【推しの子】、僕の心のヤバイやつ、地獄楽と豊作続きだった2023年春アニメに続き、放送が開始された夏アニメシリーズ。今期も様々なジャンルの人気作が放映されているため、アニメ消化に忙しい日々を送っている人も多いことだろう。当記事ではそんなアニメを彩る楽曲に注目し、作品と照らしながらその魅力を紹介していきたいと思う。
今期のアニメはもとより、その主題歌とアーティストに興味を持っていただく機会になれば幸いだ。
記事の索引 [索引非表示]
- 1 アニメの音楽にも注目! 2023年夏放映開始アニメ作品のあの曲を深掘り!!
- 1.1 『るろうに剣心 明治剣客浪漫譚』OP曲 『飛天』/Ayase × R指定
- 1.2 『あやかしトライアングル』OP曲 『熱風は流転する』/フィロソフィーのダンス
- 1.3 『わたしの幸せな結婚』OP曲 『貴方の側に。』/りりあ。
- 1.4 『BLEACH 千年血戦篇-訣別譚-』OP曲 『STARS』/w.o.d.
- 1.5 『AIの遺電子』OP曲 『No Frontier』/Aile The Shota
- 1.6 『悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。』OP曲 『救世主』/月詠み
- 1.7 『英雄教室』OP曲『Bravery? Naturally?』/樋口楓
- 1.8 『呪術廻戦 第2期 「懐玉・玉折」』OP曲 『青のすみか』/キタニタツヤ
- 1.9 『ダークギャザリング』OP曲 『幽世』/luz
- 1.10 『アンデッドガール・マーダーファルス』ED曲 『reversal』/Anna
- 1.11 『Helck』ED曲 『スターチス』/saji
- 1.12 『好きな子がめがねを忘れた』ED曲 『メガネゴーラウンド』/スペシャルユニット・マサヨシがめがねを忘れた(小村くんと三重さんとオーイシマサヨシ)
- 1.13 『うちの会社の小さい先輩の話』ED曲 『sugar』/由薫
- 1.14 『ゾン100 〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜』ED曲 『ハピネス オブ ザ デッド』/シユイ
- 1.15 『Lv1魔王とワンルーム勇者』ED曲 『ミライ=テレポート』/ねんね
- 2 おわりに
アニメの音楽にも注目! 2023年夏放映開始アニメ作品のあの曲を深掘り!!
2023年の夏放映アニメは新作だけで60作品もあるが、当記事ではその中から厳選して15作品の楽曲について紹介する事とした。なお、アーティストのMVとアニメのOP/ED映像と両方の動画が公式公開されている場合は、極力どちらも掲載している。
アーティストの楽曲としての側面と、アニメ作品を彩る楽曲としての側面。ふたつのアプローチそれぞれの違いを考察するのも面白いのではないだろうか。
『るろうに剣心 明治剣客浪漫譚』OP曲
『飛天』/Ayase × R指定
名実ともにバズの瞬間最大風速を叩き出した“アイドル”でも知られるYOASOBIのコンポーザー Ayaseと、Creepy Nutsでも活動するラッパーR指定がタッグを組んだ楽曲。Ayaseにとっては自身がボーカルを務めるのみならず、打ち込みではなく生楽器を主体としたロックサウンドであるという点でも稀有な楽曲といえる。
なお『るろ剣』は1994年に連載が始まった少年ジャンプの漫画作品。1996年には一度アニメ化したものの、2023年放映の今期は新アニメとして制作される事が話題となった。そんな中、この『飛天』に関しても令和にあっての『るろ剣』の在り方を感じさせる、ラップ&ロックの新機軸で構成されたアップテンポな構成。
タイトルが主人公である緋村剣心の剣術である『飛天御剣流』から取られているのはもちろんだろうが、歌詞の端々で作品世界を想起させる部分もり、アニメソングとしての完成度も高い。聞き込むほどにこの楽曲の良さは染みてくるだろう。
『あやかしトライアングル』OP曲
『熱風は流転する』/フィロソフィーのダンス
超有名ラブコメ作品『To LOVEる』の作者 矢吹健太朗氏によるバトルコメディー。ちなみにアニメの放送に関しては実は2023年の前半に行われていたものの、第5話時点で新型コロナの感染拡大を理由に休止を発表。7月になり改めて再放送されることとなった作品。
