ハードボイルドなマンガ11選 ほろ苦い世界観を堪能できる有名作品&マイナー作品、おすすめをピックアップ
ハードボイルドな漫画11選 ほろ苦い世界観を堪能できる有名作品&マイナー作品、おすすめをピックアップ

ハードボイルドな漫画11選 有名作品&マイナー作品、おすすめをピックアップ ほろ苦い世界観を堪能したい方へ

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当記事では、ほろ苦い生き様を堪能できる『ハードボイルド』な漫画(コミック)をご紹介しています。 誰もが知る有名作品から、少しマニアックな作品まで思いつくまま11作品をご紹介しています。

なお、当記事はランキングではないので掲載順が、面白さやお勧め度の順というわけではありませんので、その点はあらかじめご了承ください。

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おすすめハードボイルド漫画11選

ハードボイルド(Hardboiledとは、『固ゆで卵』という言葉に由来し、ヘミングウェイやチャンドラーの小説などに見られる『柔らかくない=ハードな世界感』の作品に用いられる小説や映画、そして漫画などのジャンルを指します。 より具体的に挙げるならば、暴力的だったり反道徳的な……裏の社会に生きる主人公が、治安の悪い街を舞台に活躍する……なんて構成の作品をイメージすると伝わりやすいでしょうか。

ここでは、そんなハードボイルドの代名詞とも呼べるような作品から、ハードボイルドをベースにユニークな要素や設定を組み合わせた作品まで、11の漫画作品をご紹介いたします。

劇画の帝王が生み出したワンマンアーミー 『ゴルゴ13』

正体不明のスナイパーであるゴルゴ13(ゴルゴサーティーン)を主人公とした劇画作品。 その名の由来は「イエスを裏切って、ゴルゴダの丘で十字架にかけた13番目の男」。

本作を実際に読んだことは無くとも、その名前やキャラクターについて知っているという人も多いのではないでしょうか。ゴルゴ13は、今でこそ寡黙で思慮深い男という印象のキャラクターですが、作品初期の頃はいまよりも口数の多いニヒルな男として描かれていました。

また、現在は世界各国の社会情勢をからめたエピソード多く見られますが、連載開始の頃は東西冷戦下であったために、冷ややかなムードの諜報戦をメインテーマにしたドラマを描いていました。当記事執筆時点で最新単行本は206巻まで出ていますが、今あえて1巻から読むと新鮮な感動を味わえるかもしれません。

作者は劇画の帝王とも呼ばれるさいとう たかを。惜しくも、当人は2021年に亡くなられましたが、さいとうプロによって連載が継続されています。

その店主、最強につき 『SAKAMOTO DAYS』

本作は、2020年に週刊少年ジャンプで連載開始された作品です。

太った風貌の雑貨屋の店主は、元・伝説の殺し屋だった……。そんな主人公坂本が、かつての部下でエスパーである青年シンと共に裏社会の住人たちと戦う、という物語。

ごく平凡に見える人や一見して地味な人物が実は元凄腕○○だった、という設定は映画『Mr.ノーバディ』や『イコライザー』など多くの作品で見られます。 ハードボイルド作品の王道設定と言えるかもしれません。

作品としても映画の影響が強いのか、ダイナミックなガンアクションシーンが多く、話のテンポもスピーディ。 少年ジャンプ作品という事もあり、読みやすい作品といえるでしょう。銃だけでなく、周囲の小道具を巧みに使って戦うというのも面白い所。

すべての矛を防ぐ無敵の楯 『闇のイージス』

楯雁人(たてかりと)の正体は、裏社会で『イージス』と呼ばれている護り屋。徒手空拳で戦い、鋼鉄の義手で弾丸すらはじき、依頼者を護る事を生業(なりわい)としてます。

イージスとはギリシャ神話に登場するありとあらゆる邪悪・災厄を払うという盾なのですが、本作の主人公イージスもその名にふさわしく、伝説級の実力を秘めた護衛者。どんな悪党でも依頼さえあれば護衛する半面、護り屋としての矜持である『不殺』も信条としている、誇り高い戦士です。

2000年代にヤングサンデーで連載された本作は、当時問題になっていた同時多発テロの影響が反映されている作品でもあります。本作『闇のイージス』は全26巻発売で2006年に終了。 続編『暁のイージス』は2007年から2009年まで連載し、全6巻が発売しています。

