2025年をもって「エンディングを迎える」、『でんぱ組.inc』その軌跡
画像 でんぱ組.inc 公式Webサイト でんぱ組.incから皆様へ大切なお知らせ https://dempagumi.tokyo/2024/04/20/dempa_0420_news/ より

2025年をもって「エンディングを迎える」、『でんぱ組.inc』その軌跡

キタガワ アイコン

キタガワ

当記事の内容および記事中のリンクには、広告目的や当サイトが収益を得るためのものが含まれており、これらの収益によってuzurea.netは運営されています。

『2025年にでんぱ組.incとしてのエンディングを迎える』……。この公式コメントを読んだとき、漠然と「どこまでも彼女たちらしいな」と感じた。秋葉原のディアステージで活動を開始、以来テレビCMやMステ出演もあり、お茶の間でも名を広め……と、第一線で活動してきたでんぱ組.incは、2025年をもって本当のエンディング(解散)を迎えることとなる。悲しい気持ちも未だ拭えないでいるが、今回はそんなリアルタイムで走り続けるでんぱ組.incの、これまでの軌跡を筆者なりに振り返ってみたい。

2025年をもって「エンディングを迎える」ことを発表したでんぱ組.inc、その軌跡

でんぱ組.inc 公式Xアカウント 2024年4月20日の投稿

『オタク』を武器に地上へ!

でんぱ組.incの始まりは、ライブとバーをメインに営業していた秋葉原の『ディアステージ』だ。ディアステはファンとの近い距離感も相まって、アイドルを目指す活動者にとっても、そしてもちろんファンたちにとっても理想的な環境だったのではないだろうか。そんな中で結成されたのが前身ユニット・でんぱ組であり、初期メンバーの古川未鈴を筆頭として、いつしかディアステージの顔とも言えるポジションを確立していった。

Mirror Magic?
Mirror Magic?

そしてでんぱ組.incと名前を変えて地上へ進出した彼女たちは、『萌えキュンソングを世界にお届け』をキャッチフレーズに、更なる活動を続けていく。

とりわけ当時珍しかったのが、彼女たち自身がオタクである事実を公言していたことのように思う。古川未鈴はゲーム全般、藤咲彩音はコスプレ、成瀬瑛美はマンガ、最上もがはネトゲなど……。昨今のアイドルは各々のキャラクターが立っていることも重要な要素だが、でんぱ組.incはそれを『オタク』という視点から見せていくことで、明確に分かりやすく。

でんぱ組.inc「Future Diver」Full size
でんぱ組.inc「Future Diver」Full size

メンバーそれぞれに役割がある! キャッチーすぎる楽曲

でんぱ組.incと言えば、まさしく電波ソング的なバリバリ&キラキラで口ずさみやすい楽曲も魅力的だ。ライブアンセムの『でんぱれーどJAPAN』や『でんでんぱっしょん』を筆頭として、曲の随所に散りばめられたキャッチーさが彼女たちの世界感を大きく広げている。

でんぱ組.inc「でんぱれーどJAPAN」Music Clip Short ver.
でんぱ組.inc「でんぱれーどJAPAN」Music Clip Short ver.
でんぱ組.inc「でんでんぱっしょん」MV【楽しいことがなきゃバカみたいじゃん!?】
でんぱ組.inc「でんでんぱっしょん」MV【楽しいことがなきゃバカみたいじゃん!?】

また、でんぱ組.incはメンバーそれぞれに明確な役割が任されていたのも当時としてはユニークだった。歌唱面での例を挙げれば成瀬瑛美のキャピっとした声は印象部として、鹿目凛はぶりっ子キャラ、高咲陽菜は一番の若手の盛り上げる部分……などなど、各々のパートごとに曲を楽しむ私達に強烈な印象を与えてくれる。

初期曲の中で個人的に衝撃的だったのは、2013年1月にリリースされたキラーチューン『W.W.D』だ。イジメ、引きこもり、不登校。この楽曲ではアイドルになる以前にネガティブな物事に悩んでいた彼女らがディアステージと運命的な出会いを果たしたことで、変化した……そんな世界感を歌い上げている。

【生きる場所なんてどこにもなかった】でんぱ組.inc「W.W.D」Full ver.
【生きる場所なんてどこにもなかった】でんぱ組.inc「W.W.D」Full ver.

この曲は、いつも笑顔で天真爛漫……そんな既存の『アイドル』のイメージに一石を投じる大きなインパクトがあった。そして彼女らも悩み、喜ぶ……我々一般人の延長線のアイドルであることを明確に示していた。

メンバーの脱退・加入と共に成長する

でんぱ組.incは、その輝かしい活躍を遂げる折々で、跡部みぅ最上もが夢眠ねむ成瀬瑛美根本凪愛川こずえの脱退と、それに伴った新メンバーの加入のあった目まぐるしいグループだ。2人から4人に、そして6人に。さらに一時期は最大10人の大所帯にもなった。いずれにせよ一貫していたのは、常に前向きな活動を続ける姿勢だ。

たとえば2013年10月にリリースされた『W.W.D II』は「この6人だから這い上がれたんだ」という力強いメッセージを歌い上げている楽曲。

でんぱ組.inc「W.W.D Ⅱ」MV【マイナスからのスタート、やっぱキツい!?】
でんぱ組.inc「W.W.D Ⅱ」MV【マイナスからのスタート、やっぱキツい!?】