今作のメインテーマを歌うのは5人組のアイドルグループ、フィロソフィーのダンス(通称 フィロのス)。元々フィロのスは5人がくるくると歌唱を交代するパターンで楽曲が紡がれるのだが、この『熱風は流転する』でもその展開は健在だ。
キャラクター達の動きが目まぐるしく変化するこの作品にピッタリの雰囲気だと言えるのではないだろうか。
『わたしの幸せな結婚』OP曲
『貴方の側に。』/りりあ。
主演に今田美桜、Snow Manの目黒蓮を起用し大成功を記録した実写映画も記憶に新しい、明治を舞台としたラブストーリー『わたしの幸せな結婚』のアニメver。心を閉ざした軍人と孤独な少女が政略結婚し、少しずつ愛を育んでいく・・・そんな、陰と陽が混在した一風変わった恋愛物語が見所の本作。そのオープニングテーマに抜擢されたのは、TikTokの弾き語り動画を経て注目を浴びたりりあ。の歌唱する『貴方の側に。』だ。
作品の難しい恋模様を表すかのような……時には相手と釣り合うかを悩み、時には疑問符でもって愛を確認する……ヒロインの心情に迫るラブソングである。
透明感のある歌声とメロディをベース、作品の世界を色鮮やかに表現したオープニング映像は、作画、色彩、そして演出も含めて美麗のひと言につきる。
オープニング映像だけでひとつの作品とさえ言えるその完成度に、思わず息をのんで見入ってしまう。ぜひ楽曲のフルコーラス版アニメ映像なども作ってほしいところだ。
『BLEACH 千年血戦篇-訣別譚-』OP曲
『STARS』/w.o.d.
こちらも週刊少年ジャンプで連載されていた、誰もが知る超有名『BLEACH』待望の新作。原作は全74巻、期間にして約15年に渡って続いてきた長寿作品であり、今シーズンも原作をゆっくりと沿う形で進行している。しかしながら物語が佳境に入る重要部であることから、展開はよりシリアスかつバトル多めの展開。
そしてそのオープニングテーマに抜擢されたのは、ロックバンドw.o.d.(ダブリュー・オー・ディー)の楽曲『STARS』だ。彼らにとっては初のアニメタイアップとなるが、この曲は彼らの色を全く変えることない、低音が鳴り響く無骨なロックンロールソング。しかしこれこそがBLEACHの世界観に合致しているようにも思える。今後の彼らの活動的にも、今後の運命を左右するであろう重要な楽曲であろう。
ただし、彼らの公式YouTubeチャンネルで公開されている上記のMVは彼らの過去曲を交えたメドレー的な展開をみせる。これはマーケティング的な意味合いが強いのであろうが、ギターリフとサビの盛り上がり、楽曲全体のグルーヴ感が秀逸な『STARS』をもっとしっかり楽しみたいという人も多いのではないだろうか。
フルコーラスで楽しみたいという人は、これを期に彼らのリリースを掘ってみるのもよいのではないだろうか。
『AIの遺電子』OP曲
『No Frontier』/Aile The Shota
人権を持ったヒューマノイドを当たり前に受け入れ、 共に暮らしている2世紀後半。主人公はロボットの病を治療する新医科の医者として、人とAI(人工知能)の共存がもたらす新たな病に向き合っていく……というストーリーが、この『AIの遺電子』という作品。
私たちの現実世界でもChatGPTの普及や、AIが人間の機能を超えてしまうシンギュラリティの懸念などが叫ばれる中での、このアニメの動向には注目したいところだ。
そんな本作の主題歌に選ばれたAile The Shotaの『No Frontier』は、AIと人間の境界線を問い掛ける歌詞をオートチューンがかったボーカルで届けるという、彼にとっては新たなアプローチの楽曲だ。ふたつの生命体に思いを巡らせつつ、隅々まで楽しみ尽くしたい1曲。YouTubeでは歌詞の日本語字幕をONにして楽しむと、よりその世界観に没入できるだろう。
『悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。』OP曲
『救世主』/月詠み
一般人が別世界へ飛ばされ活躍する……いわゆる『異世界転生』モノが人気になって久しいが、その中でも本作は主人公がラスボスとして君臨するという内容の作品。主人公がラスボス、つまり最終的に倒されるべき存在としての立場であるだけに、その物語には陰の部分が少なからず含まれている。