なお、同作者によって1992年~1995年に少年サンデーにて連載されていた人気作品『ジーザス JESUS』のキャラクターも一部登場しています。

悪党は絶対に逃さない、なぜなら俺は……『デカニアラズ』

一見、軽薄なトラブルメーカーに見える本作の主人公花田義太郎ですが、実は優秀な刑事です。

とはいえ、どんなに優秀な刑事でも、巨大な権力をバックボーンに持つ悪や、証拠のない犯罪者には手を出すことができません。 ところが、花田は暴力団員である鉄路朗と組んで、警察が手を出せない『悪』にも鉄槌を下すのです。

いかなる手段を使っても犯罪者を追い詰めて、制裁を加えようとする花田と鉄路には、ある種の爽快感すら覚えます。 特殊な刑事バディもの作品といえるでしょう。一方、刑事として表向きの相棒である木本は、花田の行動に不信感を抱きその正体を探ろうとしています。花田と鉄路はなぜ手を組むのか? また、花田の正体を知った三木本がいかなる決断を下すのか。 トリッキーな構成や人間関係が気になり、続きを読み進めてしまう魅力をもっている作品。

本作は全4巻、2021年に完結しています。

鉄の体に熱い魂 『ノー・ガンズ・ライフ』

『ノー・ガンズ・ライフ』はSF要素が詰め込まれたハードボイルド漫画。 身体機能拡張技術(サイボーグ)が、一般的に広まっている世界を舞台としています。

主人公である乾十三(いぬい じゅうぞう)は、頭部が大きな拳銃となっている拡張者(サイボーグ)であり、処理屋という事件屋を営んでいます。 やがてベリューレンという大企業に追われる荒吐鉄郎(あらはばき てつろう)という少年をかくまったことで、ベリューレンの陰謀に巻き込まれていきます。

主人公の頭部が銃になっているという奇抜な設定が目を引きますが、その武骨な見た目とは裏腹に几帳面で面倒見が良く、意外に繊細。このギャップも彼と、この作品の魅力のひとつと言えるでしょう。

2021年9月まで連載されていた作品で、コミックスは全13巻が発売済み。 またアニメシリーズも2期制作されています。

終戦の日本に潜む昭和の忍者たち 『ヤミの乱破』

本作を描くのは、『さすがの猿飛』『ギャラリーフェイク』などヒット作、秀作を多数描いている、細野不二彦。タイトルの『乱破(らっぱ)』とは、忍者の古い呼び名のひとつ。

舞台は、太平洋戦争が終わった直後の日本。主人公の桐三五(きりさんご)の表向きの仕事はカストリ雑誌(娯楽雑誌)の記者ですが、その正体は旧日本軍に由来のある組織の諜報員。

終戦直後の猥雑な社会を詳細に表現している点が高い評価を得ている作品でもあります。海野十三の小説を彷彿させるようなSF要素があるのも見どころ。

こちらも全4巻で完結しています。

俺を閉じ込めた者は誰だ? 『ルーズ戦記 オールドボーイ』

会社員である五島は、何者かに拉致されとあるビルの一室に10年間閉じ込められた後、突然解放されます。

誰が何のために自分を閉じ込めたのかを探る五島。10年間の監禁で自我を保てたのは、『何者が、どんな意図で自分を監禁したのか』それを解明するという執念でした。僅かな情報を頼りに調査を続ける彼の前に姿を現す『堂島』という男。その人物こそ五島を閉じ込めた張本人だったのですが……。

五島と堂島、まったく対照的なふたりの奇妙な関係性から生まれた憎悪を紐解いていく過程がスリリングな作品。1996年から1998年まで漫画アクションで連載され完結、コミックスは全8巻。

なお、2003年には韓国で映画化もされていますが、五島が閉じ込められた理由や結末などは原作と異なっています。 さらに韓国版映画を元に、2013年にアメリカでもリメイク映画が作られているという点からも、この原作漫画の魅力が伝わるでしょう。

