Bluetoothのコーデック解説 音質を左右する圧縮・伝送規格について
Bluetoothのコーデック解説 音質を左右する圧縮・伝送規格について

Bluetoothコーデックの種類と性能 音質を左右する圧縮・伝送規格について一覧・解説

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Bluetooth(ブルートゥース)のスペックで見かけるコーデック(CODEC)とは、Bluetooth経由で音声を伝送する際に使用される音声の圧縮・伝送技術を指します。

ワイヤレスイヤホンのように、Bluetooth経由で音データを再生する機器の場合、このコーデックによって音質や遅延、省電力性能などに違いがでます。

Bluetooth コーデック一覧表

現時点で一般的なBluetoothコーデックについて、まずは一覧表にまとめました。

CODEC名 概要
SBC
(Subband Coding)
全てのA2DP対応デバイスでサポートされるオーディオコーデック。
AAC
(Advanced Audio Codec)
SBCの次に登場した標準的コーデック。効率的な音声圧縮を行える。
aptX
(aptX Classic)
遅延が少なく、高音質。
aptX Low Latency
(aptX LL)
aptXの低遅延バージョン。レイテンシ(=遅延)40ms未満を実現。
aptX HD aptXの高解像度(ハイレゾ)版。24ビットに対応。
aptX Adaptive ゲーミングや動画再生も考慮した次世代コーデック。
aptX Voice 通話品質に最適化されたaptXの派生コーデック。
aptX Lossless CD品質のロスレス伝送を実現。
LDAC ソニーが開発した高解像度オーディオの圧縮と伝送のためのコーデック。相応に遅延は大きい。
LHDC Huaweiが提唱するハイレゾ&低遅延コーデック。
Samsung Scalable Codec Samsungが独自開発した可変ビットレートコーデック。
LC3 SBCと比べて半分程度の低ビットレートで⾼⾳質を実現。省電⼒性にも優れる。
LC3plus Bluetooth LE Audio向けLC3を拡張した上位仕様。

Bluetoothコーデック詳細解説

前述の表に記載のコーデックについて、スペックと共により詳細な解説をまとめました。

SBC (Subband Coding)

SBC
  • ビット精度: 4~16bits
  • サンプリング周波数: 16kHz~48kHz
  • ビットレート: 約345kbps (Joint Stereo)
  • 遅延: 150~250ms
  • 仕様策定:Bluetooth SIGがA2DPプロファイルの必須コーデックとして定義

Bluetoothオーディオ伝送の原点であり、シンプルなコーデック。ロスのある圧縮方式ですが、適切なビットレートでエンコードされれば、多くのリスナーにとって十分な音質を提供できます。A2DPのマンダトリー(必須)コーデックとして定義されているため、すべてのA2DP対応デバイスでサポートされています。

AAC (Advanced Audio Codec)

  • ビット精度: 16bits
  • サンプリング周波数: 最大 96kHz
  • ビットレート: 約128~320kbps(装置・プロファイルによっては128kbps以下も)
  • 遅延: 約150ms
  • 標準化:ISO/IEC 14496-3(MPEG-4 Part 3)および ISO/IEC 13818-7(MPEG-2 Part 7)
  • 開発参加:AT&T、Dolby、フラウンホーファー研究機構、ソニー

SBCの次に選択肢となった標準的なコーデック。デジタルオーディオの圧縮のために作られた方式。効率的な音声圧縮を行う事ができ、SBCよりも高い音質と評価されることが多い。iOSデバイスやAndroidデバイスなど、多くのBluetooth対応端末でサポートされている。

aptX (aptX Classic)

aptX (aptX Classic) Logo
  • ビット精度: 16bits
  • サンプリング周波数: 44.1kHz、48kHz
  • ビットレート: 352 kbps(44.1 kHz時)/384 kbps(48 kHz時)
  • 遅延: 約 100~130ms
  • 開発元:Qualcomm(旧CSR)

1987年頃に開発されたコーデック。Queen’s University Belfastで開発された技術を 旧CSR(現Qualcomm)が取得し製品化。2009年頃からA2DPオプションに。高品質ながら、低遅延という特性を持ちます。

aptX Low Latency (aptX LL)

aptX Low Latency (aptX LL) Logo
  • ビット精度: 16bits
  • サンプリング周波数: 44.1kHz, 48kHz
  • ビットレート: 352 kbps(44.1 kHz時)/384 kbps(48 kHz時)
  • 遅延: 約40ms
  • 開発元:Qualcomm

aptXの低遅延バージョンとして2012年頃に登場。ゲームや動画視聴など、映像と音声の同期が求められるシーンに適する。スマートフォンなど汎用機器にはあまり採用されませんでした。

aptX HD

aptX HD Logo
  • ビット精度: 24bits
  • サンプリング周波数: 44.1kHz、48kHz
  • ビットレート: 576kbps
  • 遅延: 約100~130ms
  • 開発元:Qualcomm

