コンピューターへの文字入力装置として必要不可欠な『キーボード (keyboard)』ですが、最近ではスマートフォン、タブレット用Bluetooth接続のモバイル用キーボードも登場しています。
これらキーボードの製品スペックを見ていると104や109といった数字や、メカニカル、パンタグラフなどの単語が記載されていますが、詳しくない人にとってはパッとイメージしにくいものです。
そこでこの記事で、現在主流のキーボードを中心に、キー配列、機構などをまとめてみたいと思います。
キー配列について
キー配列(キーボード配列、キーボードレイアウトとも)とは、文字通り、入力文字の物理的配置の事をさします。 2019年6月現在、主流となっているWindows系のキーボード配列は101キーボードを基本としもので、その特徴と、それぞれのバリエーションをご紹介します。
101キーボードとは
- キーが101個有ることから101キーボード
- 1985年のIBM Model M 1390131が原型。当時、『Enhanced Keyboard(拡張キーボード) 』 という名称で発表される
- 現在利用されているWindows系キーボードのベースとなる配列
- 国により一部キー配置が違い、世界標準ISO規格 、アメリカANSI規格、日本規格JISと別れています。(上記の図はANSI規格 INCITS 154-1988に準拠した、ANSI配列)
- 101キーボードを基本とし、幾つかの追加キーのあるキーボード(104、106、109、112など)を、まとめて101キーボード系とも
104キーボード
- 101キーボードにSuper×2、Meta×1の合計3つのキーを追加し、合計104のキーが有るキーボード
- Windows上ではWindows(Super)×2、アプリケーション(Meta)×1として動作する
日本語 106キーボード
日本語用の入力に必要な変換、無変換といったキーボードが追加されたのが106キーボードです。
- 『日本語106キーボード』、『OADG106キーボード』とも
- 101キーボードと比べ、日本語入力のための変換、無変換、カタカナ ひらがな、半角/全角、¥(通貨)など5つのキーを追加したもの
- Enterと、一部のキーの位置が101と異なる。2行に渡る大きいEnterキーに馴染があるユーザーも多いのではないでしょうか。
- 1991年の『IBM 5576-A01』が原型
- JIS X 6002-1980として規格化されているため、JIS配列と表記される場合も
日本語 108/109キーボード
- 日本語108/109キーボード 108つ、または109つキーが有る
- 日本語106キーボードに、Windows(Super)×1(または2)、アプリケーション(Meta)×1を追加したもの
- スペースキーの左側にWindows(Super)が1つだけあるものが108キーボード
- Windows(Super)がスペースキーの左右両方にあるものが109キーボード
- 2019年6月現在、Windows用で最も主流なキー配列
日本語 112キーボード
- 日本語112キーボード
- 112のキーが有る
- 109キーボードに加え、Power、Wake、Sleep、のキーが追加
- 主に、テンキーの上か、PrScr、ScrollLock、Pauseの場所が手前にズレて、その場所に配置される
- いずれも、電源のOFF(Power)、休止といったシステムやマシン自体を制御するボタンな為、誤操作で大変な事になる場合がある。これを称して自爆ボタンというスラングも
Mac用キーボード USキーボード配列
Mac(Apple Macintosh時)のキーボードには、OSに即し、option、command(⌘)といったキーが有ります。
- Appleのキーボードには、早い時期からMacintosh本体を起動する電源ボタンが最上部に設置されている
- deleteが101キーボード系のBackSpaceと同じ働きをする
- command ⌘ + Cで文字列のコピーというように、command ⌘が101系のCtrlと近い働きをするが、controlキーも存在する
Mac用キーボード 日本語 JIS配列
101系キーボード同様、日本語入力用のキーボードはUS配列とかなりキーの位置が異なります。Mac Magic Keyboardを例にすると……
- Mac用の日本語配列では、101系と同様JIS規格に準拠した配置
- 106では半角/全角を押すごとに英数入力とかなが切り替わりますが、Mac用では入力切替が英数とかなのキーに分かれています。
