東南アジアはミャンマー。 タイの北西、中国やバングラディッシュなどと隣接するこの国において2007年より活動するパンクバンドRebel Riot。 本記事では彼らと、その中心人物のKyaw Kyawについて紹介したいと思います。
記事の索引
ミャンマーのPUNKバンド『Rebel Riot』とは
モヒカン刈り(Mohawk hairstyle)に、鋲ジャン(スタッズ革ジャン)という伝統的なパンクファッションに身を包んだミャンマーのバンド『Rebel Riot(レベル・ライオット)』。
外観は一見してPUNKファッションであり、その印象にたがわず楽曲も筋の通った本格的なパンクロック。 音楽性はディスチャージ(DISCHARGE)やカジュアリティーズ(The Casualties)など、骨太のハードコア・パンク、ストリート・パンクを彷彿とします。
スタイルだけでは無く、Rebel Riotの音楽は怒りで作られています。元来パンクロック自体も、世界でも珍しい『怒り』を表現する音楽であるのですが、彼らの怒りは民主化とは程遠い現時点での軍事政権にも向けられています。
※ミャンマーでは2021年に軍のクーデータが勃発し、以降も軍事政権が続いている。
楽曲『One Day』はは、2021年5月29日に3曲入りEP『One Day』として日本国内でもリリース、同楽曲を含む全12曲のアルバム『One Day』も2021年8月上旬より各種デジタル配信サービスから購入する事ができるようになっています。
軍事政権によって強烈な弾圧と支配をされ続ける国にあって、声高らかにパンクスとして自由や平等の回復を掲げて活動する事がどれほど大変な事かは予想に難くありません。 事実、音源の製作や出版物のリリースにあたっても厳しい監視の目をかいくぐるなど、日本では想像できないほどの多くのハードルを越える必要があったようです。
Rebel Riotのルーツ
Rebel Riotの中心人物Kyaw Kyaw氏(読みはチョウ・チョウまたはチョ・チョが近いようだ)は17歳の頃に手に入れたDVDで初めてパンクロックに触れた(※)と言います。その後インターネットで世界中のパンクバンドを見聞きし、音楽や服や姿勢(attitude)に触れ、影響を受けていきます。
※Rebel Riot: The punk soundtrack to Myanmar’s anti-coup protests | Protests News | Al Jazeera
そしてバンドRebel Riotはミャンマーで反政府デモが活発となった時期……2007年に結成されました。 その後現在に至るまでも不安定なミャンマーの政治体制の中で、より良い民主化政治の実現を目指し活動を続けています。
その活動はバンドだけにとどまらない
Rebel Riotはミャンマーの旧首都ヤンゴンのアンダーグラウンドミュージックシーンの宣伝とサポートを目的としたオーガナイザー集団『D.I.T.(Do It Together)』も運営しています。 Facebookページではその活動内容や関連するアーティストの情報を垣間見る事ができます。
Rebel Riot YouTubeチャンネルにて公開されているA Youtta Thilaというアーティストの楽曲
また、彼らはバンドアーティストであるのと同時にKyaw Kyawを中心としたコミューンという側面もあるようで、ミャンマーの民主化デモに参加したり、デモ隊やホームレスのために炊き出しをするなど、民主化のための政治運動をしています。
例えば、戦争と貧困に対する抗議運動である『Food Not Bombs』プロジェクトにも参加(※)し、貧困者のために無料の食事の提供をおこなっています。さらには『Books Not Bombs』活動にも参加。こちらは寄付によって集めた書籍を子どもたち向けてて提供するといった活動を行っています。
※Punk And Fresh Cooking For A Resilient City: Food Not Bombs
筆者は『Food Not Bombs』活動について詳しくはありませんが、「爆弾ではなく、食べ物を」と掲げられたこのスローガンについては、西海岸出身のバンドFifteenの曲名を連想しました。FifteenとKyaw Kyaw、そして『Food Not Bombs』活動にどれほどの関連性があるかは知らないのですが。
Kyaw Kyawという人物
Rebel Riotの中心人物Kyaw Kyaw。1980年代からのハードコア・パンクスを象徴とするような風貌で映像や写真に登場する彼は、思想・活動にも筋の通ったリアル・パンクです。
例えば、ミャンマー国内では仏教が多数派であり小数派であるイスラム教との対立もあるそう。そしてKyaw Kyaw自身は敬虔な仏教徒ですが、同国の一部の仏教徒がイスラム教に対する弾圧を行い、憎しみ合っている事についても「平和を愛する仏教の教えから完全に外れている」と非難しています。
近しいシーンとして、マレーシアの超有名Oiパンクバンド、『A.C.A.B.』も、その基本精神として「ムスリムであることに忠実であれ」を掲げています。パンクや音楽が生活の一部であるならば、宗教や思想とは無関係ではいられないのは当然の事。とはいえそこに差別、弾圧、暴力や戦争は不要という事でしょう。
百聞は一見にしかず
Rebel Riotの活動は、ミュージックビデオ、ライブ映像、インタビューなどその多くをYouTubeで知る事ができるので、ぜひ見てほしいと思います。
筆者がこのバンドについて調べていくうちに知ったKyaw Kyaw氏の言葉「システムを変えようとするなら、歌を歌っているだけでなく、実際に何かをしなければならない」という言葉は、深く胸に響いています。
なお、彼らの活動を応援したいという場合は、日本国内での音源やグッズの販売を手掛けるBRONZE FIST RECORDSからCDやTシャツ、ピンバッジなどを購入する事で行えるようです。
(流石の三太郎)
関連リンク
- The Rebel Riot Band Official YouTubeチャンネル
- Kyaw Kyaw Rebel Riot Facebookページ
- Kyaw Kyaw Rebel Riot Twitterアカウント
- D.I.T.(Do It Together) Facebookページ
- ミャンマー『Food Not Bombs』 Facebookページ
- ミャンマー『Books Not Bombs』 Facebookページ
- BRONZE FIST RECORDS BOOTHショップ
(日本国内でRebel Riotの音源やグッズリリースをおこなっているレーベル) - BRONZE FIST RECORDS Twitterアカウント
- BRONZE FIST RECORDS・社長の訓辞 アメーバブログより
出典・参考記事
- Kyaw Kyaw – Nusasonic
- Rebel Riot: The punk soundtrack to Myanmar’s anti-coup protests
- ‘Scream for human rights’: Punks, monks and politics in Myanmar
- Punk And Fresh Cooking For A Resilient City: Food Not Bombs
- Myanmar Punk Band Rebel Riot Featured On New Track Raising Funds For Black Lives Matter
- ミャンマーで自由を諦めない、パンクの連帯――パンク専門レーベル「BRONZE FIST RECORDS」主宰者・高崎英樹 ノンフィクションライター・石戸諭 エコノミスト Online
※『Bella Ciao(さらば恋人よ)』のカバーMV