映画『神回』 試写レビュー 2023年7月21日公開作品(監督・脚本 中村貴一朗)
映画『神回』 試写レビュー 2023年7月21日公開作品(監督・脚本 中村貴一朗)

映画『神回』 試写レビュー 2023年7月21日公開作品(監督・脚本 中村貴一朗)

評価:4 

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2023年7月21日より新宿シネマカリテほかにて全国公開される映画 『神回』の事前試写をする機会をいただきました。一足先に試聴した感想をまじえ極力ネタバレを避けて、本作のみどころ紹介を含めたレビューを行いたいと思います。

映画『神回』(監督・脚本 中村貴一朗)
2023年7月21日公開作品 試写レビュー

映画『神回』

当記事で紹介する『神回』は東映ビデオが主催する新人発掘プロジェクト『TOEI VIDEO NEW CINEMA FACTORY』の記念すべき第1回にて。総数309本の企画と脚本から選出された作品。

※第1回では『神回』(監督・脚本 中村貴一朗)のほか、 『17歳は感じちゃう』(監督・脚本 北村美幸)も選出。

あらすじ

夏季休校中の高校。2年生の沖芝樹は文化祭の実行委員となり、打合せのため教室へと向かっていた。夏休みだけに校内に人気は少ない。少し早めに着いた樹は、自分の机で眠ってしまう。もう一人の実行委員、加藤恵那とは13時に待ち合わせていた。恵那に起こされ打合せを始めることに。しかし、打合せを始めてしばらくすると13時に戻ってしまうことに樹だけが気付く。タイムループに陥った樹は、なんとかその状況から抜け出そうと奮闘する。

『神回』予告篇
『神回』予告篇
  • 映画『神回』
  • 【監督】中村貴一朗
  • 【脚本】中村貴一朗
  • 【出演】青木 柚、坂ノ上茜
  • 2023年制作/日本映画/ 88分
  • 【製作】東映ビデオ 制作プロダクション:レオーネ 特別協力:ソニーPCL 【配給】東映ビデオ
  • 映画『神回』 公式サイト

『神回』試写レビュー

309本の企画と脚本から選ばれた作品の映画化ということで、かなり興味深く視聴しました。筆者は普段、海外作品を中心に視聴しているため、国内作品の評価に対しては多少辛口になってしまう傾向があるのですが……この『神回』の感想をひとことで伝えるなら「素晴らしい作品だった」です。

本作は、序盤から何度も何度も同じ状況が映し出されます。5分ごとにループをしている……という状況なのですが、そこは視聴者を飽きさせないように作られています。観ていて、「この次はどうなるのか」と目が離せなくなりました。

教室という閉鎖的な空間で繰り広げられる二人の心理描写、ループの意味と謎、十代が持つ複雑な感情を見事に描写していく見事な内容です。ループの先に待ち受けている結末をスリリングな展開で見せていき、観る者をぐいぐいとストーリーに引き込んでいくパワフルなエネルギー。エンディングのシネマトグラフィーも含め、総じて高いクオリティの作品に仕上がっていると感じました。

これからの日本の映画界を率いていく新しい才能の発掘という意味では、これ以上の逸材と作品はないのではないでしょうか。監督と脚本を務めた中村貴一朗をはじめ、主役を演じた青木柚(沖芝樹 役)と坂ノ上茜(加藤恵那 役)の素晴らしい演技にも称賛を送りたいと思います。

タイムループの謎

文化祭の実行委員となった沖芝樹加藤恵那が、人気のない学校で打ち合わせを始めるところから物語は始まります。

沖芝は居眠りしているところを加藤に起こされますが、その後は5分経つと13時に戻るというタイムループにはまってしまうことに。この奇妙な状況に気付いているのは沖芝だけ。取り乱す彼の行動を不可解に見つめる加藤との間に微妙なギャップが生まれていくことになるのですが……。なぜ沖芝はタイムループにはまってしまったのか?

