Netflix『世界の“現実”旅行』レビュー ダークツーリズムのヤバい魅力

ドキュメンタリー『世界の“現実”旅行』に見るダークツーリズムのヤバい魅力。
ドキュメンタリー『世界の“現実”旅行』 (画像 Netflix配信ページより)

執筆: ヤマダマイ アイコン ヤマダマイ

当記事でご紹介する『世界の“現実”旅行 (Dark Tourist)』は、2018年よりNetflixにて配信されている作品。ニュージランドのジャーナリストであるデヴィッド・ファリアー(David Farrier)監督が、悲しい歴史が残る現場や不気味な観光地をめぐる『ダークツーリズム』に参加する……というドキュメンタリー作品です。

COVID-19の影響による外出自粛期間に、この全8話を視聴した筆者が、ダークツーリズムの根底にある『危険度』や『物騒さ』を基準に、ランキング形式でまとめてみました。

※作品内容、記事内容に一部過激な記述、画像を含みます、苦手な方は閲覧を控えてください。

『世界の“現実”旅行』が見せるダークツーリズムとは

本作で取り上げられているダークツーリズムとは、『死と破壊にまつわる』場所を巡るツアー。 具体的には災害被災跡地や事故現場など、『負の遺産』となってしまった場所へ観光として訪れるというテーマのものが多く、世界中には多くのダークツーリズムが存在するそうです。

『世界の“現実”旅行』では、好奇心旺盛なデヴィッド・ファリアー監督(以下 監督)が、実際にその地に赴いて、本当に危うい場所なのかを確かめるというのがこのドキュメンタリーシリーズの主な内容です。

治安が悪い区域への潜入や、おどろおどろしい儀式に立ち会うなど、生命が脅かされそうな場面もありますが、話によっては「行ってみたら案外楽しい場所だった!」といった場合もあり、全編『ひたすらダーク』という訳ではありません。

雰囲気は、公式の予告動画を見ていただくと伝わるかもしれません。

Dark Tourist | Official Trailer [HD] | Netflix
『世界の“現実”旅行』海外版予告

それでは、さっそく各エピソードを紹介してきましょう。

8位 『第2話:日本〜福島の被災地や山梨の樹海をめぐる〜

まずは日本が題材のエピソード。まさかこの国にもダークツーリズムがあるとは思いませんでした。

内容としては、まず東日本大震災における、福島の災害被災跡地をめぐるツアーに参加。その後、自殺者が絶えないことで知られている樹海や、長崎県の『軍艦島(ぐんかんじま)』を訪れます。

「人生は危険で溢れている」
画像 Netflix『世界の“現実”旅行』 予告より
画像 Netflix『世界の“現実”旅行』 予告より

『得体の知れない何か』を感じとるという人物と一緒に各地をめぐっていきますが、監督自身はオカルトや心霊現象には終始懐疑的です。

『軍艦島』として知られている長崎県の端島では、立ち入り禁止区域に潜入し、石炭産業の栄枯盛衰と、当時の人々の暮らしを垣間見ることができます。

とはいえ、『死と破壊』というより、日本特有の退廃的な空気を伝えるる内容で、シリーズ全体の他のエピソードと比べ『やはり日本は平和である』ということを感じます。 それゆえに最下位としました。

※編集注:軍艦島はGoogleストリートビューで、通常は立ち入り禁止の地区も見る事ができます。

7位 『第3話:アメリカ〜真のヴァンパイアの“食事”に立ち会ってみた〜』

アメリカには危ういスポットがたくさんあるためか、このシリーズでは第3話と最終話の2回、アメリカが登場します。

アメリカにはシリアルキラー(連続殺人犯)にまつわるダークツーリズムが多々あり、ここでは1978年~1991年にかけて殺人を繰り返したジェフリー・ダーマーゆかりの地をめぐるツアーに参加しています。

ジェフリー・ダーマーゆかりの地をめぐるツアー
Netflix『世界の“現実”旅行』 予告より
ジェフリー・ダーマーゆかりの地をめぐるツアー
Netflix『世界の“現実”旅行』 予告より

