雑誌編集者が思わす「もう読みたくない!」と思ってしまう文章とは

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藤井洋子

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不況と言われて久しい雑誌業界ですが、時々は中途採用の募集を掛けています。

雑誌記者の募集に際しては、履歴書やエントリーシートの他に、簡単な『作文』を要求される場合が多くなっています。

この採用の応募作文に限って言えば、編集者に「あ、もうこれ以上読みたくない」と思われてしまうと、面接にすら進めないという事に陥りますので、今回は『雑誌の採用に応募する際の作文』という観点から、『読んでもらえる文章』について話をしてみようと思います。

uzurea編集部: 記事には担当執筆者の主観も含まれます。こういった意見もあるという参考にお読みください。
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あなたの文章、ちゃんと読んでもらえていますか?

前述したように、雑誌業界が不況な所為か、狭き門です。

結果として、雑誌社での採用募集には多数の応募があり、それだけ多くの作文が送られてきます。そして実際に選考に関わってみると、途中で「もう読みたくない」と思ってしまう作文が存在するのです。

この辺りの見極めは、どの雑誌も割とシビアです。なんたって、商売ですから。

人事担当者はその作文を無料で読みますが、商売となると読者はお金を払うのです。無料でも読む気になれない原稿を、お金を払って読む人なんていないですからね……。

まず、テーマに沿っている、論理が破綻していない、といった事は基本中の基本なので割愛して、ここでは『内容は問題ないのに、なぜかダメな文章』というケースについて掘り下げてみたいと思います。

このケースは、文章力に問題がある場合がほとんどです。

文章力は簡単な努力と学習で向上させる事ができる物なので、この文章力の有・無について採用の人は見ているという事になります。必要なのは美文ではなく、正確な文章です。つまり、間違いがないように書いておけば、ひとまずはちゃんと読んでもらえるのです。

一発で読む気がなくなる文章の例

それでは、これが出てきたらもう読むのを止める、という『レッドカード』クラスの例をご紹介します。

「ら抜き」言葉と、「い抜き」言葉

  • ら抜き言葉の例…「食べられる」を「食べれる」と書く
  • い抜き言葉の例…「話している」を「話してる」と書く

ら抜きもい抜きも「話し言葉」であって「書き言葉」ではありません。

この2つはレッドカードで一発退場。これが出てきた段階で読むのをやめる、という担当者は少なくありません。

「ら」の一つくらい抜けているからって……と思われるかもしれません。

しかし、キャリアのある編集者の目は、自動的にこの手のミスを拾うように出来ているので、かなりの確率で気付かれます。

ら抜き・い抜きであれば、Microsoft Wordの校正機能でも引っ掛かるので、Wordを使っている人は、下線が引かれたらちゃんと直しましょう。

日本語を知らない事によるミス

誤変換ではなく、ただの間違い、というタイプがこれです。

たとえば、「腹立たしい」を「腹正しい」と書いてしまうようなミス。

これは単純に言葉を知らない、あるいは間違って覚えていると見做されます。雑誌記者なら言葉を知らないのは問題外。

一方で、「誤用がまかり通っている言葉」については、レッドカードとせずイエローカードと見做す担当者も多いです。

たとえば「敷居が高い」という言葉は、正しくは「不義理や面目のないことがあって、その人の家へ行きにくい」という意味でして、「高級すぎて入りにくい」という意味で使うのは間違いです。

しかしながら、現在では「あの店は敷居が高い」というような使い方をする人の方が多いので、これは「知らなくても仕方がない。入社してから覚えてくれればよい」と考える担当者もいます。

それでもイエローカードも溜まれば退場なので、気を付けるに越した事はありません。

冗漫な文章

これもよく見かける文章ですが、一文が3~4行にわたっているような場合を指します。
つまり、「。」がなく、ひたすら「、」で繋いでいる文章です。これは冗漫な印象を与え、読む気を失わせる原因になります。

もちろん、一文が長くても正しく書けていて冗漫な印象を与えないなら、問題はありませんが、それはかなり難しい事なのです。

たとえば、芥川賞作家の堀江敏幸の小説は、一文が3行にわたっている事がよくあり、しかもそれが破綻なく美しい文章に仕上がっていると評判です。とはいえ、それはあくまでも堀江の高い技術あってのもの。

