『ヘルプマーク』をご存じでしょうか? 当事者以外には分かりにくい身体の障害や、病気、初期の妊娠状態などを、視覚化することを目的として利用・配布されているマークです。
また、妊娠を知らせるための『マタニティマーク』や、心臓疾患など他の障害を示すマークやシンボルが、さまざまな団体によって定められ利用されていますが、まだあまり知られていないものや、見かける事はあってもそれが何を意味するのかあまり認知されていないものなども多くあります。
そこで当記事では特に『援助や配慮が必用な方』が所持し、視覚化・明示化するためのマークやシンボルを中心にまとめました。
記事の索引
身体状態や援助の必要を示すマーク一覧
下記が現在当記事で紹介しているマーク、シンボルの一覧です。
ヘルプマーク/ヘルプカード
冒頭でも紹介した『ヘルプマーク』は、東京都福祉保健局がらの提唱で広まった『他者からは分かりにくい身体の内部障害や、病気、初期の妊娠状態などを、周囲の方に知らせる 』 ことを目的として利用・配布されているマークです。
東京都から始まったこのマークとマークの配布ですが、2017年7月にJIS(案内用図記号)として登録され、東京都以外の都道府県でも配布を開始。SNSなどでも注目を集め、2018年3月末までに約219,000個が配布されているそうです。
所持を想定している対象者は、義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、妊娠初期の方など、援助や配慮を必要としていて、その所持・携帯を希望する方とされていますが、具体的にどの身体機能が……と厳密な基準を設けられているわけではありません。
配布・導入している都道府県も多く、実際にリュックなどにつけている方も増えてきたことから、認知度は特に高くなってきています。 このマークを見かけた際には具体的にどういった事を意識し、行うべきか、という点については『助け合いのしるし ヘルプマーク Webサイト』内に、記載されています。
Q.マークを身につけた方がいたら、どうすればいいですか?
電車・バスの中で、席をお譲りください。
外見では健康に見えても、疲れやすかったり、つり革につかまり続けるなどの同じ姿勢を保つことが困難な方がいます。また、外見からは分からないため、優先席に座っていると不審な目で見られ、ストレスを受けることがあります。駅や商業施設等で、声をかけるなどの配慮をお願いします。
交通機関の事故等、突発的な出来事に対して臨機応変に対応することが困難な方や、立ち上がる、歩く、階段の昇降などの動作が困難な方がいます。災害時は、安全に避難するための支援をお願いします。
視覚障害者や聴覚障害者等の状況把握が難しい方、肢体不自由者等の自力での迅速な避難が困難な方がいます。
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マタニティマーク
妊産婦が交通機関等を利用する際に身につけ、周囲が妊産婦への配慮を示しやすくするためのマークとして厚生労働省や、健やか親子21(第二次)事務局が公表し、利用・認知の推進をおこなっているマークです。
妊娠の中期~後期はもちろんですが、妊娠初期も健康を維持するためにもとても大切な時期ながら、外見からはなかなか見分けがつかないため『電車で席に座れない』『たばこの煙が気になる』といった苦労があります。 そんな妊婦さん達の妊娠・出産に関する安全性と快適さの確保の為に制定されたマークです。
ヘルプマーク同様、テレビ・ネットで話題になることも多いマークですので、知っている人も多いマークなのではないでしょうか。
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白杖(はくじょう)
『マーク』ではありませんが、『白杖』は、長く政令で定められている視覚障害者が携帯する歩行補助道具であり、 援助、配慮、場合によっては誘導が必用である事を示すシンボルでもあります。
白杖とは、全体が白(または黄色)で、一部に赤い部分を含む杖。
