Netflix『天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する』
画像 Netflix『天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する』予告編動画より

Netflix『天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する』 ビル・ゲイツは今、何をしてるのか?

評価:4 

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Microsoft(マイクロソフト)創業者にして、長者番付のトップに君臨し続けていた男、ビル・ゲイツ(William Henry “Bill” Gates III)氏

パソコンはインターネットとメールくらいしか使えない筆者でも、その名前を知る伝説的存在です。 ちなみにgoogleで『ビル・ゲイツ 資産』と検索すると、ご丁寧にこんな風に表示されます。

ビルゲイツのgoogleサジェスト……(いいなあ・・・お金持ち・・・)
(いいなあ・・・お金持ち・・・)
googleサジェストに資産が表示される

2014年には会長職から身を退いて、妻であるメリンダ・ゲイツと共に立ち上げていた『ビル&メリンダ・ゲイツ財団』での活動に注力。 貧困地でのワクチン接種や、途上国の水準を上げるための寄付を行なうなど、慈善活動を積極的に行なっています。

ここで一つ、素朴な疑問。

財団がどんな活動をしているかは分かったけど、肝心のビル・ゲイツって、今なにやってるの? なにを考えてるの? その答えを1話=1時間の3話構成で、分かりやすく紹介するドキュメンタリーがNetflixで配信されています。

題して、『天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する

『天才の頭の中: ビル・ゲイツを解読する』予告編 – Netflix
『天才の頭の中: ビル・ゲイツを解読する』予告編 – Netflix

個人的にはビル・ゲイツに対して“偏屈なおじいさん”というイメージをもっていたのですが(失礼)、Netflixで配信されている本作は、タイトルどおり“解読”されていくビル・ゲイツの頭の中、そして素顔を見ることができる作品です。

ビル・ゲイツが取り組むのは「世界中の子どもが平等に扱われること」

天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する (Inside Bill’s Brain: Decoding Bill Gates)』は、監督であるデイビス・グッゲンハイム(代表作『不都合な真実』など)が、「好きな食べ物は?」「一番怖いものは?」など、ざっくばらんな質問からビル・ゲイツの活動や素顔に迫る作品です。

監督「好きな食べ物は?」
ビルゲイツ「ハンバーガー」
「好きな食べ物は?」 「ハンバーガー」
※天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する 公式予告より

なかには「妻に言い負かされたことは?」など、マイクロソフトの社員なら恐れ多くて聞けないようなことも普通に聞きます。

「自分の脳が動かなくなること」が一番の恐怖、と語るビル・ゲイツですが、彼が常に考えていることは、「世界中の子どもたちが平等に扱われるにはどうすればいいか?」ということでした。

そのために考えた天才ビル・ゲイツの方法は、世間に現状をうったえる……のではなく、資産をただ寄付するだけでもなく、永続的かつ現実的な手法ばかりで驚かされます。

途上国では下痢で子どもたちが亡くなっている

※天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する 公式予告より
※天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する 公式予告より

現在途上国で、下痢で子どもを亡くした親が埋葬をする回数は年間300万回と言われます。 途上国の公共衛生は非常に劣悪であり、落とし便所で処理し切れなかった排泄物は、子供たちが水遊びをする川などにそのまま捨てられてしまうのです。

この問題を解決する方法として、ビル・ゲイツが巨額の資産で飲料水を大盤振る舞いしたとしましょう。 しかし下水処理がずさんな途上国では、子どもたちは水遊びで川に入り、そこに流れこんだ汚水に触れてしまうので病死する現状は変わりません。

そこでビル・ゲイツは、地球上の資源を駆使して、この数字をゼロにできないか考えます。

解決のカギはトイレと下水処理

ここで、天才ビル・ゲイツの脳みそがフル回転。

彼は真っ先に、ここ数年トイレの技術が変化していないことに着目します。 トイレだけでなく、下水処理も同じ方法が長年使われているだけでした。 さらに、一つの町に下水処理場を建設しようと思うと数百億ドルの資金と、膨大な水とエネルギーが必要になることも問題だと指摘。

しかし画期的なトイレや下水処理場を発明しても、途上国で設置や運用に莫大な費用がかかってしまうようでは意味がありません。

そこでビルは、“ローコストで素晴らしいトイレを作る”ことに執念を燃やします。 まるで日本の激しい価格競争で聞こえてきそうな台詞ですが、天才ビル・ゲイツが言うと非常に神々しく聞こえます……。

天才ビル・ゲイツの取った方法

Netflixで配信されている『天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する』は3話構成で、1話では『公共衛生』、2話では『ポリオの撲滅』、3部では『エネルギー問題』に取り組むビル・ゲイツの姿が捉えられています。

すべての話で共通しているのは、ビル・ゲイツは持ち前の頭脳で問題の適任者を導き出し、持ち前の資産で彼らを支援するということです。

途上国で使用できるトイレの発明についてはコンテストを開催してビルが実用性の有無を判断します。 下水処理場に関しては、極秘の技術が詰まった航空宇宙会社に勤める、機械工学技師に開発を依頼。

そこで、乾燥させた排泄物を燃やし、その熱で生まれた電力で水蒸気から飲料水を生成する『オムニプロセッサー』を完成させました。

オムニプロセッサーで生産された飲料水を飲むビル・ゲイツ ※天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する 公式予告より
オムニプロセッサーで生産された飲料水を飲むビル・ゲイツ
※天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する 公式予告より