殺害現場で知られるオックスフォード・アパートメントの前では、ダーマーの霊を呼び寄せる、という場面がありますが、やはり心霊現象に懐疑的な監督は、呆れてものが言えない様子。

また、ニューオリンズでは真のヴァンパイアを名乗る一家を訪問。そこで実際に行われる吸血行為は、噛みつくのではなく、背中にメスのようなものを刺しそこからあふれ出る血を吸うというもの。 痛々しいものがあります。

「血を吸わないとどうなる?」という監督の質問に対して、ヴァンパイアは「髪に元気がなくなる」と返答。

ドクター・スリープ』という映画で同じようなセリフがあったことを思い出しました。

6位 『第1話:ラテンアメリカ〜元殺し屋、YouTuberになる〜』

ラテンアメリカでは、これまでさまざまな作品で映像化されてきた麻薬王パブロ・エスコバルにまつわる聖地を訪れ、パブロ・エスコバルと関係の深い人物であり、彼が最も信頼した殺し屋であるジョン・ハイロ・ベラスケス、通称『ポパイ』へのインタビューにも成功しています。

殺し屋であるジョン・ハイロ・ベラスケス、通称『ポパイ』
Netflix『世界の“現実”旅行』 予告より
殺し屋であるジョン・ハイロ・ベラスケス、通称『ポパイ』
Netflix『世界の“現実”旅行』 予告より

ポパイは22年の刑期を終えてから、YouTubeに動画をアップし現地ではスターのような存在になっていました。 人気を集めるだけあって、その人柄はかなり独特……チャーミングでユーモアもあります。

しかし、そのような人柄とは裏腹に、多くの人々を殺害したという緊張感も終始漂っており、ポパイが銃を手にするシーンには、観ていてもヒヤッとするものがあります。

なお、ポパイは撮影後、2020年2月に胃がんで亡くなっています。

※編集注: ポパイ氏のYoutubeチャンネルとその動画は2020年7月現在 閲覧できなくなっています。

また、カトリック教会などの伝統宗教から悪魔崇拝だと非難されている集団『サンタ・ムエルテ(死の聖母)』にも迫ります。

オカルトを全く納得できない監督ですが、この宗教に多くの信者がいる理由は誰でも納得できるもの……「行ってみたら楽しい場所だった!」の典型的なエピソードです。

画像 Netflix『世界の“現実”旅行』 予告より
画像 Netflix『世界の“現実”旅行』 予告より

5位 『第5話:ヨーロッパ〜世界屈指のゴーストタウンに潜入せよ〜』

ここからのエピソードでは監督が体を張って、さまざまな『死と破壊』にまつわる場所に突撃する内容が多くなっていきます。

イギリスの、のどかな田舎町リトルディーンに佇む『犯罪博物館』という物騒な施設では、支配人に突撃取材。 この博物館には、拷問や虐殺といった事件にまつわる道具などが展示されおり、人の皮で作ったランプシェードをはじめとして、おぞましい品々がところ狭しと並んでいます。

支配人の親友であるという囚人 チャールズ・ブロンソン(※)と電話で会話するシーンも見どころ。

※注:本名マイケル・ゴードン・ピーターソン。映画俳優と同名の『チャールズ・ブロンソン』は、地下ボクサー時代のリングネーム。 過去にニコラス・ウィンディング・レフンによって伝記映画『ブロンソン』が制作されている。 ブロンソンを演じるのは『ヴェノム』のトム・ハーディ。

次に訪れるキプロス島では、あるゴーストタウンを調査。1974年、トルコ軍の上陸により分断されたキプロス島には、境界線付近に『ファマグスタ』という避暑地があり、紛争の影響で、現在ではゴーストタウンとなってしまいました。

ファマグスタ周辺では銃声が聞こえたり、異常な監視があったりと、穏やかではない雰囲気が続き、ついには取材中、突然現れた警察に、監督が連行されるという場面も。

その後も監督は観光客を装い、海側からファマグスタへの境界線を越えようと試みます。 そこでもまた見つかってしまい、今度こそただでは済まない様子……果たして監督の運命は?!