街の片隅で生きる本格ハードボイルド探偵漫画 『事件屋稼業』

深町丈太郎は横浜でフリーの探偵をしている深町丈太郎(ふかまち じょうたろう)。

彼はいつも金欠で、仕事もトラブル続き。顔には生傷が絶えず、歯科医院の一室を間借りした事務所で家賃の催促をされ、妻と娘は居たものの既に離婚しています。 プロフィールだけ見るとまったくうだつのあがらない男ですが、依頼人のためなら泥臭くとも損得抜きで奔走するという独自の美学で活動をしています。

『孤独のグルメ』でも知られる作画担当の谷口ジローは、静謐(せいひつ)な絵柄で知られている実力派。ヘミングウェイを彷彿させる気風を感じさせます。フィリップ・マーロウ的なハードボイルド探偵というプロットと合わさることで、上質な作品として完成。 今の時代にはない、苦みばしった作風が実に魅力的。

本作は1979年に漫画ギャング誌で連載開始し、一度同誌の休刊により終了しますが、『新・事件屋稼業』とタイトルを変え漫画ゴラクで1994年まで連載。全6巻が発売されています。 また、2013年には寺尾聰主演で2話構成のドラマ化もしています。

法廷に思想信条はいらない 『九条の大罪』

主人公の九条間人(くじょう たいざ)は、反社会勢力の依頼ばかりを請けている弁護士。

本作を描くのはヒット作品『闇金ウシジマくん』も手掛けた真鍋昌平。 本作も裏社会をテーマにし、そこに生きるダーティな人物たちや、その依頼に冷静に対応する主人公の姿を描いています。

ヤクザ、半グレといった依頼主に対して、真摯かつクレバーに仕事を遂行し、結果として依頼人達は助かります。 が……優秀な弁護士であるにも関わらず、当然世間の九条に対する評価は最悪。生活もわびしく、家族と別れてビルの屋上にテントを張って暮らすという”ていたらく”ですが、そこもハードボイルド作品に共通する孤独な男の哀愁を感じさせます。

当記事執筆時点では連載中の作品で、7巻まで発売しています。

硫酸を忍ばせた、ヤバい小男 『ピンキーは二度ベルを鳴らす』

主人公ピンキーは、ヤクザのトラブルシューターをしている小男。 護身用に硫酸を常に持ち歩いており、難聴の大男『チーフ』を相棒としています。

その仕事はデリヘル嬢の送迎、麻薬の売人探索など多岐に渡りますが、いずれも厄介なトラブルを抱えた内容ばかり。 アクションシーンも魅力的ではあるのですが、個人的にはピンキーのセリフにも注目していただきたいところ。 その言葉には人の闇と戦ってきた者しか見えない真理が宿っているように感じるのです。

本作は2016年に発表された作品で、作者は『ダーウィン事変』のうめざわしゅん。 単行本には『1(巻)』と記載されていますが、発売以降続きは描かれていません。

タイトルは『郵便配達は二度ベルを鳴らす』というサスペンス小説のオマージュでしょうか。この小説は1939年に映画化されています。

フランス生まれのノワールコミック 『ブラックサッド 黒猫の男』

『ブラックサッド 黒猫の男』は、フランスやベルギーで販売されているコミック=バンド・デシネと呼ばれている海外の漫画です。

舞台となっているのは、1950年代くらいの米国。キャラクターは擬人化した動物達で構成されています。 探偵である主人公のブラックサッドは黒猫、刑事である親友のスミルノフは、ブラックサッドの協力者であり胡散臭い記者のウィクリーはイタチ、といった具合。

登場人物が動物と聞くと童話的な作品をイメージするかもしれませんが、バンド・デシネ特有のお洒落な絵柄とハードボイルド文学の雰囲気が見事に調和した上質な漫画作品。陰惨な展開もありますが、そこは「人間も一皮むけば獣」と言うことを暗示しているようにも思えます。

当記事執筆時点で、日本では6巻まで入手する事ができます。

まとめ

苦みばしった男の世界、静寂の中に、激しい情動を感じさせる大人の世界。 そんなハードボイルドな世界観を堪能できるマンガ作品にテーマを絞ってご紹介しました。

今でこそ『ハードボイルド』という言葉の定義は多様ではありますが、個人的には『完璧ではなれないけれど、問題を解決するために死力を尽くす主人公の姿が魅力な作品』……だとも思っています。

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蔵無

漫画考察者、ライター。80年生まれ、90年代育ち。尊敬している漫画家は水木しげる、荒木飛呂彦。好きな作家は江戸川乱歩。

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