しかし、ビルの挑戦は成功ばかりではありません。

2話の『ポリオ撲滅』では、かなりの発症数を抑えることができましたが、ポリオが蔓延するナイジェリアで紛争が起き、予防接種を行なっていたボランティアが命を落とす事態に。

エネルギー問題でも、今や誰もが嫌悪感を抱く“あるエネルギー”を使って気候変動を防ぐ発明をしますが、ここでもビルが介入できない問題が立ちふさがります。 こうした天才の光と影は、ビルが取り組んでいる問題以外からも見ることができます。

天才ビル・ゲイツの活動から垣間見える人間性

 ※天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する 公式予告より
※天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する 公式予告より

マイクロソフトを創業し、世界長者番付では長年トップの座に君臨していたビル・ゲイツ。

若くして社長となり、市場を独占する勢いで成長する企業に、世間はビルのことを「横暴で傲慢な人間」と評価するようになりました。

しかし、妻のメリンダが「それは彼の仮面であり、本当は温かい人物」と語るように、『天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する』では、ビルのこれまでにない素顔を見ることができるのです。

今も昔も、パートナーあってのビル・ゲイツ

第2話では監督が「脳はCPUか?」とビル・ゲイツに聞くと、彼は「イエス」と断言します。

メリンダも「彼の頭には巨大なエクセルがあり、そこに入力された数値をすべて記憶している」と言うほど。 ……ちなみにメリンダは、本作のタイトルを『天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する』と聞いて、「天才の頭の中なんて、私でも関わりたくない」とげらげら笑っていました。

しかし、天才と呼ばれるビル・ゲイツも、常に一人で走り続けてきたわけではありません。 3話すべてのプロジェクトで、ビルは様々な権威ある人物から力を借り、自分の思い描く問題への解決策を探していました。

また本作では、ストーリーごとにビル・ゲイツの過去も掘り下げていきます。

例えば、マイクロソフトを一緒に立ち上げたポール・アレンついて、彼と過ごした青春時代や、会社を育てる中で生じた確執についても包み隠さず語っていました。

※ポール・アレンは2018年に亡くなっており、そのことについても本作で触れています。

また、最愛のパートナーであるメリンダとの馴れ初めについてなど、これまでフォーカスされてこなかった、彼の人間的な部分にも注目です。

ちなみに、ビルは “会社の成長” か “メリンダとの結婚” か決断しなくてはならないとき、ホワイトボードに結婚のメリット・デメリットを書き連ねていたとか。(そしてそれをメリンダに見られたというオチまで付いてきます)

ビル・ゲイツの日常

ビル・ゲイツの人間らしい部分は、過去だけでなく現在からも捉えられます。

今なお探究心が全く衰えないビルは、人里離れた狭い別荘に一人訪れると、そこで1週間ひたすら書籍を読んだり書き物をしたりするだけの“シンク・ウィーク”を設けています。 ビル・ゲイツがよく読む本のジャンルには、健康やエネルギー関係の書籍が多く、日本食の変化をテーマにした書籍を紹介している時は、読破するのに若干心が折れていました。

なお食に関しては、小食かつファストフードが好きと知られています。 本編でも朝食は食べず、おやつはナッツコーヒー派、ダイナーではおいしそうにハンバーガーを頬張っていました。

食生活はさておき、会長職を退いた今でも、ビル・ゲイツは文字通り分刻みのスケジュールで活動しています。 「年を取って丸くなった」とビル・ゲイツは言いますが、物事への取り組む姿勢は、むしろ若い頃より前のめりになっていると周囲の人々は評価していました。

ちなみにこちらは、若かりし頃、交通違反で捕まったビル・ゲイツ。

1977年にニューメキシコ州アルバカーキで交通違反を犯したときのマグショット
パブリックドメイン Wikipedia より

63歳の今でも、鬱憤を晴らしたいときは夜道を車で飛ばし、スピードと法の限界に挑戦するそうです。

『天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する』の本編で、特に印象的だったのは

天才でも、与えられた時間は24時間

という言葉。

ビルはその危機感を誰よりも理解しており、残された時間を活用するために全力を尽くす姿を見ることができます。

凡人が見ても、『天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する』は面白い!

視聴前には、天才の頭を解読されても、凡人の私には理解できないのでは……とも思っていました。 しかし本作は、ビル・ゲイツの考えや素顔を見ることで、誰でも驚きや面白さを感じられる内容でした。

また、本作は「天才を解読して自分も参考にしよう!」という内容では決してなく、「天才を解読して、天才について考えてみる」作品ともいえます。

これまでのビルの成功や失敗を踏まえ、監督は「世界を変えたい人からは衝撃を受けやすい。でも、深入りしすぎでは? と考えてしまう」と語りました。 遠い雲の上の存在ついて、私たちと同じ目線で考えることのできる本作って、実は滅茶苦茶すごい作品なのではないでしょうか?

そんな『天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する』はNetflixにて独占配信中です!

  ※天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する 公式予告より
※天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する 公式予告より
※天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する 公式予告より
※天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する 公式予告より
Netflix『天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する』

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ヤマダマイ

レンタルビデオ店、ミニシアター勤務を経てライターをしています。 『映画board』でも執筆中です。面白い映画をわかりやすい内容で紹介していきます。でも本職は2匹の猫(キジ白、牛柄)の下僕。

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