4位 『第6話:東南アジア〜ミイラの清拭にカルチャーショック〜』

東南アジアでは、戦争や虐殺のあったカンボジアや、2015年に民主主義となったミャンマーなどを訪れます。

Netflix『世界の“現実”旅行』海外予告より
ミイラの清拭にカルチャーショック
ミイラの清拭にカルチャーショック
Netflix『世界の“現実”旅行』海外予告より

カンボジアは金さえ積めば何でもできると言われている国で、『射撃場で金を払えば、生きた動物を的にできる』という物騒な噂があります。監督はその真偽を確かめようとしますが……。 この場面は、8話を通してもっともモヤモヤする結末となっていました。

インドネシアのトラジャでは、死に対して独特の価値観をもつトラジャ族を取材。ここでは村人が亡くなると、すぐに埋葬せず、特別な樹脂により2年“休ませる”のだそうです。土を掘り返してミイラを清拭するような場面も見られます。

また、生贄として動物を殺すなど、見るに堪えないシーンが続きますが、それがトラジャ族にとっての日常であり、彼らの死生観を否定することはできません。

『世界の“現実”旅行』のダーク・ツーリズムは、こうした文化的な衝撃もあり、学べることもたくさんあるのです。

3位 『第7話:アフリカ〜殴り合いや傷つけ合いも儀式?!〜』

アフリカでは、監督が過激な儀式に強引に参加したり、未だ白人分離主義が根づく地域を取材したりと、タブーを冒すシーンが続出します

Netflix『世界の“現実”旅行』海外予告より
殴り合いや傷つけ合いも儀式?!
殴り合いや傷つけ合いも儀式?!
Netflix『世界の“現実”旅行』海外予告より

ブードゥー教で有名な西アフリカを訪れると、ブードゥー教の儀式を初体験。 ここでもオカルトや心霊現象に難色を示す監督だけに、怪訝そうな様子です。

ブードゥー教には良いものと悪いものがあるとのそうで、悪いブードゥー教の儀式は非常に過激。 儀式に参加している人々はトランス状態となり、殴り合いやナイフでの傷つけ合いが始まります。 人々がためらいもなく傷つけ合う中で、監督も腕に切り傷を負っています。

また、徹底した白人分離主義を貫く『スイドランダー』という集団にも密着。 彼らは、南アフリカの崩壊は黒人によって引き起こされるという予言を信じており、大規模な避難計画を立てています。

荒唐無稽な話ですが、彼らにとっては疑う余地のない事実であり、いつでも避難できるような訓練をしている様子が映し出されています。 監督はこの避難訓練に参加し、「まるでピクニックのようだ」と述べています。

2位 『第8話:再びアメリカ〜地獄を見たいならここに行け〜』

最終話で再び訪れたアメリカでは、1969年のテート・ラビアンカ殺人事件で知られるチャールズ・マンソンにまつわるツアーに参加します。

Netflix『世界の“現実”旅行』海外予告より
チャールズ・マンソンにまつわるツアー
Netflix『世界の“現実”旅行』海外予告より
再びアメリカ〜地獄を見たいならここ行け〜

また、世界一の恐怖を味わえることで有名な『マッケイミー屋敷(Mckamey Manor)』についても取材しています。

マッケイミー屋敷は、ネット上で『サバイバルホラー』『世界一恐ろしいお化け屋敷』などと紹介されており、入館前には健康診断を受けなければならないほど過激であるとも言われています。

運営するのは23年間軍隊に所属し、拷問・洗脳のスペシャリストであるラス・マッケイミー。 監督は彼がお化け屋敷を運営する動機について迫ります。

その過程で、監督は男性とペアで『マッケイミー屋敷』へ入ることになりますが、『世界一恐ろしいお化け屋敷』とされるこの屋敷に踏み入るためには、40ページにも及ぶ契約書を一読し、サインしなければなりません。