- Magic KeyboardにはファンクションキーがF19まである
Happy Hacking Keyboard ( HHKB )
日本の株式会社PFUが販売するキーボード。 コンピュータ科学者であり、UNIXのプロフェッショナルである和田英一氏の提唱する理念に即した、プロフェッショナル向け、かつシンプルなキーボード。1995年頃より開発・販売され、現在は多くのファンが居ます。
モバイル用 キー配列
- モバイル用のキーボードは、省スペース性や携帯性を重視し、ファンクションキやテンキーの有無など、メーカーや機種ごとに独自のキー配列でデザインされている事も多い
- テンキーは省略されているものが多い
- Android、iOS、Windows、Macのいずれにも対応できるように考慮されているものも
キーボードの機構の種類
メンブレン キーボード
- メンブレンシートとラバーカップを利用した構造
- 現在利用されているキーボードの多くがこのメンブレン式キーボード
- キー押下により、上下2枚の接点シートが接触することで電気が流れ、入力が認識されます。
- 後述のパンタグラフもメンブレンキーボードの一種ですが、一般的にキーの支持・反発にラバードームのみを採用しているものをメンブレン方式といいます
- 材質がゴムのため耐久性には難あり
- 低い製造コストで生産できるため、現在の主流キーボード
- 安価なものは、キーが固く、反発の力により指先への負担が大きい製品も
パンタグラフ キーボード
- メンブレンキーボードの中で、キーの支持にパンタグラフを採用しているものをパンタグラフキーボードといいます。
- パンタグラフのX型の構造で支持することにより、構造を薄型化できるため、ノートパソコンやモバイル用のキーボードに多く採用されています
- ラバーカップも薄くできるため、メンブレンより反発力が弱く、軽いキータッチとなる傾向がある
メカニカル キーボード
- キーひとつひとつが独立したスイッチとなっている
- キーには板バネが内蔵されており、それが接点となる
- キーの支持・反発にはスプリングが採用されており、ラバーカップと比べ沈み方や戻り方が滑らかで、機械式による底打ち感を楽しむことができます。また、スプリングの種類で反発力が異なってくる
- カチカチという独特なタイプ音を好むファンも多いが、これはスイッチ自体に音を出す装置が入っているためで、音が出ないスイッチもある。
- メンブレンと比べ複雑な構造のため製造コストがかかり、安いものでも5,000円以上と高価格で流通しています。
- スプリングの特性上、他のキーボードより耐久性は高い
- ドイツのCherry社が製造する『MXスイッチ』や、Kailh社の『BOX スイッチ』などが採用され。その機構の色(※)によってタイプ感や押下圧などが異なる。
※赤軸、青軸、茶軸、黒軸と呼ばれ、どのスイッチが利用されているかによって操作感を大まかに判断する事ができる。(参考 Cherry MX 公式サイト)
静電容量無接点式 キーボード
- キー内部のコニックリング(円錐スプリング)を押し下げることで変化する静電容量を感知して、キー押下を認識する方式
- 物理的な接点がないため、キータッチが滑らかになり、高い耐久性を実現しています。
- 構造が複雑な分、この方式を採用しているキーボードの価格は15,000円以上と非常に高価です。
レーザー投影式 キーボード
バーチャルキーボードとも呼ばれるタイプのキーボード。
- モバイル用のキーボードが150~200グラムくらいの製品が多いのに対して、レーザーを投影する機器は50~100グラム位と、軽量・コンパクトで、持ち運びに便利
- レーザーにより投影されたキーを指でふさぐことで、文字入力を認識する仕組み。物理的にキーに触れることができないため、ブラインドタッチが難しく、通常のキーボードと比較し、誤入力の頻度が多くなりやすい
- 見た目のインパクトは最高
- 製品により1分間に認識できる文字数が異なるため、購入の際には確認が必用
エルゴノミクス キーボード
- エルゴノミクスキーボードは人間工学(Ergonomics)に基づいてデザインされたキーボードの総称
- 人間が可能な限り自然な動きや状態で使えるような思想に基づいて設計されており、その形状やキー配置は多種多様
- 多くの場合、左右のキーがハの字に配置されており、これにより肩や脇、手首などへの負荷が減り、長時間利用した際の疲労感を軽減させる事を目的としている
- ただし、一般的なキーボードを利用していたユーザーが、エルゴノミクスキーボードを利用する場合、慣れるまでに少し時間がかかる可能性も