オープニングテーマとして起用されたのはボカロPとして知られるユリイ・カノンによる音楽プロジェクト『月詠み』の楽曲『救世主』。
ボーカルYueの時折「おっ!」と思わせる心情を曝け出すようなハスキーな歌声も相まって、物語とのシンクロ率も高い楽曲に仕上がっている。
楽曲のMVとアニメOPを見比べると、同じ楽曲でも映像によってその印象が大きく変わる事にも気づく。この対比もなかなか興味深いところではないか。
『英雄教室』OP曲
『Bravery? Naturally?』/樋口楓
かつて世界を救った勇者が一般人となり『フツーの生活』を目指してスクールライフを謳歌しようと奮闘する作品『英雄教室』。同作品のOPを歌うのはにじさんじ所属、VR関西に住む高校2年生のVTuber 樋口楓。
音楽活動以外にも実況動画の配信も行っている彼女だが、笑い声や仕草など普段の彼女を知っている人ほど、いい意味でそのイメージと歌声のギャップに驚かされるであろう。
一般人としての生活が可能になった主人公と、画面の中でVTuberとして生きる樋口楓の存在の対比もまた、この作品に合ったタイアップと言えるかもしれない。
『呪術廻戦 第2期 「懐玉・玉折」』OP曲
『青のすみか』/キタニタツヤ
言わずと知れた令和の大ヒット作『呪術廻戦』のアニメ第2期。詳細は伏せるが、今期は物語が大きく動くと同時に、心にグッと来る場面が多く、人によっては精神的な浮き沈み多発……という激動のシーズンとなるだろう。
今回オープニングテーマに選ばれたキタニタツヤの『青のすみか』は、本作のタイアップとしてうってつけ、新たな未来を希求する力に満ちたロックチューン。
サビの『今でも青が棲んでいる 今でも青は澄んでいる』というフレーズには、どんな状況下でも希望を捨てない主人公達の精神性を連想せざる。ファンなら刺さること間違いない名曲だ。
『ダークギャザリング』OP曲
『幽世』/luz
「怪談系? それともカワイイキャラクターが織り成すミステリー?」……そんな声も聴こえてきそうな作品『ダークギャザリング』は、今期のアニメの中でも極めて異質な存在の新感覚オカルトホラー作品だ。
楽曲はかねてより歌い手シーンで頭角を現してきたluz(ルス)が担当。楽曲制作者に親交の深いボカロP すりぃを招き、底に闇を巣食うかの如きダークな楽曲が提供されている。
luzの艶のあるボーカルを中心に置きつつ、オカルトホラーな『ダークギャザリング』の雰囲気にも合致させたこの楽曲がどう届いていくのか楽しみだ。
『アンデッドガール・マーダーファルス』ED曲
『reversal』/Anna
第22回鮎川哲也賞を受賞した、青崎有吾による同名作品をアニメ化した本作。シャーロック・ホームズや切り裂きジャックといったキャラクターたちがバトルを繰り広げる、ミステリー作品である。
本作でピックアップするのはエンディングテーマ。中性的なボーカルが特徴的な女性シンガーAnnaが提供。深いところから掬い上げるように響く彼女の声は、作品のシリアスさと上手くマッチしている。
楽曲のタイトルに“reversal”は直訳すると『逆転』という意味。この歌詞についても謎を次々に解決する主人公をイメージしているように感じてしまう。楽曲についても色々と考察や深読みをするのも面白いだろう。
『Helck』ED曲
『スターチス』/saji
「人間 滅ぼそう。」と書かれた衝撃的なビジュアルポスターが話題の『Helck』。人間でありながら人間を滅ぼそうとするヘルクと、彼をサポートするキャラクターたちの旅路を描く冒険活劇だ。
そのエンディングテーマを歌うのは、かつてphatmans after schoolというバンド名で活動しつつも、新たな名前sajiとして活動しているロックバンドだ。
ボーカルのヨシダタクミは公式サイトで次のように綴っている。
作品の結びとなるエンディングテーマを担当させて頂くにあたり、本編との緩急をつけたいなと思いました。静かで儚くもエモーショナルな歌、歌詞は主人公の心に触れたような内容になっています。
Helck アニメ公式サイト MUSICページより
僕たちsajiは作品に寄り添った主題歌というものを目指して歌っており、僕自身大の漫画好きであり、原作へのリスペクトというものを第一に考えているので、皆さんの思い出に残る楽曲になってくれたら幸甚でございます