2015年頃に登場した、aptXの高解像度(ハイレゾ)バージョン。24ビットの音楽品質をサポートし、更に向上した音質を実現している。

aptX Adaptive

aptX Adaptive Logo
  • ビット深度: 16bit/24bit 可変対応
  • サンプリング周波数: 44.1kHz, 48kHz, 96kHz
  • ビットレート: 可変279〜420kbps
  • 遅延: システム遅延 約80 ms
  • 開発元:Qualcomm

2018年頃に登場。ゲームプレイや動画再生も考慮し、干渉状況や用途に応じてビットレートと遅延を動的に調整する次世代コーデックとして注目されました。

aptX Voice

  • ビット深度: 16bits
  • サンプリング周波数: 16kHz、32kHz
  • ビットレート: 64~192kbps
  • 遅延: 約50~80ms
  • 開発元:Qualcomm

aptX Adaptiveのサブセットとして2019年に登場。通話品質に最適化されたコーデック。16kHz/32kHzのサンプリングでクリアな音声伝送を実現し、ハンズフリー通話や会議用途に適しています。

aptX Lossless

  • ビット深度: 16bit
  • サンプリング周波数: 44.1kHz (CD品質 ロスレス)※
  • ビットレート: 最大1.1〜1.2Mbps
  • 遅延: プラットフォーム依存 (非公開)
  • 開発元:Qualcomm

2022年に発表されたコーデックで、CD品質の真のロスレス伝送ができる。Snapdragon Sound™対応機器で、かつBluetooth 5.3以上の環境が必要。

※通信品質が悪い時などは24bit/96 kHzモードの互換モードに

LDAC

LDAC Logo
  • ビット精度: 16~24bits
  • サンプリング周波数: 最大 96kHz
  • ビットレート: 330/660/990kbps (3モードから選択)
  • 遅延:大(数値公開なし)
  • 開発元:ソニー

2015年にソニーが開発した高解像度オーディオの圧縮と伝送のためのコーデック。高ビットレートでの伝送をサポートしたハイレゾ対応。ソニー製のデバイスやAndroid 8.0以降のデバイスへの搭載など、高品質志向の製品での導入が進む。

LHDC

  • ビット精度: 16~24bits
  • サンプリング周波数: 最大96kHz
  • ビットレート: 330/660/990kbps (3モードから選択)
  • 遅延:大(数値公開なし)
  • 開発元:Savitech(HWA Alliance/Hi-Res Wireless Audio Union メンバー)

Huawei(およびHWAアライアンス)が提唱するハイレゾ/低遅延コーデック。Low Latency High-Definition Codec/HWA。24bit対応かつ最大900kbpsまでの高ビットレートをサポートし、ワイヤレス機器でも有線に迫る高音質を実現。

Samsung Scalable Codec

  • ビット精度: 16bits
  • サンプリング周波数: 44.1kHz、48kHz、96kHz
  • ビットレート: 可変88~512kbps
  • 遅延: 約30~80ms(接続状況に応じて動的変化)
  • 開発元:Samsung

Galaxyシリーズ向けにSamsungが独自開発した可変ビットレートコーデックで2018年頃登場。通信品質に合わせて88~512kbpsの範囲でリアルタイムに最適化し、途切れにくい安定した再生を実現。

LC3

LC3 Logo
  • ビット精度: 16~32bits
  • サンプリング周波数: 8kHz, 16kHz, 24kHz, 32kHz, 44.1kHz, 48kHz
  • ビットレート: 16 kbps~320 kbps(フレーム長・チャンネル数・サンプリング周波数に依存)
  • 遅延: 約20~30ms
  • 仕様策定:Bluetooth SIG
  • 開発:フラウンホーファーIIS、エリクソン

2020年に標準化。Low Complexity Communications Codecの略。SBCと比べて半分程度の低ビットレートでも⾼⾳質を実現し、省電⼒性にも優れる。

LC3plus

LC3plus Logo
  • ビット精度: 16~32bits
  • サンプリング周波数: 8kHz、16kHz、24kHz、32kHz、44.1kHz、48kHz、96kHz
  • ビットレート: 16~1000kbps
  • 遅延: 約15~25ms
  • 仕様策定:ETSI TS 103 634(LE Audio 拡張仕様)
  • 開発:フラウンホーファーIIS、エリクソン

2022年頃登場。Bluetooth LE Audio向けLC3を拡張した上位仕様。32bit/96kHz対応や1Mbps超のビットレートまでサポートし、低遅延も両立。

まとめ

当ページではBluetoothのコーデックについてまとめてみました。とくにワイヤレスイヤホンの性能表記で多く見かける事が多いものを中心に記載していますが、定期的に更新していく予定です。

このコーデックだけでワイヤレスオーディオ機器の音質や性能を判断できるという単純なものでは無いですが、ひとつの指針として理解しておくと良いのではないでしょうか。

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