『お爺さん・お婆さん=老人』が主役の漫画作品 【前編:普通の老人&強い老人】
『お爺さん・お婆さん=老人』が主役の漫画作品 【前編:普通の老人&強い老人】

お爺さん・お婆さん=老人が主役の漫画作品 【前編:普通の老人&強い老人】

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高齢化社会と叫ばれて久しい昨今の日本ですが、探してみると意外にも老人を主人公としたマンガは多数あるようです。そこで当記事では、そんな老人達を主人公としたおすすめの漫画作品をまとめて紹介しています。

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現実的な老人が主人公のマンガ

まずは、年齢相応の老人が主人公の作品をご紹介。主人公は年相応の老いと渋み、人生の深みや経歴があり、その内容で私達を楽しませてくれる作品。

島さん (連載中 単行本6巻まで発売)

舞台はコンビニエンスストア。そこで夜勤として働いている老人『島さん』。彼は、いつもにこやかで真面目で、機械が不得意でちょっと要領の悪いおじいさん。そんな、一見どこにでもいるご老人ですが、その背中には一面の入れ墨が。

マンガ『島さん』は漫画アクションで連載中(当記事掲載時点)の作品。いつもにこやかで腰の低いのに、ミステリアスな面もある……そんな島さんに何故か惹きつけられていく、ヒューマンドラマ作品。

セブンティウイザン (全5巻 完結)

江月朝一(65歳)と妻の夕子(70歳)は結婚して数十年、子どもがいない事以外は大きな問題もなく暮らしてきた老夫婦です。しかし朝一が定年退職をしたその日、夕子から「妊娠しました」と告げられます。

※余談ですが、ギネスブックに記録されている最高齢出産は66歳(外部リンク)だそうです。

高齢出産ということで当然多くの問題や危険が伴いますが、授かった命を生み育てたいという妻・夕子の為に、オロオロしながらも奔走する夫・朝一。インパクトだけのファンタジーな内容ではなく、出産から子育てまでのノウハウもしっかり描写し、命の有り方や出産・育児について色々考させられます。優しい絵柄と心温まる内容、子を産む/育てる親の世代、そして高齢の方はもちろんのこと、若い人達にも読んでほしい作品です。

2020年にはNHKで実写ドラマ化もしています。

70才、初めて産みますセブンティウイザン。

70才、初めて産みますセブンティウイザン。 作品情報

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海が走るエンドロール (連載中 単行本6巻まで発売)

映画好きの老人・茅野うみ子(65歳)はある日、映画館で美大で映像を学ぶ青年・海(カイ)と出会います。ひょんな事から海にビデオデッキの修理を頼み、映画を見終わった後に海から言われたある『ひと言』をきっかけに、うみ子の人生は大きく変わってゆきます。

美大に入学し、映画製作を学んでいくうみ子……五十の手習いという言葉がありますが、うみ子は65歳。まったくの素人だった彼女が大学に通い、プロの映像作家となるには、やはり多くの課題や困難が付きまといます。その先にあるのは新しい青春か、それとも……。

天才柳沢教授の生活 (休載中 34巻まで発売)

主人公は、大学の経済学部で教授を務めている柳沢良則(60歳)。性格は折り目正しく、規律を常に遵守、そして超マイペース。いつも、同じ時間に起き、同じルートで職場に向かい、同じ歩調で歩き、同じ時間に眠る。知的探求心も豊富で、気になったことは、なんでも調べてみなければ気が済まない。特に『人間』に関してはその傾向は一層強く、家族、家のネコ、ホームレス、女子高生、マフィア、等々、興味の赴くままに多くの人々を観察し交流していく姿をユーモラスに描いた作品。

柳沢教授やその周囲の視点から描かれる日常は、私達が普段みている風景とは一風変わった見方や感じ方がある事に気づかせてくれます。なお、2013年まで連載した本作は、現在は休載中となっています。単行本としては第34巻まで発売し、2002年にはドラマ化もされました。

補足:柳沢教授のモデルは?