- また、エルゴノミクスキーボードを普段利用しているユーザーは、一般的なキーボードでのタイプミスや誤操作が発生しやすくなる事も
キーボード レイアウト関連の補足
フルキーボード/フルサイズキーボードとは
- 一般的には『テンキー』と『ファンクションキー』などすべて搭載されているものをフルキーボード呼ぶ
- なお、キーピッチが19mm以上のものをフルサイズキーボードと呼ぶ。これらはテンキーなどが省略されたタイプもあるので混乱を招きやすい
ファンクションキー
- ファンクションキーは『F1』~『F12』(またはそれ以上)の特殊なキー
- 通常、キーボードの最上部に配置されている
- ファンクションキーはOSやソフト、そのバージョンによって働きが異なり、割り当てられていない場合などもある(ユーザーがソフトウェア上で任意に設定可能)
- 多くのソフトウェアで、『F6』~『F10』は文字入力変換。F5は表示(webブラウザなど)の更新、F11はウィンドウを全画面表示などある程度統一されている
- ノートパソコンやモバイル用のキーボードなどではファンクションキーの位置にマルチメディアキーが配置されていている場合も。この場合、別途用意されたファンクション(fn)キーを押しながら該当するキーを押す事で、ファンクションキーとして動作させる
テンキー
- テンキーは数値入力や計算に特化したキー
- 『0』-『9』までの10個のキーがあるため、テンキーと呼ばれる
- ノートパソコンやモバイル用などの小型のキーボードには、テンキーがついていないものも
- NumLockキーで機能をカーソルキーと切り替えられる製品も多い
- テンキー単品の装置もあり、USBやBuletoothで簡単に増設できる
- テンキ―として利用できる計算機(または計算機として単体利用ができるテンキー)なども販売されている
QWERTY(クワーティ)配列
- アルファベットが刻印された、文字入力用キーボードのスタンダード。日本国内で一般的に販売されているキーボードの配列です。
- 英字最上段の左上からQ、W、E 、R 、T 、 Yの並び順になっているから『QWERTY(クワーティ)』とよびます。
- 日本では『たていすかん配列』と……呼びません。くぁwせdrftgyふじこ
QWERTZ(クウォーツ)配列
- ドイツ語、ラテン語圏で利用されるキーボード配列で、QWERTY配列と比べ、ZとYの位置が入れ替わっている(ドイツ語系言語ではYよりZの利用頻度が高い為)
- 一部、ラテン語で使われるウムラウト(̤̈̈umlaut)キー ä、ö、üが含まれるものもある
Dvorak配列(ドヴォラック)配列
- 1932年にワシントン大学の教育心理学者が提唱した配列で、英文入力に特化した設計
- キーボードとして販売されている事は少ないが、ソフトウェアを用いて対応する事は可能
KALQ配列
タッチタイピング用のスクリーン(タブレットなど)向けに、と考案、開発されたキー配列。一時期Google Play store上にKALQ配列入力できるアプリが登場したが、現在はダウンロードできなくなっています。 公開当時の触れ込みでは、タッチパネル式の端末で、ユーザーの入力速度は34%は向上する、という試算のもと、提案されていました。


現在はApple Store、およびGoogle Playサードパーティ製ストアからはインストールできなくなっていますが、Android向けの非公式アプリストア APKpureで KALQ Keyboard (Official) Beta KALQ.1.8(Beta) ダウンロード可能です。最新版は2015-09-09となっていますが、その後の動向はネット上では観測できません。
- KALQキーボード wikipwdia(英語) https://en.wikipedia.org/wiki/KALQ_keyboard
- 2013年当時の発表(英語) https://techcrunch.com/2013/04/24/kalq/
まとめ
1985年から始まった101キーボード系は、30年以上経った今でもその形をほとんど変えずに利用されています。101キーボード系とは細部が異なりつつも、QWERTY(クワーティ)配列を踏襲した、Mac、UNIX用なを含めた現在のフォーマットは、当面しばらくの間はコンピューターへの文字入力装置としての主流なのではないでしょうか。
文字入力のデバイスという面では、『音声入力』やスマートフォンのUIから生まれた『フリック入力』など新しい入力装置や方法も浸透してきています。
コメント
とてもわかりやすくて勉強になりました