活字版コミケ!? 『文学フリマ 京都』出展参加レポート ヤマダマイ 公開:2020年2月12日(5年前) / 更新:2020年4月8日 コメント 0件 趣味・文化イベント文学映画本 SNS X Facebook B! はてブ Pocket 当記事の内容および記事中のリンクには、広告目的や当サイトが収益を得るためのものが含まれており、これらの収益によってuzurea.netは運営されています。 コミケこと『コミックマーケット』が広く認知される中、「漫画だけでなく、文章をメインとした即売会があったら参加してみたいなあ」と思っていた筆者の前に、突如飛び込んできた『文学フリマ』というイベント。文字通り、文学作品を誰でも自由に出品できるイベントです。その存在を知った筆者は勢いに任せて『出品者』として参加してみました。 今回は“モノなし” “コネなし” “スキルなし”の状態で、文学フリマに参加した体験レポートをここに記します! 記事の索引1 『文学フリマ』ってなに?2 何もない状態からの出店準備2.1 完全に手探りで製本発注2.2 宣伝活動はうまくいかず……3 第4回文学フリマ京都当日! 開場の様子3.1 良かった点、上手く行った点3.2 改善すべき点4 おまけ 文学フリマで“黒字”を目指すなら 『文学フリマ』ってなに? 『文学フリマ』を分かりやすく表すなら『コミケ』の活字版です。 文学フリマ 公式サイト 小説、詩歌、評論・研究、ノンフィクションなど様々な文学作品を出店者が自ら手売りします。ジャンルも純文学からSF、児童文学からアイドル評論まであり、出店者・来場者の年代層も10代〜90代まで幅広いイベントです。来場者は見本誌コーナーで各ブースの作品見本を自由に立ち読みすることができ、ブースで作品を購入することができます。文学フリマ 公式サイトより ただし、コミケと違う点は開催回数や開催場所の豊富さにあります。規模はコミケに及ばないものの、『文学フリマ』は東京をはじめ大阪、京都、さらに九州地方や北海道など、全国8箇所で年9回開催しているのです。 今回、筆者は2020年1月19日(日)に『京都 みやこめっせ』で開催された、『第4回文学フリマ京都』に参加しました。 『第4回文学フリマ京都』 2020年1月19日(日)京都 みやこめっせ で開催 何もない状態からの出店準備 特に出品する作品も決めないまま、文学フリマ京都に出店申し込みをしましたが、今回は売上よりも作品を自分で用意して出店するという『経験』に重きを置きました。(というと聞こえはいいですが、1冊も売れなかったときの言い訳でもあり…) 出品する作品について調べてみると、ゼロから作品をつくる人もいれば、ブログなどに掲載している文章を紙媒体向けに加筆・修正している人も多いようです。せっかくなので、筆者は映画ライターとしての活動を生かして、文学にちなんだテーマで映画のレビュー集を出すことに。そのテーマは『作家』。主人公の職業が作家の映画から、実在した作家の伝記映画、ドキュメンタリー映画などを9作品レビューし、24pの作品を作りました。 作品名は『末端SEOライターの(反逆)映画レビューvol.1~映画で生きる作家たち~』です。※末端SEOライターとは、『ほぼパワポな15秒CM動画に500文字の説明文を書く』などの苦行をするライターのことです。 あくまで文学がメインのイベントなので、購入者をいわゆるシネフィル(映画通、映画好き、映画狂)ではなく、ちょっと映画を観る程度のライト層に絞ってみました。レビューの内容も紹介文という形で執筆しています。 完全に手探りで製本発注 文章を書くまでは問題なかったのですが、『作品をどのように本として仕上げるのか』という壁にぶつかります。ひとまずネットで製本した人の意見を調べ、料金シミュレートや、納品方法が簡単だったことから『ちょ古っ都製本(https://www.chokotto.jp/)』という会社へ発注することにしました。決め手です。 ちょ古っ都製本(https://www.chokotto.jp/) Webサイト 初めての製本ということもあり、原稿データは変に力を入れて失敗するリスクを抑え、無難にwordで書き、表紙も画像を貼り付けただけの(手抜き)シンプル仕様。悲しいかな筆者は、絵心もなければ手書きの文字は『象形文字』と言われるほど下手なので、あらゆるデザインをテンプレートでキメてやりました。(デザイン外注を視野に入れるも、依頼料を含めた作品の価格設定が面倒くさくなったので今回はなし) しかし製本された商品を見ると、やはり『Wordで全部作りましたっ!』感が否めない。 こちらは完成した末端SEOライターの(反逆)映画レビューvol.1~映画で生きる作家たち~ 特に表紙は画像のサイズ感や画質をWordの設定のまま入校したので、かなりチープな印象に。bおまけにページ配分を計算ミスし、レビューが1つ載せられなくなってしまいました。