稀に白杖は『全盲』の方だけが使用する……という間違った認識をされている事が多いようですが、実際には”道路の通行に著(いちじる)しい支障がある程度の肢体不自由、視覚障害、聴覚障害及び平衡機能障害”と定められており、視野が欠けていたり、視力が弱いといった方や、聴覚(聞こえ)に障害がある方や、高齢者も所持します。
歩行の補助としては、杖を使った歩行訓練を実施できる施設などもありますが、歩行に支障がある障害などが有る事を周囲へ周知する目的として所持する事もあります。 道路交通法では、交差点や横断程などで、白杖を所持した方による申し出や、補助が必用と認められる場合は、『誘導、合図、適切な措置』によって、安全に歩行ができるよう努めるよう推進しています。
また、白杖を所持している方への歩行や通行を妨げるような行為や、前述のような視覚障害や歩行に支障や障害が無い者が所持する事も禁止されています。
なお、白杖の示す意味や用途は、日本国内だけではなく世界的にある程度共通した認識をされており、その出自はフランスだそうです。
ハート・プラス・マーク
ハート・プラス・マークも心臓疾患などの内部障害・内臓疾患など外見からは分かりにくい方の為、その存在を視覚的に示し、理解と協力を広げるために作られたマークです。『特定非営利活動法人ハート・プラスの会』が推進しています。
心臓疾患を中心に、見た目だけでは分からない内蔵疾患を視覚化する為のマークとの事で、ヘルプマークとも関連する部分もありますが、やはり覚えておきたい所です。
内部障害者も 車椅子マーク(国際シンボルマーク)のようなマークがあったらいいな……。そんな思いがカタチになり「ハート・プラス」は誕生しました。ハート・プラスマークは身体内部を意味する「ハートマーク」に、思いやりの心を「プラス」したものです。
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自働車運転用 聴覚障害者標識/聴覚障害者マーク
普通自動車の免許を持つ人の中で、聴覚障害があることを理由に免許に条件を付けされている人が運転をする際に車に取り付け・表示する事が義務付けられているマーク(表示しない場合、道路交通法違反に)で、耳の形をモチーフとして蝶にも見えるようにデザインされたもの。
『初心者マーク』や『高齢者マーク』同様自働車を運転する際に車に取り付けるマークです。他の車両は、このマークを付けている車に対して下記の様に配慮・保護するよう定められているようです。 運転免許試験会場などで販売されています。
初心者マークと同様に、周囲の運転者はこの標識を掲示した車両を保護する義務を有し、幅寄せ・割り込み(やむを得ない場合は除く)などの行為を行なってはならない。
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自働車運転用 身体障害者標識/身体障害者マーク
普通自動車の免許を持つ人の中で、肢体不自由があることを理由に免許に条件を付けされている人が表示するマークです。なお、このマークは”表示するように努めてください(罰則はありません)”とされています。
聴覚障害者マーク同様、免許取得の際に学習するため、多くの人が認知しているマークですね。
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耳マーク
聞こえが不自由なことを表すと同時に、聞こえない人・聞こえにくい人への配慮を表すマーク。
一般社団法人 全日本難聴者・中途失聴者団体連合会が管理しているマーク。 『耳が不自由であることを自己表示するためのマーク』としての利用や、マークを社会一般に認知してもらい、理解が求められるようにと、グッズを作成、販売しています。
エスカレーターマナーアップ キーホルダー
東京都理学療法士協会が推進する『エスカレーターを歩く人がゼロになる社会』を目指し、配布しているマナーアップマーク、キーホルダー。
2019年6月頃、SNSで話題となり、注目を浴びたエスカレーターマナーアップキーホルダー。 身体の障害などでどうしても左右特定の位置にしか立てない人のため、またエスカレーターで歩く事が危険であるという事を啓蒙する為に製作されたそうです。
とまる「わけ」って?