本作の主人公である柳沢教授は、作者である山下和美の実父=元東北大学経済学部教授である、古瀬大六(たいろく)氏がモデル。性格も柳沢教授と似ていて、毎日、定時に起きて定時に眠るような人物だったそう。

また、家族構成もマンガと同じで、作中の四人姉妹の四女に当たるのが作者である山下和美氏だったようです。古瀬教授は、2007年に亡くなられていますが、柳沢教授同様に大変な蔵書家であったようで、その蔵書は小樽商科大学付属図書館に寄付されたとの事。

天才柳沢教授の生活

天才柳沢教授の生活 作品情報

  • 公開日: 2002年10月16日(水)
  • 話数: 全9話
  • 原作者: 山下和美
  • 監督: 鈴木雅之, 西浦正記
  • プロデューサー:
  • 脚本:
  • 制作会社:
  • 作品概要: 
    柳沢と妻《正子》の関係、主婦代表キャラ・長女《奈津子》とサラリーマンの典型で無類のゴシップ好きの夫《幸弘》、その二人の娘で異常に祖父である柳沢に心酔する幼稚園児《華子》、貧乏をものともせず夫への献身的な愛に生きる次女《いつ子》と意味不明で実用性の無い作品を作り続ける前衛陶芸家の夫《雅史》らが抱えるそれぞれの問題。そして父親を無意識下では尊敬するものの、そんな自分が許せないいまだ反抗期の三女《世津子》と彼女のことを誰よりも愛するナイーブなパンクロッカー(なぜか心はフォークソング)の《恩田ヒロミツ》とのエピソード。 家族ひとりひとりを「いま」的個人としてとらえ、それぞれのキャラクターが巻き起こすシチュエーションドラマです。 そして世間離れしているがために、時にはメイワクでヤッカイな柳沢教授という男を、それでも愛し続ける「家族愛」のドラマ

配信サービス:

”強い老人”が主人公のマンガ

続いては『強い老人』を描いた作品をご紹介。特に、ファンタジーやSF色系のマンガでは、経験や知識を駆使した異様な強さを見せてくれるものが多いようです。

銀狼ブラッドボーン (全16巻 完結)

サンサロド市では、骨だけが抜き取られてしまう事件が発生。事件の背後には、人骨だけを食べる怪物の存在が浮き出てきます。そこで警察は、事件解決のために一人の老人……伝説の吸血鬼ハンター ハンス・ヴァ―ピット(70歳)を頼ります。彼こそは、人類と吸血鬼による大戦を潜り抜けてきた英雄だったのです。

架空の街を舞台に、吸血鬼と戦う老いた英雄ハンス。人々を護るために老骨に鞭を打ち戦場に出る彼に対峙するのは、蘇った宿敵、死んだはずの友、そして……。

SAND LAND (全1巻 完結)

言わずと知れた『ドラゴンボール』『Dr.スランプ アラレちゃん』の鳥山明によるマンガがこの『SAND LAND』(サンド・ランド)です。

天変地異によって大地のほとんどが砂漠地帯となった世界。僅かな水源は国王によって管理され、高額で売られていた。そんな事態を憂いた保安官老人ラオ(61歳)は、新たな水源を探すため、魔物の王子ベルゼブブに同行を依頼します。

鳥山明作品特有のとぼけた雰囲気もあるものの、荒れ果てた世界で悪魔&老人バディが繰り広げる冒険ストーリー。その根底には人間の愚かさといったテーマも描かれています。

なお本作は2023年8月18日に劇場アニメが公開し、ディズニープラスではアニメシリーズも公開するという最中、鳥山明先生が逝去(2024年3月1日)されました。本作含め新しい作品にも意欲的に携わっていた中で、残念でなりません。心より冥福をお祈りいたします。

SAND LAND: THE SERIES

SAND LAND: THE SERIES 作品情報

  • 公開日: 2024年3月20日(水)
  • 話数: 全13話
  • 原作者: 鳥山明
  • 監督: 横嶋俊久
  • プロデューサー:
  • 脚本:
  • シリーズ構成: 森ハヤシ
  • 制作会社: サンライズ, ANIMA, 神風動画
  • 作品概要: 
    ワルだけどピュアな悪魔の王子・ベルゼブブと、正義感溢れる人間の保安官・ラオ、王子に振り回されるお目付け役の魔物・シーフたちの心踊る冒険ファンタジー超大作。「スター」オリジナルシリーズ『SAND LAND: THE SERIES』は、3月20日(水)16時(JST)よりディズニープラス「スター」にて独占配信スタート!