5分前への逆戻りを繰り返すことで、沖芝がある不可解な事実にに気付いた辺りからタイムループの謎が見えていくことになります。タイムループを使い青春、初恋、一人の男の人生を描いていくスリルのある展開が素晴らしく、どういう結末が待っているのか最後まで見届けたくなるはずです。

十代の頃の複雑な感情や感性

本作の魅力のひとつは十代の持つ複雑な感情を、絶妙に表現している点。沖芝が加藤と二人きりで教室にいる状況から、タイムループの輪に陥る中で彼の持つ感情が徐々に映し出していきます。

十代特有の複雑な感情や性への興味といったものを、美しい部分だけではなく奥深くに潜むどす面も含めて少しづつあぶり出すように描いていく展開に注目。このプロジェクトのテーマである『青春映画』という意味を、見事な視点で描いています。

フレッシュな若手俳優二人に注目!

主役の沖芝樹を演じた青木柚と加藤恵那を演じた坂ノ上茜の演技も、本作の見どころのひとつ。

ここは演じるのをためらったのでは? なんて考えてしまうようなシーンも登場しますが、十代の少年『沖芝樹』の複雑な感情を見事に演じ切りました。ループにはまり平静を失っていく沖芝にうろたえながらも、何バージョンも「ねえ、聞いてる?」と語りかける茜のやさしい声も耳に残ります。

二人の素晴らしい演技と、見事な人選に称賛を送りたいと思います。

TOEI VIDEO NEW CINEMA FACTORYとは

TOEI VIDEO NEW CINEMAFACTORYは『百円の恋』、『愛の渦』、『アンダードッグ』など、公開規模の大小にかかわらずウェルメイドな作品で数々の映画賞を獲得してきた東映ビデオ(株)が立ち上げた、新たな才能を発掘する新プロジェクト。

東映ビデオが培ってきた制作能力(人脈)という財産を生かして、新進クリエイターとともに良質な“劇場映画”を作り、それを未来へと継続していくプロジェクト。企画コンペティションから演技ワークショップ、制作、プロモーション、劇場公開までの全プロセスをクリエイターとともに推進していきます。

第1回【TOEI VIDEO NEW CINEMA FACTORY】は、「青春映画」をテーマに、約3か月の応募期間の中で、309本の企画と脚本の応募があり、その中から中村貴一朗監督の『神回』、北村美幸監督の『17歳は止まらない』の2作品が第1回製作作品に決定いたしました。

総合評価

ストーリー ★★★★★(5)
5分ごとのループを繰り返すストーリーの中に、十代の感情、初恋、一人の男の人生を集約した見事な手腕は目を見張るものがある。ループの謎をスリルのある展開で描き、観る者の興味を最後まで引っ張っていく力強さが素晴らしい。
キャラクター ★★★★(4)
ループの輪にはまって取り乱す沖芝と、ループに気づかない加藤の二人のキャラクターのギャップがおもしろい。ループを重ねるごとに変化していく二人の関係性を、キャラクターにうまく吹き込んでいる。
エンタメ性 ★★★★(4)
5分ごとのループで同じセリフと設定がくり返すなか、異なるバージョンで見せていく観る者を飽きさせいエンタメ性のある仕上がりになっている。
感動 ★★★★(4)
沖芝がループの輪にはまる謎が後半に近づくにつれて判明していき、最後はほろ苦い気持ちにさせられる。青春の切なさと共に十代が持つ複雑な感情をあぶり出し、さまざまな思いを抱かせる。
総合評価 ★★★★(4)
新たな才能を発掘するプロジェクトから選ばれた優秀作品だけに、緻密なプロットと驚きのあるストーリーに魅せられた。青春映画というテーマをパラドックスの世界にあてはめ、さまざまな感情を呼び起こす作品に仕上げている点が素晴らしい。
神回のレビュー
(最大星5つ/0.5刻み/5段階評価)

おわりに

本作は見事なストーリーと演出、俳優の素晴らしい演技にすっかり魅了されてしまいました。同プロジェクトの『新しい日本の才能を発掘する』という目的を、見事に果たしたのではないでしょうか。十代だけではなく、幅広い世代の方に観てほしい映画です。

関連リンク

【TOEI VIDEO NEW CINEMA FACTORY】第1回製作作品『神回』メイキング特報
【TOEI VIDEO NEW CINEMA FACTORY】第1回製作作品『神回』メイキング特報
映画『神回』 試写レビュー 2023年7月21日公開作品(監督・脚本 中村貴一朗)

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オーストラリア在住の在宅ライター。2児の子育て中で料理が得意、フリータイムは大好きな海外ドラマ鑑賞に費やしています。 海外ドラマの記事を中心に執筆。ブログで海外ドラマの情報を発信中です。 ご希望リンク先

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