例えば、左手足が不自由な方の場合、右側の手すりをつかまって乗りたい。安全のためにもそう乗るべき方です。また『右側もとまって乗る』ことが当たり前のマナーになるよう『右側で立ち止まってみる』サポーターを増やしたい。東京2020までにエスカレーターマナーをかえていきましょう。
子ども用車いすマーク
『子ども用車いす(小児用介助型車いすマーク)』マークは、子ども用の車いす、および同目的で使用しているベビーカーに携帯される事を目的として、一般社団法人mina familyが考案、制作、配布しているマークです。
子ども用車いすは、一見するとベビーカーに似ていることから『車いす』だとを認識されず、さまざまな場面で誤解される事も多いそう。ベビーカーのように、畳めないものも多く車体重量だけで10~90kgほどあるものもある。 またこれら専用の『子ども用車いす』は、数十万円するほどの高価なものが多く、車いすのかわりにやむなくベビーカーで代用しているケースも多いそう。
上記の様な不理解や誤解から、外出先や交通機関、商業施設などで、より理解を得られるよう啓蒙が推進されています。
外観ではベビーカーと判別しにくい“子ども車いす”(通称「福祉バギー」・小児用介助型車いす、もしくは心身障害児などが車いすとしての用途で利用しているベビーカー、以下「子ども車いす」)を判別するため、「子ども車いすマーク」を平成28年6月に作成しました。
このマークは、車いすの車体に表示することで子ども車いすだと判別しやすくするほか、子ども車いすでの利用を認めている施設の入り口などに表示します。
子ども車いすの利用者(主に病気や障害のある子供たちとその介護者)が安心して外出できる社会とするために、子ども車いすマークを多様な場所で作成・使用できる仕組みとしていくことが効果的と考えられます。
ベビーカーマーク
ベビーカー使用者が安心して利用できる場所や設備(エレベーター、鉄道やバスの車両スペース等)を表しています。
国土交通省が実施する『育て等のため、ベビーカーを一層利用しやすくするための環境整備活動』の一環である『公共交通機関等におけるベビーカー利用に関する協議会(平成26年3月)』にて策定された統一的なマーク。平成27年5月には、JIS化されました。
<ベビーカーご使用の方は>
○周囲の方との接触や通行の妨げなど、ベビーカーの操作に気をつけましょう。
○困っているときは遠慮せずに手助けをお願いしてみましょう。
<周囲の方は>
○ベビーカー使用者には、温かい気持ちを持って接し、見守りましょう。
○エレベーターがない場所での上り下りなど、手助けを申し出てみましょう。
反対に『ベビーカー使用禁止マーク』というものも存在し、双方ともに、ポスター・チラシやWebサイト、マークを活用して、『ベビーカー利用にあたってのお願い』と『ベビーカーマーク』を広く周知・浸透させていく方針との事。ai、jpg,pdfといったベビーカーマークの画像データダウンロードも可能です。
聴覚過敏保護用シンボルマーク
とあるSNS上の投稿が話題になり、聴覚過敏対策の保護具・遮音具や、それらを用いている事を示すマークとして、株式会社石井マークが独自にデザインし公開しているマーク。
現在の所公共の団体や、特定の活動などによって利用されているものではありませんが、Twitterで一時期話題になった後、多くのメディアによって取り上げられ、拡散・周知されたので、ご存じの方も多いかもしれません。
同社のwebサイト上にて自由に利用してい良いという形で公開されています。
(2017年10月現在において)公的に周知あるいは規格化された統一のマークではなく、特定のメッセージと共に表示して「聴覚過敏の保護用」であることを伝えやすく強調し、同時にその意味を広く周知することを目的に設計したシンボルマークです。
サポートハートマーク
サポートを必用としている側ではなく、積極的にサポートできる事を表すというコンセプトで作られたマーク。
「困っている人を助けたい」という方が身に着けることで、障害や病気を抱える方といった支援を必要としている人(当事者)が、マークを身に着けている人に「手伝ってください」と声をかけやすくして、当事者が安心して過ごせるようにするためのマークです。
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介護中マーク
静岡県内の役所、役場などで製作・配布されているマークで、『介護をする側』の方達に使ってほしいという意図で考案された介護実施中である事を示すマークです。
出自は静岡県から考案されたマークですが、今後要介護者の増加にあわせて、介護に携わる方達の増加・負担も増える事を想定すると需要も増してくるマークでしょう。 現在は厚生労働省が、各自治体を通じてこの『介護マーク』の普及を図っているそうです。
■サービスエリアや駅などのトイレで、介護者が付き添う際、周囲から冷ややかな目でみられて困る。
■男性介護者が店頭で女性用の下着を購入する際、いつも困っている。
(中略)
介護中であることを周囲に理解してもらえれば……
⇒こんな時にぜひ介護マークをご活用ください!
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まとめ
ヘルプマークや、マタニティマークといった、昨今少しづつ認識されつつあるシンボルマークを中心に、第三者からは認識しにくい障害を持つ方や、援助・補助・配慮が必用な方が携帯・提示するマークやシンボルについてご紹介しました。
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