SNS投稿から単行本化、漫画家『浦部はいむ』さんインタビュー。 これまでと、これから。
画像:[Amazon] 『僕だけに優しい君に』 (MeDu COMICS)/ あ、夜が明けるよ。 (ビームコミックス/KADOKAWA)

漫画家『浦部はいむ』さんインタビュー SNS投稿から単行本化。これまでと、これから。

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昨今、インターネット……TwitterやInstagramなどのSNSで作品を発表し、デビューするクリエイターが増えています。

今回は、Twitterに漫画をアップロードしたことが大きなきっかけとなり、単行本 『あ、夜が明けるよ。 (ビームコミックス/KADOKAWA) 』が2019年5月11日に発売。 さらに2019年6月28日には、コミックサイトCOMIC MeDu連載の作品『僕だけに優しい君に (MeDu COMICS)』の単行本発売を控えている、新進気鋭の漫画家、浦部はいむさんにお話を伺いました。

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浦部はいむさん(漫画家)インタビュー

浦部はいむ氏 自画像
浦部はいむさん 自画像

――この度はインタビューに応じていただきありがとうございます。早速ですが、浦部さんは漫画家になるまでは、どのような事をされてきたのでしょうか。

浦部はいむ さん(以下 浦部):
実は自分は、15歳の頃に高校を中退してしまっていて。
それからは工場で約4年間働いてたのですが、このままずっとここに居たくないという気持ちがありました。

でも実際にほかのところへ面接に行くと、最終学歴が中卒であることを指摘されることが度々あったんです。自分自身も高校卒業はしておきたかったので、19歳から定時制高校に通いはじめました。学校が終わると居酒屋でバイト、という生活になりましたが、何もかもがうまくいかずに、すごく落ち込んでしまって。自暴自棄になって、居酒屋のバイトも結局辞めてしまいました。

そこで改めて「自分が何かを人にほめられたことがあっただろうか」と考えたら、小学生時代の担任の先生が絵がうまいと自分をよくほめてくれていたことを思い出して。

昔から絵も漫画も描いていたのですが、ある日親から「オタクな子どもはイヤ」と言われてから、描くことからは遠ざかっていたんですよね。でも、自分の絵を担任の先生はほめてくれていたし、描いていた頃は自分自身も楽しかったなと気がつきました。

――生きづらい中で、小学生時代の恩師の当時の温かい接し方が新たな道を歩む第一歩になったのですね。

浦部:
はい、先生のことを思い出してからは、「何をしてもうまくいかないなら、自分の好きなことを本気でしよう」と考えて。 考えた結果、自分の好きなことは、やっぱり絵や漫画を描くことだったので、久しぶりに絵をたくさん描くようになりました。

しかし、ネットの求人などを見て、イラストレーターのアルバイト募集に応募し、面接に行きましたが、結局うまくいかなかったんです。

そんな自分自身もどん底の中でしたが、ある日友人が「自殺しようと思う。死ぬ前に会ってほしい」と連絡してきました。そして会った時に、友人に自分の描いた漫画を読んでもらったら、「絶対漫画家になれるから、漫画家を目指したほうがいいよ」と力強く言ってくれたんですね。

……普段、友人は毒ばかり吐いているようなタイプの人だったので、そんな人がこんなに言ってくれるのは不思議だし、きっと本心なんだろうなと感じ、漫画を本気で描いてみようかなと、背中を押されました。ちなみにその友人は、今では直接の交流はないのですが、幸い生き続けてくれているようです。

Twitterアカウントを作り、漫画投稿も始める

――恩師の言葉の次に、ご友人が背中を押してくれたと。

浦部:
はい。その後は、20歳の頃に漫画専用のTwitterアカウントを作りました。次に、38pの読み切り作品『100個の願い』を完成させて『ジャンプルーキー』(※マンガ投稿サービス)にアップロードしたところ、Twitterのアカウントを何人もの方がフォローしてくれて、「漫画読みました! 面白いです!」といった感想をいただけました。

浦部はいむさんが、初めて書いた読み切り漫画『100個の願い』

中にはもうプロとして活躍されている漫画家の方までが自分のアカウントをフォローしてくれて、Twitterのタイムラインが漫画の情報でいっぱいになりました。 漫画を描いている方々はいろいろなことを教えてくれますし、つぶやきを見ると、こんな漫画があるんだ、とか、デジタル作画があるんだ、とか、新たな発見もたくさんあって。

じゃあまずはクリップスタジオ(※PC用グラフィックソフト)を買ってみよう、といったように、 どんどん漫画を描く環境になってきたんです。 「もっとこんな話を描きたい!」といった気持ちもたくさん出てきて、いつの間にか、本気で漫画家を目指すようになっていました。

――徐々に漫画家を目指す環境になっていったのですね。そこから浦部さんが本格的に漫画家としてデビューするまでの経緯はどのような流れだったのでしょうか。

浦部:
2018年の7月に、オンラインのコミックサイト『COMIC MeDu(めづ)』にメールで作品を応募した結果、『僕だけに優しい君に』を連載できることになったんです。

「MeDu(めづ)」というのは「愛づる(めづる)」からきているそうで、”作り手の「愛」があふれる作品をノンジャンルで届ける”というコンセプトに惹かれたんですよね。連載を持てたことはとてもうれしくて、漫画をもっとうまく描きたい、というよりうまくならなければ、どうしたらいいんだろう⋯⋯と考えていました。