公式SNS: 

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『いぬやしき』(全10巻 完結)

老人のように老けた外見の主人公 犬屋敷壱郎(いぬやしき いちろう 58歳)。しかし、家族の反応はイマイチ。相変わらず家庭では邪魔者扱いされる存在のまま……。そんな彼は、ある日正体不明の爆発に巻き込まれ、目が覚めると機械の体にされていました。

宇宙人の科学によって蘇ったその力を、人助けに使う壱朗。一方で、同様に機械の体を手に入れ自分自身のエゴのために力を使う青年が登場します。正義と悪に別れた2人は……。SF漫画『GANTZ』の作者でもある奥浩哉が手がけた本作。実写化、アニメ化されるほど人気を博した作品です。

いぬやしき

いぬやしき 作品情報

  • 公開日: 2017年10月13日(金)
  • 原作者: 奥浩哉
  • 監督: さとうけいいち
  • プロデューサー:
  • 脚本: 瀬古浩司
  • シリーズ構成: 瀬古浩司
  • 制作会社: MAPPA
  • 作品概要: 
    定年を間近に迎える冴えないサラリーマン・犬屋敷壱郎は会社や家庭から疎外された日々を送っていたが、ある日突然、医者から末期ガンによる余命宣告を受け自暴自棄になる。その晩、突如飛来したUFOの墜落に巻き込まれ機械の体に生まれ変わった彼は人間を遥かに超越する力を手に入れることに。
    一方、同じ事故に遭遇した高校生・獅子神皓は、手に入れた力を己の思うがままに行使し始めていた。
    自分の意に背く人々をただただ傷付けていく獅子神と、獅子神によって傷付けられた人々を救い続ける犬屋敷。
    人間の本質は善なのか、それとも悪なのか…?
    強大な力を手に入れた2人が、いま、それぞれの想いで動き出す――。

公式SNS: 

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CANDY & CIGARETTES(全11巻 完結)

主人公は元SPの平賀雷蔵(65歳)。彼が定年退職したその時、孫が大病を患ってしまい大金が必要になります。月給百万という仕事に飛びついたものの、その業務内容は殺し屋。しかもパートナーは11歳の少女、涼風美晴でした……。

物語が進むにつれて明かされる、美晴の正体。そして、彼女の過去に関わる謎の男、無双三郎。『COPPELION』の作者が手がけた本作は、老人と少女という風変わりなバディものの、ハードボイルドな漫画です。米国のノワール小説を彷彿する乾いた空気感とハリウッド映画ばりのアクション描写が特徴です。

シノビノ(全6巻 完結)

時は幕末、黒船来航。老中・阿部正弘は、一人の老いた忍者を呼び出しました。彼の名は沢村甚三郎(さわむらじんざぶろう)。彼に下された密命とは、黒船に潜入することでした。

沢村甚三郎は幕末に実在した人物で、本名は沢村保祐(甚三郎は通称)という忍び。実は、本当に黒船に潜入していたという記録も残されています。本作では、平田篤胤藤堂平助など、幕末に実在した人物が数多く登場しています。

作中の物語では、黒船をはじめとして幕末に起きた重大事件に焦点が当てられてきます。これらの事件に甚三郎がどうかかわっていくか、見どころです。

殺し屋は今日もBBAを殺せない。(全5巻 完結)

野沢マコト77歳。好物はカレー。やや偏屈ながら一見して普通の老婆。そんな彼女の元に、なぜか殺し屋が派遣されますが、こごとく返り討ちにされます。そう、彼女こそは、超人的な戦闘力の持ち主であり、数多の修羅場を潜り抜けた、歴戦の勇士であったのです。

映画などによく有る、「一見するとただの○○が、実はとんでもない人だった」という設定を、バトル漫画的な表現で仕上げたギャグマンガ。ごく普通のおばあちゃんが、次々と殺し屋をなぎ倒していく様は圧巻。その正体もさることながら、なぜ彼女に殺し屋が派遣されているのかも謎となっています。

ぐらんば(全1巻 完結)

夫に先立たれ、薬草を売りながら細々と暮らしている山路八重(85歳)。村では迫害され、彼女の落ち着くところは、山の中のみ。そんなある日、山中で不気味な生き物に遭遇します。恐怖に怯えながら必死で生き延びようと、逃げますが…そんな最中、戦争中の訓練を思い出し、竹槍で怪物たちと戦うことになります。

作者は、『ハイスコアガール』『ミスミソウ』などの押切蓮介。作者特有のホラータッチと、少年漫画的な勢い、そしてB級映画的な要素が合わさったユニークな作品。

『お爺さん・お婆さん=老人』が主役の漫画作品 【前編:普通の老人&強い老人】

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蔵無

漫画考察者、ライター。80年生まれ、90年代育ち。尊敬している漫画家は水木しげる、荒木飛呂彦。好きな作家は江戸川乱歩。

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