

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