生産者と小売店が直接取引し中間搾取を排除。インドネシアの『オンラインフェアトレード事業』 - uzurea.net

生産者と小売店が直接取引し中間搾取を排除。インドネシアの『オンラインフェアトレード事業』

執筆: 澤田 真一 アイコン 澤田 真一

10年ほど前、日本では「カカオ農園で働かされる子供』について大きな話題になりました。

西アフリカのガーナは、隣国のコートジボワールと並ぶカカオの一大産地です。日本の製菓企業ともつながりの深い国ですが、その当時はカカオ農園での児童労働が世界中で問題視されていました。

新興国では、どんなに一生懸命働いても農家が貧困に陥るという現象が見受けられます。

その原因は様々ですが、そのひとつに『仲買人の存在』も挙げられます。 農作物の流通における仲買人問題は、世界各国でその解決が叫ばれている議題です。

インドネシアの例にみる農作物の仲買の状況

たとえば、キャベツを作っている 生産者Aがあるとします。

  • その生産者Aは、キャベツを5ドル/kgで仲買人Bに売る
  • 仲買人Bは、仲買人Cにキャベツを10ドル/kgで売る
  • 仲買人Cは仲買人Dに同じキャベツを15ドル/kgで売り
  • 最終的に仲買人Dの手で小売店Eに20ドル/kgでキャベツが売られる
  • 小売店Eが儲けを出す為に、価格をで30ドル/kgで販売する

一般的に私達が知るような、仲買や卸売業務は流通を効率化させる意味で非常に重要な存在ですが、前述の様な極端な例では、生産者や消費者にとってはあまりに理不尽で不合理な流通の仕組みとなります。

例えば、生産者Aから小売店Eに15ドル/kgでキャベツを仕入れられるとするとどうでしょうか。 生産者Aの収益は3倍に増え、同時に小売店Eもキャベツの価格を安く設定することができます。

2億6000万人の人口(世界第4位)を抱えるインドネシアでは、当然それだけの人口を支える食料を確保しなければならないのですが、実はインドネシアは多くの食料を輸入に頼っています。 政治家は食料自給率向上を公約にしていますが、農家が豊かになり 農業人口が増加しない限りは困難となります。

市民の健康意識に寄り添ったサービス『Tanihub』

そこで、最近ではこのような『Tanihub』というオンラインプラットフォームが登場しています。

Tanihub

農業関連事業のスタートアップ企業TaniGroupが運営するこの『TaniHub』は、農産物専門の卸売サービスで農家と小売店を直接つなぐ『パイプ役』となる機能を提供しています。

私達は生活に多少の余裕があり、健康について自覚的になれる状況でなければ意図的に自身に負荷を与える『運動』に労力を割く事はありません。 そして 健康に目覚めた人が次に気にするのは『食』について。 自身が普段食べている物の栄養や、生産地といった食の安全性に注目する様になります。

この流れは世界共通で、インドネシアでも同様に農作物の産地表示についてクローズアップされるようになりました。

先に記載した『仲買人の多い流通』は、農産物の産地を曖昧にしてしまうという要素も含んでいます。 ですが、『TaniHub』などのサービスで生産者と小売店が1本のパイプでつながれば、産地をごまかす余地はなくなります。 むしろ「○○州××県△△村のハルトノさんが作ったマンゴー」というように、産地だけでなく生産者の個人名知らせる事もできるようになるのです。

Mengapa menjual produk pangan di TaniHub?

現在のインドネシア ジャカルタのメインストリート『スディルマン通り』は、毎週日曜日午前中カーフリーとなります。

そして車の姿がなくなった大通りには多くの市民ランナーが走るのですが、道の端には各企業が販売ブースを出しています。 そんな中Tanihubは毎週日曜のブースの常連となり、ランナー相手にフレッシュジュースを販売しています。

Tanihub Webサイト
https://tanihub.com/

新鮮なフェアトレード野菜を届ける『Sayurbox』

農産物流通プラットフォームは、インドネシアでちょっとしたブームを巻き起こしています。

Sayurbox
Sayurbox

次に紹介する『Sayurbox』というサービスは先述のTanihubと比べ、より『B to C』に特化しし、「新鮮な国産野菜を農家から直接届ける」ということをアピールしています。

Sejuta Mimpi Bersama Sayurbox

これもまた多過ぎる仲買人の弊害に関する事柄ですが、野菜の転売が続くとその分だけ長い道程を経ることになり、野菜はどんどん新鮮さを失くしていきます。 前述の弊害も含め、仲買人が多く関わり、中間マージンが上乗せされた野菜は産地が不明瞭で新鮮ではないということになります。

悪いことだらけです。

このような理由から、『新鮮な野菜を届けます』という言葉は『フェアトレード商品を届けます』という意味合いとも直結するのです。

Sayurbox Webサイト
https://www.sayurbox.com/

野菜の『行商』をオンライン化『Kedai Sayur』

最後にもうひとつ、『Kedai Sayur』というサービスをご紹介します。

Kedai Sayur
Kedai Sayur

このサービスを説明する前に、まずはインドネシア語で『UMKM』と呼ばれている人々について語る必要があります。

UMKM(Usaha Mikro Kecil dan Menengah)とは、中小零細事業者を指す言葉。 インドネシアでは、法人格に至らない中小の個人事業主が実体経済を牽引しています。 これは決して大袈裟な表現ではありません。

たとえば、それは野菜の小売事業に関しても当てはまります。 この国の庶民は、朝早く起きて市場や町を周回する行商人からその日の食材を買い込みます。 自前の店舗を持たない行商人が、今でも多く存在するのがインドネシア。 しかし彼らもまた、不当に中間マージンを得ている仲買人に大きな損をさせられています。

Mitra Sayur Bendi Besar (Bpk Narto)

そこでKedai Sayurは、契約パートナーの行商人を集めて彼らに対して産地直送のフェアトレード野菜を提供します。それを契約行商人たちは、Kedai Sayurのロゴ入り車両を使って売りさばくという仕組み。 よく考えればこれは、UberGrab等のオンライン配車サービスと全く同様のシステムです。

卸売の段階で不利を被りやすい新参行商人に対しても、Kedai Sayurは平等に商品を振り分けます。

その仕組みが評判を呼び、今年5月にEast Venturesが主導するシードラウンドで130万ドル(約1億4000万円)の出資金を手にしました。ちなみに、Kedai Sayurは設立からまだ1年も経っていないスタートアップです。

Kedai Sayur Webサイト
http://www.kedaisayur.com/

G20でインドネシア大統領が提案した『アイディアハブ構想』

当記事で紹介した『フェアトレード事業』は、スマートフォンの急速普及により一躍花形業種となりました。 そしてインドネシア政府も、スタートアップのアイディアと行動力を活かした『農業改革』を推し進めようとしています。

インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は、2019年6月に大阪で行われたG20で『アイディアハブの導入』に関する提案を行いました。

このアイディアハブはあくまでも構想段階のものですが、要はスタートアップや中小零細事業者の成長を促すための知識やアイディアをクラウド共有できるデジタルプラットフォームです。

市民に求められているサービスと、それを構築するための知識及び人材をオンラインで即座に共有する。そうすることで結果として貧富の格差も縮小されていくのではないか……というのがアイディアハブの概念です。

それと同時に、我々の住む世界はいよいよ5G回線時代に突入します。 今までとは比べ物にならない量のデータが、ほんの一瞬で入手できる近未来。それは人類に、どのような恩恵をもたらしてくれるのでしょうか。

もしこの記事が役にたったら、シェアをお願いします。

この記事のタイトルとアドレスをコピーする


Page top