(ちなみにこのレビューは、後述するチラシのサンプルとなる) 印刷技術自体は全く問題ないし、価格も良心的だっただけに、筆者の雑さがもろに出てしまいました……。皆さんも発注する際は、ある程度原稿のイメージを持っておいた方が良いですよ……。 そのため『強気の1冊300円』の作品価格を、急遽『守りの200円』に変更。部数も20部にしました。ちなみに価格設定は『ガチャガチャ』を参考にしています。筆者は初出店なうえ、ネット上の知名度も皆無なので、『何が出るか分からないカプセル=どこの馬の骨とも分からない作家の本』という発想で決めました。ちなみにこの価格設定でも、全部売れれば若干の黒字になります。(なお公式サイトによると、作品の中心価格帯は1作品あたり600円前後だとか) 宣伝活動はうまくいかず…… 本も完成し、宣伝のためにサークル名で新たなtwitterアカウントを設立。文学フリマのハッシュタグでイベントに興味をもっているアカウントや、出店者のアカウントを探してみたのですが、思い通りの宣伝活動はできませんでした。 サークル名で新設したアカウント。残念なフォロワー数である ただ、普段使用している筆者の個人アカウントのフォロワーさんい一人『文学フリマ京都』に出店する方がいて、その方と直接会場でお話しができました。これは出店してよかったと思える出来事の一つです。 ちなみに、文学フリマでは『webカタログ』というシステムがあります。 出品する作品の表紙や紹介文を掲載できるこの『webカタログ』に登録することで、開催前から自身の作品をアピールできるというわけです。紹介文のほかにも『気になる』『訪問済み』といった、カウント機能もあります。ただし、自分のカタログページのPVなどは分からないので、どれだけ閲覧されたかは不明。 ちなみに筆者のwebカタログは『気になる』が『1』のまま、開催当日を迎えました……。 第4回文学フリマ京都当日! 開場の様子 今回の文学フリマ京都は、過去最大の455出店、482ブースという盛り上がりを見せており、会場も大盛況でした。 『第4回文学フリマ京都』当日の様子 出店者の入場が10時から(一般の入場は11時から)だったので、10時を少し回ったころに会場に着いたのですが、割とスムーズに入場できました。しかし、会場ではすでに多くの出店者たちがブースの準備に追われており、熱気をビシビシと感じます。(単純に人口密度高くて暑かった) 今回は急遽出店・ブース数が多いこともあり、ブースから出るのにも一苦労な窮屈さ……。筆者は作品が1つだけだったので、備品も合わせて荷物はリュック1つで済みましたが、作品が多いと荷物の管理だけでも大変そうです。 当日のブース配置図 第4回文学フリマ京都 公式ページより ブースの配置は『小説』『批評』『旅行記』といった具合に、各ジャンルで分けられています。ほかにもカレーやコーヒーを屋台で売っていたり、京都にちなんで和装体験も開催していたりしました。 アンティーク着物の和装体験(宮川徳三郎商店)実施!宮川徳三郎さんのコーディネートによるアンティーク着物の和装体験を今年も実施いたします!イベント当日、アンティーク着物をまとって、会場内外を楽しんで頂けます。出店者の方は着用したままご自身のブースを運営していただけます。第4回文学フリマ 公式ページより 和装のまま、会場内や最寄りのコンビニまで出歩くことができたそうです 他に、どんなブースがあるのか会場内を練り歩いてみると、やはり小説が多くある中で旅行記やレシピ本、さらに雑貨を取り扱うブースなどそのジャンルは多数。文学に関わると思う物であれば、ジャンルの自由度はかなり高い印象を受けました。ちなみに文学フリマ公式サイトの統計によると、ほぼ半数の方が初めて出店されているようです。 ただブースを見て回ったところ、1作しか出品していないブースはあまり見られませんでした。それゆえに、いかにして多くの人に自分の作品を見てもらうか考える必要があります。そこで、実際に筆者が出店した際に『実践してよかった点』や、『改善すべき点』をまとめてみました。 良かった点、上手く行った点 チラシの裏にサンプルを記載 会場には出品する本を置いて、自由に読んでもらえる『見本誌コーナー』というものがあります。一方で、ブースを回りながら気になる商品を探す人も多くいました。しかしブースで作者を前にして立ち読みするのも、慣れない人にとってはなかなか勇気がいるものです。 そこで作品紹介のために作ったチラシの裏に、サンプルとしてレビューを1つ掲載しました。「チラシの裏にサンプルが載っているので、よかったら読んでみて下さい!」 と言って手渡しすると、ほとんどの方が受け取ってくれるし、目の前で立ち読みする緊張感とも無縁です。チラシを渡した後、しばらくしてブースに戻ってきて購入してくれた方もいました。 チラシと名刺とポートフォリオを一体化させた 最初はチラシと名刺をそれぞれ用意しようと考えていましたが、手間もお金もかかるのでチラシと名刺、ポートフォリオをA4用紙に一体化させました。