作品に寄り添ったという、サウンドはもちろん、謎に包まれた主人公・ヘルクの心情にも迫ったものであろうその歌詞にも目を通してもらいたいところ。
『好きな子がめがねを忘れた』ED曲
『メガネゴーラウンド』/スペシャルユニット・マサヨシがめがねを忘れた(小村くんと三重さんとオーイシマサヨシ)
ツイッターのバズから連載へと繋がった、めがねを毎回忘れるヒロインと、純粋無垢な主人公との緩やかな進展を描く恋愛作品のアニメ化。
この略称『好きめが』の主題歌を歌うのはアニメ業界ではお馴染みのオーイシマサヨシ!……が、今回は主人公&ヒロインの主演声優と共演する特別ユニットとしてクレジット。
思わず口ずさんでしまう『めがねがない めがねがない♪』のフレーズとキャッチーなサウンド、ついつい声を上げたくなるようなコールなど、楽曲に引き込む演出も○。くっつきそうでくっつかない、でも幸せな関係・・・そんなふたりを体現したメリーゴーランドのような名曲だ。
『うちの会社の小さい先輩の話』ED曲
『sugar』/由薫
こちらもツイッターの大拡散を経て、重版出来の連載となった話題作『うちの会社の小さい先輩の話』。何でも許容してくれる小柄な先輩と、平々凡々な主人公との日常を描くイチャラブ作品だ。
物語的な起伏というよりは、どちらかと言えばふたりの甘~い展開を楽しむことに特化した本作。そんなアニメ化のエンディングテーマに起用されたのは若手シンガーソングライター・由薫による『sugar』だ。
こちらもアニメのイメージに上手く寄り添った楽曲になっており、砂糖のように甘い歌詞が、彼女の中性的な歌声と共に振り撒かれている。由薫にとっては久々にポップに振り切った楽曲でもある。
ラブコメ・アニメ作品ならではの雰囲気を楽しみつつ、放映の締めくくりにはこの楽曲で心地よい余韻を味わえる。
『ゾン100 〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜』ED曲
『ハピネス オブ ザ デッド』/シユイ
超絶ブラック環境で社畜同然の日々を過ごしていた主人公。しかし世界はある日ゾンビまみれに。そもそもドン底にいた主人公は「むしろもう出社しなくて良いんじゃないか?」「いつか自分もゾンビになるだろうし……」と考えた末、タイトルにもある『ゾンビになるまでにしたい100のこと』を実行に移すため、超絶前向きに生き始めるという一風変わったゾンビパニック作品。
本作のエンディング曲を担当するのは、新進気鋭のネット発アーティスト、シユイ。将来的な死を受け入れることであえてボジティブに生きる。そんな物語の内容を汲み取ってか、タイトルも『ハピネス オブ ザ デッド』、歌詞のイメージは作品に合っているし、サウンド的にも実にアッパーだ。
2023年8月に出演が決定している『SUMMER SONIC 2023』は、シユイにとって初の野外フェスだが、大きな盛り上がりとなりそうだ。
『Lv1魔王とワンルーム勇者』ED曲
『ミライ=テレポート』/ねんね
魔王が勇者に倒されて10年。幼い姿で復活した魔王が勇者に復讐を果たしに行くも、そこにいたのは自堕落な生活を送る落ちぶれた中年男だった……! という、想像力を掻き立てる導入から始まる今作品。
エンディングテーマを担当するのは、いわゆる『歌ってみた』動画で注目を集めたシンガーソングライター、ねんね。
物語上ではその後、勇者の自堕落な姿を見かねた魔王が生活の世話をするようになるのだが、そんなふたりの180度変化した関係性を表した楽曲。ねんねの透明感のある歌声とのマッチ度も聴きどころの、極上のポップソングだ。
おわりに
以前の春アニメの楽曲を紹介した記事にも記した通り、アニメの主題歌はどれもタイアップ先のストーリー展開を踏まえて制作されている事が多くなってきた。
ゆえに作品をしっかり観ている人ほど、楽曲を通して新たな発見や考察をすることもできる……という本編にも勝るとも劣らない重要な要素のひとつという場合も多い。
今回紹介したのは、今期2023年の新作夏アニメ60作品のうちの15作品。しかもそのOPかEDいずれかだ。つまり、夏アニメに提供された楽曲総数から考えるとほんの一部分に過ぎない。そして言うまでも無く、紹介する事ができたものの他にも素晴らしい楽曲が沢山あるのである。
この記事が切っ掛けで、アニメのテーマ曲にも注目する人達が少しでも増え、結果としてアーティスト達をより深く知る切っ掛けになれば幸いだ。