Twitterに投稿した漫画がバズり、単行本に

浦部:
2019年の1月におみくじ占いをしたところ、アドバイスに「過去を振り返ると吉」と書いてあって。 「それなら、昔描いた漫画をアップしよう」とTwitterに3作品ほど載せたところ 、『震えてる??』という作品がバズったんです。

※2019年5月のTweet。最初のTweetは2019年1月21日ごろ

その流れでフォロワーさんが一週間で7000人も増えて、ビックリでした。そうしたら、KADOKAWAのコミックビームから「Twitterにアップした漫画を単行本化しませんか?」とお話がきて、さらにビックリしました。

コミックビームには以前に一度持ち込みをしたことがあったのでとても光栄でした。そこから話が進み、初単行本の『あ、夜が明けるよ。』を発売することができました。

「ずっと漫画を描いている人」と認識されたい

――漫画家を目指している方にとってはシンデレラストーリーですね。浦部さんはこれからどんな漫画を描き、どんな漫画家になりたいと考えているのでしょうか。

浦部:
自分は漫画や映画でも人間の闇、社会の貧相、底辺などをテーマにした作品を好んでいるので、自分自身もそういった事柄を題材としたお話を描いていきたいと思っています。 その中に非日常が起こるような作品を描いていきたいです。グロテスクな作品を読むことも好きなので、残虐描写などはしっかりと描けるように挑戦していきたいですし。 また、女性キャラも描けるようになりたいです。たくさんの人に、「かわいい女の子を描けたほうがいいよ」と、漫画を描きはじめた頃から言われているので。

どんな漫画家になりたいか、については「あっ、この人知ってる! 昔から漫画描いているよね」と、好きじゃなくても名前は知っている、絵は見たことがある⋯⋯と言われるような漫画家になりたいです。 「ずっと漫画を描いている人」と世間に認識されたいし、実際に描き続けたいですね。

――浦部さんの作品特有の魅力を活かしながら、漫画家としての存在自体を確立させたいということですね。そんな浦部さんが。漫画を描くなかでの楽しみ、苦労などあれば教えていただけますでしょうか。

浦部:
自分は、ネーム(漫画の設計図)作成も、作画も全部楽しいです。

ただ、最近は「周りの人に楽しんでもらえる漫画を描かなければ」と、深く悩むようになりました。今は、自分が好き勝手に描いたものが漫画になっているな⋯⋯と、強く感じるようになったんです。今後は商業誌を意識して物語作りに取り組んでいこうと思っています。

単行本のアピールポイント

――なるほど、今後の浦部さんのご活躍がとても楽しみです。それでは、初単行本『あ、夜が明けるよ。』と、2冊目の『僕だけに優しい君に』のアピールポイントを教えていただけますでしょうか。

浦部:
初単行本『あ、夜が明けるよ。』
は、Twitterにアップした漫画を大幅に加筆修正した面白い作りになっています。表紙はホログラム加工がしてあって、虹色に輝くという仕掛けがあるんですよ。

浦部:
本文ページは紺色で、タイトルどおり、夜明け前をイメージしています。ネットでは読めない読み切りも3本、40ページ以上描きました。ほかにはない単行本になっているので、ぜひともお手にとっていただきたいです。

2冊目の単行本『僕だけに優しい君に』は、呪いをかけられている主人公の陸夫と、漫画家志望の友人、タロスケ君のダークファンタジー物語です。 陸夫は呪いがとけるのか、タロスケ君は漫画家になれるのか⋯⋯。 初連載作品なので、ぜひとも紙の本でも読んでいただきたいです。

――どちらもこれまでのファンの方はもちろん、漫画好きの方にとっても読んでいただきたいですね。

人間の闇、社会における貧しさ、行き詰まり感も作品にしていきたい

―― 最後に、浦部さんから、この記事を読んでいる方へコメントをお願いします。

浦部:
自分自身は、漫画家としてはまだまだ未熟だとすごく感じています。

誰かの心に残るお話を作りたいという気持ちもありますが、もっとたくさんの人に読んでもらえる作品を作ることが第一の目標です。自分のTwitterの質問箱に「漫画を描くことは難しいですか?」といった質問が届くことがあって。

だからこそ、「こんな人でも漫画を描けるんだ」というような気持ちが伝わったらいいなと思い、たくさん自分のことを話させていただきました。この記事を読んだ方で、昔の自分のように、ご自身の現状に絶望している人もいるかと思います。そういった方に、自分のことを身近な存在に感じていただけたらうれしいです。

自分は以前は、「不気味だけれどやさしい漫画」を描きたいと言っていたのですが、今は人間の闇、社会における貧しさ、行き詰まり感などをもっと知っていき、作品として描いていきたいと思うようになりました。 これから、たくさんそういった物事、作品や本に触れて、自分の作品を作っていきたいです。

お時間ありましたら、皆さんに自分の漫画を読んでいただけたらうれしいです。これからもよろしくお願いします。

――貴重なお話をありがとうございました。

関連情報・リンクなど

当サイトにて浦部はいむ、コラム連載中!

うらべはいむ『夜明けのはいむ』コラム連載中
うらべはいむ『夜明けのはいむ』コラム連載中
単行本『あ、夜が明けるよ。』は装丁も素敵。
書籍で読みたい一冊
SNS投稿から単行本化、漫画家『浦部はいむ』さんインタビュー。 これまでと、これから。

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