※ただしお客さんの中には同業者の方もおり、名刺を渡してくれる人もいます。持っている人は当日用意しておくとなお良いでしょう。 私の隣のブースでは、ドキュメンタリー監督をしているという方が、出店者さんと名刺交換していました。筆者はもらえませんでしたが……(悔)。 A3用紙に作品のポスターと配置図の番号を記載 ブースに用意されているのは長テーブルとイス1脚のみ。(事前申し込みで別料金になりますが、椅子は1ブースに付き1つまで追加可能) 壁やポスターをかけておくような器具は、自分で用意しなければなりません。 ただそういった器具がなくても、テーブルにA3サイズのポスターを貼っておくだけでも、かなり見てもらえるのであると便利です。 左が作品ポスター、右はブース番号を印刷したA3ポスター こうしておくことで、見本誌を読んだ人が目的のブースを探している時などに頼りになると思います。 改善すべき点 レビューした映画の作品名リストを大きく掲載すべきだった 作品を手に取る方の多くが目次をチェックしていたのですが、ポスターやお品書きにレビューした映画の作品名リストを目立つように記載していませんでした。お品書きには簡単なリストを記載したのですが、小さい上にすべての映画を記載できていなかったので、これをしっかりアピールしていたらより集客が見込めたかもしれません。 例えば、お品書きに大きく目立つ付箋を貼りつけ、そこに推しの映画をリスト化しておくなど、工夫次第ではいくらでも方法がありそうなものだけに、ここまで手が回らなかった事が悔やまれます……。 『チラシ置き場』を活用できなかった これは完全に筆者の確認不足だったのですが、会場の入り口付近に、見本誌コーナーとは別に、ブースや作品のチラシが置ける『チラシ置き場』がありました。もちろんブースにはチラシを自由に取れるように置いていましたが、『チラシは1種類だけでも、可能な限り様々な場所に設置すべし』と映画館でフリーターしていた時に教わった宣伝材料の極意を、何一つ生かせていませんでした。これも、無念。 ……と、ここまで色々偉そうに書いてきましたが、実際のところ作品は何冊売れたのか? ずばり、20冊中7冊購入いただきました! 正直、1冊も売れない覚悟での出品だったので嬉しい!! 購入してくれた方は20~30代、男女比率は半々、チラシや本文を読んで買ってくれた方もいれば、目次だけ見て購入した人もいらっしゃいました。 もちろん、見本誌を読んだけど、購入までには至らず……ということもありました。なかにはチラシのポートフォリオに興味を持ってくれた人もいたので、出店する際は自分の経歴や活動が分かる物を用意しておくといいかもしれません。 こうして11時から一般の入場が始まった文学フリマ京都は16時で終了。その後、懇親会も設けられているそうですが、筆者は県外から参加したので直帰しました。 おまけ 文学フリマで“黒字”を目指すなら ここで少し生々しい話ですが、もしも文学フリマで“黒字”を目標にするなら、価格設定はどうするのが正解だったのか考えてみました。 まず、開催地によって異なりますが、文学フリマ京都の場合は4,600円の出店料が必要また、筆者が京都駅周辺に住んでいると仮定した場合、地下鉄烏丸線『烏丸御池駅』→地下鉄東西線『東山駅(みやこめっせ前)』下車で、交通費が440円(往復)そして製本料が約3,000円(20部発注) 経費は以上となります。ここから20冊完売で黒字になるようにするには、 (4,600+440+3,000)÷20=402 と、1冊あたり402円以上の価格にしなければいけません。今回の販売価格である200円では黒字になるどころか、出店の段階で赤字確定です(笑)。このほかにも宣伝用に印刷したチラシのコピー代、出店の際に使った小道具など、細かい費用を計上すれば、さらに価格を上がる必要があるでしょう。 何が言いたいのかというと、ガチの作家やインフルエンサーでもない限り、満足いく黒字を実現することは困難かもしれません。(会場ではものすごい長蛇の列を作ったブースや、京都出身の作家・木爾チレンさん本人が出店しているブースがありましたが) ただし、自分の作品をこんなに手軽(出店申し込みも非常に簡単)かつ、多くの人に見てもらえる機会はそうありません。筆者の本は半分も売れませんでしたが、自分の本に対するお客さんのリアクションを見られたのは、本当にいい経験だったと思っています。そもそも無名なうえに、『映画レビュー』という文学フリマではニッチなジャンルで、7冊も買ってもらえたのはありがたい話です……。 今回出店してみて、色々改善したい点もあったので、これに限らずまた出店してみようかと考えています。なによりweb媒体とは違う、『何でもアリ』な雰囲気や、自分で作品を用意して、自分で作品を売るプロセスはクセになりそうです……。 そんなことを書きながら、筆者は『文学フリマ大阪』の出店申込みをしているのでした。 文学フリマ 公式webサイト