ジゴサタ ~地獄の沙汰もお前しだい~ (C)洋介犬/日本文芸社
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漫画家 洋介犬さん SNS投稿作品『ジゴサタ』Web連載直前インタビュー

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「最近は凶悪な犯罪ばかり起きている」と感じることはないでしょうか。 年号が令和に変わってからは、悲惨なニュースが相次ぎ、日本は本当に平和な国であるのか疑わしく思っている方もいるでしょう。

しかし、実は日本の犯罪件数自体は、平成14年をピークに減少傾向にあります。
それでも、悪を許せないという気持ちはどの時代も変わらないのか、悪人を罰するという作品は評判を呼ぶもの。

そんな中、Twitterでの作品公開から人気に火がついた『ジゴサタ〜地獄の沙汰もお前しだい(以下ジゴサタ)』は、まさに「悪いことをした人への因果応報」をテーマにしている漫画です。

『ジゴサタ』 初 アップロード作品である第1話。大きい画像は、ご本人のwebサイトにて公開中
『ジゴサタ』 初 アップロード作品である第1話
ご本人のwebサイトにて公開中

今回はこの『ジゴサタ』の作者で、『外れたみんなの頭のネジ』『インガ様応報す』などを代表作とするホラー漫画家 洋介犬(ようすけん)さんにお話を伺いました。

洋介犬さん (漫画家)インタビュー

洋介犬さん 自画像

――先生は昔から風刺漫画や、悪人が罰せられるなどの「因果応報」をテーマにした作品を描かれてきましたが、きっかけはなんでしたか。

洋介犬 さん(以下 洋介犬):
ホラー作品の風潮が「不条理ホラー」かつ「なんのいわれもなくひどい目にあう」というものがメインとなっていた時代があったんですね。そのために、以前は僕自身もそういった作品を執筆していました。

しかし、あえてここで怪談の原点である「悪いことをすればひどい目にあう」というストーリーラインに立ち返ってみようと思ってはじめてみたことがきっかけです。よく「洋介犬は憂さ晴らしでやって(描いて)いる」という誤解がありますが、そういった動機はほとんどないです。

実際にそうなのであれば、親になんの不満もない僕が毒親を非難する漫画を描いていることが矛盾になってしまいます(笑)。

毒親をテーマにした話の1つ
ご本人のwebサイトで公開中

新作のプレゼンテーションとして開始したTwitterへの作品投稿

――元々、怪談は「悪いことをしたらひどい目にあうから、してはいけないよ」と、保護者が子どもにしつけとして聞かせる教訓という側面もありますよね。『ジゴサタ』で、先生が改めて『因果応報』をテーマにした作品を世間に発表していくことになった理由はありましたか。

洋介犬:
当初は、余った時間で新作のプレゼンテーションのように、Twitterで何か試作品的なものをアップしようとしていたものの一環でした。僕が好きな古典にダンテ・アリギエーリ(詩人、作家)の『神曲※』があるのですが、それを現代風に、自分なりにアレンジしてやってみたいという意思があり、それが『ジゴサタ』の原点です。

Twitterにアップした作品の中で、 結果的に 『ジゴサタ』がもっとも高評価を得られたので、シリーズ化しました。

『神曲』(しんきょく、伊: La Divina Commedia)は、13世紀から14世紀にかけてのイタリアの詩人・政治家、ダンテ・アリギエーリの代表作である。 地獄篇、煉獄篇、天国篇の3部から成る

Wikipedia 神曲

アイデアや執筆方法について

――古典が原点だったのですね。そこからストーリーのアイデアを、具体的にどういったところから発想しているのでしょうか。

洋介犬:
『ジゴサタ』に関しては、歴史上の犯罪や人物などをモチーフに組み立てることが多いです。
発想に関しては、以前は日常でふと思いついていました。

最近はシンキングタイムを設けて、集中的にバーッと量産します。これに関しては、作家さんによって方法論が違うかと思いますが、僕は元4コマ漫画家なので量産スキルはその頃のノウハウを使っています。

――なるほど、『ジゴサタ』はとてもハイペースで掲載されていますね。『ジゴサタ』の中で、とくに反響が大きかった、また、先生が思い入れのある作品があれば教えていただけますでしょうか。

洋介犬:
みなさんが裁いてほしいと潜在的に思っているのか、犯罪を罰するというテーマはスタンダードに強いですね。そして、泣き系もけっこう反響が強いです。 『新生』というエピソードにおいて、不遇すぎる環境下で自殺した少女に新たな道を差し出すエピソードがあり、それがとても思い入れも人気もあります。

洋介犬さんの思い入れのあるエピソードのひとつ『新生』
ご本人のwebサイトで公開中
商業版では第1話最後のエピソードになる予定

あとは、史実の武将や偉人の登場するエピソードも人気があります。 いろいろな題材を組み込めるという意味では拡張性の非常に高い漫画ですね。

『ジゴサタ』への反響と、悪を超法規的に裁く作品を求める心理

――私も『新生』は拝見したときに考えさせられるものがありました。『ジゴサタ』にはさまざまな反響があると思います。予想どおりだった反響と、意外だった反響を教えてください。