以降もメンバーの増減があるたびにリリースされる楽曲には、今のメンバーだからこそ、という強い意志を感じたものだ。むしろ、メンバーチェンジに対して困惑している我々に対して、「私たちは前向いてるけど、みんなはどう?」と問いかけられるようでもあり、それがまた新しいでんぱ組.incを応援する活力にも繋がっていたように思える。

2021年5月リリース、メンバー5人一挙増員のお披露目曲となった『プリンセスでんぱパワー! シャインオン!』は前半を新規メンバー、後半を既存メンバーで歌い上げる二部構成となっている。その前半部では『「王子様が幸せにしてくれる」 夢が 叶う』『嘘みたい 今日から私がお姫様』といった新メンバーが輝かしい希望と煌びやかな夢を歌い上げる……が、一転して後半では既存メンバーが『夢が叶った? はい! おめでと! ここからが本番なんだわ』、『王子様が幸せにしてくれる? そんなの幻想!』と厳しい現実を叩きつける。

【字幕】でんぱ組.inc「プリンセスでんぱパワー!シャインオン!」Music Video/Dempagumi.inc " Princess Dempa Power ! Shine On ! " MV
【字幕】でんぱ組.inc「プリンセスrでんぱパワー!シャインオン!」Music Video/Dempagumi.inc ” Princess Dempa Power ! Shine On ! ” MV

ここの曲のリリースの時も、ファンたちの心配も「大丈夫、もっと応援しよう!」という意気込みに変化していったように思える。

熱量爆上がり! 誰でも楽しめるライブ

リリース楽曲を聞くだけでも十分に魅力的なのだが、でんぱ組.incがその真髄を発揮するのはライブだろう。これは実際に参加したファンなら誰もが共感してもらえるだろうけれど、メンバーそれぞれの個性を活かしたステージングが多くの人の心を動かしてきた。

まず第一に思い浮かぶのは、必ずライブのラストで披露される『でんでんぱっしょん』。

でんぱ組.inc「でんでんぱっしょん」LIVE MOVIE (2023.3.5)
でんぱ組.inc「でんでんぱっしょん」LIVE MOVIE (2023.3.5)

縦横無尽なアクションもさることながら、リボンを使ったダンスとその視覚効果は壮観だ。ステージ一杯にリボンが舞う光景しかり、たまに絡まってアワアワするメンバーしかり……。何度観ても新しい楽しみがあって最高のキラーチューンに位置している。

また『ギラメタスでんぱスターズ』や『千秋万歳!電波一座!』、『おやすみポラリスさよならパラレルワールド』といった楽曲の他、多くの楽曲でソロのダンスが挟まれているのもポイントだ。

でんぱ組.inc「千秋万歳!電波一座!」Live Movie from『Dear☆Stageへようこそ2021』
でんぱ組.inc「愛が地球救うんさ!だってでんぱ組.incはファミリーでしょ」Live Movie from「幕張ジャンボリーコンサート」

これらは『ひとりの行動を全員が見る』という構図で、グループとしての信頼感がなければ難しいパフォーマンスではないだろうか。

そしてアイドルグループとしてはお馴染みとなっている、ファンのレスポンスもでんぱ組.incのライブには多い。様々な場面でペンライトを光らせ、時には「でんぱー!」と声を上げ、サプライズ枠で突っ走る様は現場の熱量をグンと高める要素のひとつになっている。更にファンの民度の高さもライブの連帯感に繋がっていて、実際に筆者が参加したライブでは周りのファンがペンライトを自腹で配っていたりもした。そうした誰も置いていかない楽しさも、大きな魅力だったのだろう。

「エンディングを迎える」 についての正直な感想

メンバーが移り変わったりと変化はありつつも、どんどん楽曲リリースやライブを行っていた中での今回の発表。それは多くのファンにとっても寝耳に水であり、このまま一生彼女らを見続けるような思いもあったため、シンプルに驚いたというのが正直なところだ。

ただ、こうも思うのだ。今回の事実上の解散を『エンディング』と言い換え、SNS上でも全員が前向きな投稿をしている今のでんぱ組.incは、過去最高に強いのではないかと。なお古川未鈴のX投稿では、今後特典会や各種イベント、更には最後の全国ツアーも企画中と記しており、ここからラストスパートで駆け抜けていってくれるのは確実だ。

でんぱ組.incを観ることが出来るのは、これが本当に最後。長年のファンも、少しだけ曲を聴いたことがある人も。全員が悔いのないようバリ3の電波を立てながら、残りの時間を過ごしていければと思う。

でんぱ組.inc「バリ3共和国」Music Video Full
でんぱ組.inc「バリ3共和国」Music Video Full
2025年をもって「エンディングを迎える」、『でんぱ組.inc』その軌跡

この記事をシェアする

この記事のタイトルとアドレスをコピー

この記事を気に入ったらハートマークで応援してください

この記事の執筆は……

キタガワ アイコン

キタガワ

島根県在住、会社員兼音楽ライター。rockinon.com、KAI-YOU.netなどに音楽関係の記事を中心に執筆。毎日浴びるほど酒を飲みます。

関連する記事



page top