堀江でさえ評論家によっては「冗漫だ」と評されるのですから、一般のライターは言うまでもありません。

生兵法は大怪我の元。くり返しますが、雑誌の記事に美文は必要ないのです。簡潔で読みやすい文章を心がけましょう。慣れないうちは、一文を長くし過ぎないように心がけましょう。

減点対象になるかもしれない記述

次にご紹介するのは減点となる「イエローカード」の例。

誤変換&衍字(えんじ)

パソコン時代だから発生する誤変換にも注意しましょう。たとえば、「〇〇の確率が高い」という原稿で、「確率」が「確立」になっている確率は相当なものです(駄洒落ではなく)。

また、『衍字 (えんじ)』は、不要な語が入っている事を指します。誤字脱字の「脱字」の逆ですね。

たとえば、「〇〇とと言いました。」のような文章がこれに該当します。

誤変換も衍字も、一目でケアレスミスと分かるので、減点の対象となりますが、「まぁ、気を付けてね」という注意で済ませる場合がほとんどでしょう。

もちろん、どちらも見直せば発見できるので、ちゃんと見直すのが肝心です。

表記ユレ

表記ユレとは、文章の中で同一の言葉が出てきた場合の表記が異なるものを指します。
たとえば、最初の段落では「私」だった一人称が、次の段落では「わたし」になっている場合ですね。

また、最初の段落は行頭に1文字分のスペースがある(頭落としという)のに、次の段落では行頭を詰めている場合も、ユレていると見做されます。

よくある事ではありますが、採用試験においてはケアレスミスとして減点対象になってしまいます。もったいないと思いますが、ミスが少ない人材が欲しいのはどの雑誌も同じです。

余談ですが、最近は行頭に空白を作らない原稿が多く見られます(ウェブの原稿はほとんどそうですね)が、この手の作文の場合は「空白を作る」で統一しておいた方が無難です。

「も」「といわれる」の多用

意外と嫌われるのが、「も」を多用した文章です。

基本的に「も」は同様の例を羅列する際や、類似例が存在する場合に使います(ほか、強調などいくつか使い方がありますが、本題から外れるのでそれは除きますね)。
しかし、同様の例が出ていないにもかかわらず、不必要な「も」を入れてしまう人が結構いるのです。

たとえば、「箸にも棒にもかからない」なら正しい文章ですが、「魚が網にも入らない」は間違いで、正しくは「魚が網に入らない」とするべきです。

私の経験から言うと、若い人の文章によく見られるタイプのミスで、私が担当者なら確実に減点です。そして、「〇〇といわれる」を多用した文章も、嫌われるものの代表例です。
もちろん、正しい意味での「といわれる」ではなく、不必要に「といわれる」を入れている文章の事です。

たとえば、「日本一高いといわれる富士山」という文章を見かけたとき、私は心の中で「日本一かどうか調べなかったのかよ!」と叫んでいます。

このように伝聞形としての「といわれる」を多用する文章は、「自分の書いている内容に自信がない」と見做され、減点対象となる場合があります。

まとめ:内容がいくら良くても読んでもらえないと始まらない

これが小説などの投稿『作品』だったりすると、また違ってくるとは思います。ですが採用の応募作品となると、最後まで読んでもらえなければ話になりません。

応募する側は1人ですが、募集する側は何人もの作文を読まなくてはならず、途中で読む気を失ったら、その段階で「アウト」。内容に自信があるならなおさら、間違いの少ない文章を書く事を心がけましょう。

どれだけいい原稿でも、読まれないなら存在しないのと一緒です。もしもあなたが良い文章を書いているなら、それは多く人に読まれるべきです。そしてその為には、最低限のルールを守った文章を書く事こそ確実な一歩となります。

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藤井洋子

フリーランスのライター兼編集者。アラフォー。10代から始めたライヴハウス通いは、現在も月1ペースで継続中。ただし、本人はかなりの音痴。 20年飼っているケヅメリクガメのために郊外に引っ越しました。

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