洋介犬:
予想どおりだったのは、やはり法律上では無理でも、『悪いことをしたものを超法規的に罰したい』という気持ちは、世間の心理として不変に存在しているんだな、ということです。

悪を超法規的に裁く作品は、もちろん『ジゴサタ』がはじまりというわけではないですが。 『大魔神』『水戸黄門』『必殺仕事人』『ハングマン』『北斗の拳』……など、古来よりテーマとしてはベーシックなものなのではないかと思います。

意外と根付いている仏教的地獄観と、キリスト教的な地獄

洋介犬:
意外だったのは、僕の想像以上に仏教的地獄観がみなさんにびっしり根付いていたことです。
やはり幼少期から『地獄』と言えば仏教の地獄をベースにされているせいか、キリスト教の地獄をベースにアレンジした『ジゴサタ』の地獄観は当初、理解されにくい箇所もあったようです。

――仏教とキリスト教の地獄観の違いは興味深いですね。具体的にはどのように異なるのでしょうか。

洋介犬:
たとえば、『煉獄』とは本来『地獄に行くほどでもない者が罪を清めて天国に行くための保留地』のような意味なんです。 しかし、言葉の響き的にか『地獄のハードなもの』という誤解が多かったようです。

あと、キリスト教観では基本的に輪廻転生はないのですが、それも理解されにくい側面がありました。「輪廻転生(※)もないのに地獄があるのはおかしい。反省しても意味がないのでは?」という疑問を何度も読者の方から投げかけられました。

転生輪廻(てんしょうりんね)とも言い、死んであの世に還った霊魂(魂)が、この世に何度も生まれ変わってくることを言う。

Wikipedia 輪廻転生
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――宗教観の違いはあれど、『ジゴサタ』は評判を呼びましたね。 そのひとつに、年号が令和になってから、『ジゴサタ』で罰を受けている悪人のように、身勝手な犯罪やニュースが目立っている……ということもはあるのでしょうか。

洋介犬:
令和になったから特に犯罪が多くなったとは感じませんが、通り魔的犯罪の動機として、自死の道連れの延長ということはありえるのかもしれません。そういった「もうあとがないのだから、何をしてもいい」という心理に『ジゴサタ』が「いや、死んでもあとはあるかもしれないよ」というサジェスチョン(示唆)のひとつになるようであれば、とも思います。

通り魔を現世で犯した人の『その後』の話
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洋介犬:
実際、読者の方のご感想で、『ジゴサタを読んで生活を改めた』といっていただいた事もありました。こういった感想は漫画家冥利に尽きますね。

死後の世界は……あるかもしれない

――それは嬉しいことですね。単純に漫画として楽しめて、問題提起にもなっている『ジゴサタ』からは勢いが伝わります。日本文芸社のWEBサイト『ゴラクエッグ』にて、『ジゴサタ』が7月10日から連載されるそうですね。改めて、『ジゴサタ』のアピールポイントを教えてください。

洋介犬:
前の質問の補足にもなりますが、予想外だったことのひとつに『世間の方は意外に死後の世界を信じている・恐れている』というものがありました。 僕自身は死後の世界の存在に対して懐疑的ではあるのですが、可能性のひとつとして、『ジゴサタ』が「(死後の世界は)こうかもしれないよ」という提示になれば幸いです。

あと、死者だからできることや死後だから思えることはきっとあるはずですよね。 『ジゴサタ』は、因果応報的な刑罰シーンを描くだけでなく、そういった『生きている間にはできないことができる漫画』としても展開していきたいです。 読んだ方達にとって「法律はさておき、一個人としてこの罪はどう思う?」と、問いかけにもなればと思いますね。

――今後連載作品としてで『ジゴサタ』を読めるということが心から楽しみです。この度は貴重なお話を誠にありがとうございました!

洋介犬(ようすけん)さんプロフィール

洋介犬さん プロフィール
洋介犬さん プロフィール

兵庫県丹波市出身。ホラー漫画家。代表作に『外れたみんなの頭のネジ』『誘怪犯』等。
いち早くWEB漫画の可能性を探求し、怪談漫画ブログは5000万PV。 『外れたみんなの頭のネジ』累計72億PVを記録。 オカルト全般に通じ、ホラーマニアや作家からの評価も高い。とくにサイコホラーを得意とする。

『ジゴサタ ~地獄の沙汰もお前しだい』 web連載情報

当ページでご紹介した漫画『ジゴサタ』は、 2019年7月10日より 『ジゴサタ』が日本文芸社WEBサイト『ゴラクエッグ』にて連載スタートします。

洋介犬さんのwebサイトでも公開されていますが、Web連載にあたって、多くのエピソードを描き下ろし/加筆アレンジされているそうです。当記事で興味を持っていただいた方はもちろん、これまでのファンの方も是非ゴラクエッグでの商業版『ジゴサタ』連載をお読みください!

地獄の沙汰もお前しだい web連載情報

毎月10・20・30日頃に更新予定。 全体の三割が商業版のみの描き下ろし・冒頭描き下ろし付き

(C)洋介犬/日本文芸社

ジゴサタ ~地獄の沙汰もお前しだい~ (C)洋介犬/日本文芸社

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