残虐な殺人鬼に追われ、拷問されるこのお化け屋敷ですが、結果として監督は屋敷へ出発すらしないまま、開始数分でギブアップ。 「怪我よりも正気を失いそうで怖い」というコメントが、事態の深刻さを物語っていました。

なお、このマッケイミー屋敷は、その過激さゆえに、閉鎖を呼びかける署名運動も行われているそうです。

1位 『第4話:中央アジア〜オカルトや犯罪より怖いもの〜』

第1位は、カザフスタン・トルクメニスタンなどをめぐった中央アジアです。

カザフスタンセメイは近くに核実験場があったことから、現在も住民は放射能の影響で苦しんでいます。 監督は現地でガイドを雇い、地下核実験で造られたチャガン湖を訪れますが、ここでは『水面なら放射能の影響が少ない』という理屈で、そこで泳いだり、湖で取れた魚を食べたりしていました。 ここでも、監督の難色の示しっぷりが見もの。

さらに続いて、この『世界の“現実”旅行』で一番得体の知れない恐怖を感じた、トルクメニスタンのアシガバードでのエピソード。

トルクメニスタンは中央アジアの北朝鮮と呼ばれるほどの独裁国家として知られています。 監督はここでの『マーシャルゲームアーツ大会』開催に合わせ、スポーツ記者として入国します。

ところがこの『マーシャルゲームアーツ大会』は大規模な大会にもかかわらず、観客を含めて人がほとんどいないのです。 開会式の規模もオリンピックさながらのスケールですが、その資金の捻出方法についても疑問が湧いてきます。

Netflix『世界の"現実"旅行』海外予告より
『マーシャルゲームアーツ大会』
『マーシャルゲームアーツ大会』
Netflix『世界の”現実”旅行』海外予告より

また、宿泊したホテルで盗聴を疑う監督が、トルクメニスタンの大統領に媚を売りながら、血眼になって盗聴器を探す姿は見どころです。

また、アシガバードには白大理石で建てられた建造物が多数存在し、ギネスにも認定された巨大観覧車も見ることができます。 これらは観光名所として造られたのではなく、大統領のギネス記録に対する情熱、つまり権力の象徴として建てられたもの。 その事実を知ると、美しい建造物も権力欲のかたまりにしか見えなくなってしまいます

なお……監督はこの回で大怪我をしますが、それはダークツーリズムとは関わりのない理由です。

自宅に居ながら、ダーク・ツーリズムを味わえる秀作

行く先々で大変な目に合うデヴィッド・ファリアー監督
Netflix『世界の”現実”旅行』海外予告より

筆者の独断と偏見で各話にランクづけをしましたが、Netflixで閲覧できる『世界の“現実”旅行』は1話が40分程度という短編であるにもかかわらず、ここでは書ききれないほどのさまざまなエピソードが詰まっています。

また、デヴィッド・ファリアー監督の自然体なキャラクターも見どころのひとつと言えるでしょう。 無鉄砲……というより、基本ナーバス嫌なときは普通に顔に出してしまいます。 いい意味で彼の人間味が伝わってくるので、観ていて不快な気持ちは少なく感じました。 これが、ただ向こう見ずなお馬鹿キャラだったら、3話くらいで飽きていたかもしれません。

デヴィッド・ファリアー監督
「人生の奇妙な面に惹かれる」と言う、デヴィッド・ファリアー監督
Netflix『世界の”現実”旅行』海外予告より

余談ですが、デヴィッド・ファリアー監督によるドキュメンタリーとしては、2016年の『くすぐり (TICKLED)』という作品もあります。 内容は監督がが男性同士の『くすぐり我慢大会』に興味をもち、面白半分で取材したところ、暗い闇にどんどん引き込まれて行く……といったもの。

こちらもかなりユニークな内容なのですが、2020年7月現在、NETFLIXでの配信は終了していまっています。 興味のある方は英語版などのDVDなどで探してみてはいかがでしょうか。

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TICKLED – Official Trailer – A Documentary About Competitive Endurance Tickling
ドキュメンタリー映画『くすぐり』海外予告

ドキュメンタリー『世界の“現実”旅行』に見るダークツーリズムのヤバい魅力。

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