怪獣をテーマにした漫画12選 『進撃の巨人』から 水木しげる『大海獣』まで おすすめ作品をピックアップ

1954年に『ゴジラ』の第一作が放映されてから、当時の子供たちはたちまち怪獣に夢中になりました。 それから何十年の時を得て、怪獣はいまや漫画やアニメ、そしてハリウッド映画などでも扱われるほどの存在として発展していきました。

そこで当記事では、そんな怪獣をテーマにしたマンガ作品を厳選して12作品ピックアップし紹介しています。

怪獣をテーマにした漫画12選

ヒーローは怪獣の処理屋で怪獣 『怪獣８号』

ジャンプ＋で連載中の人気作品。 怪獣が激増した架空の日本で、怪獣の死体処理の仕事をしている主人公 日比野カフカは、ある日奇妙な虫に寄生されて怪獣に変身してしまいます。

一見、ダークヒーロー的な設定ですがドタバタとしたギャグも多い、明るい作風で読みやすいのも特徴。万人が楽しめる怪獣漫画と言えるでしょう。 ジャンプ作品としてはめずらしく、主人公は三十代。 ヒロインである亜白ミナは、幼馴染であると同時に主人公より優れた処理屋であり目標にもなっています。

主人公の名前日比野カフカは、代表作『変身』で知られる作家フランツ・カフカにちなんでいるのでしょうか。

ジャンプ+公式サイトでは3話までと最新話が無料で、ジャンプ＋アプリからなら、最初の1回目は全話無料で読むことができます。

• 怪獣8号をジャンプ+公式サイトで読む

その日、人類は思い出した…ヤツらに支配されていた恐怖を
『進撃の巨人』

こちらも大人気作品。 100年以上前、10メートル以上もある恐ろしい生物『巨人』が現れ、人類は彼らから身を護るために、全高50メートルの巨大な壁を建造して自らを守ってきました。しかし、ある日、壁の高さを超える超大型巨人が現れて、壁を破壊して侵入。巨人に母親を食い殺された少年エレンは、巨人達への復讐を誓います……。

2009年に連載が開始された本作は世界的なヒットを飛ばし、アニメ化はもちろん、実写映画も製作されるほどの人気となりました。 序盤こそタイトル通り人型の大きい人間＝巨人達との闘いでしたが、中盤以降は異形の巨人達が戦う怪獣作品の様相を呈してきます。

何より、災厄によって浮き彫りにされる人間の業、数多くの伏線が張られ謎が謎を呼ぶ物語の深み、巨人という存在の謎など……怪獣作品にみられる重要テーマを踏襲しているようにも思えるのです。

正体不明の怪物と戦う区役所の日常
『有害超獣』

有害超獣（ゆうがいちょうじゅう）は、イラストレーターであるToy(e)氏がpixivに掲載したイラストと、そのコミカライズ作品。

元となるpixivの投稿では、ある島で発生した巨大生物＝有害超獣と、怪獣を対処している『区役所』という組織がまとめた報告書風のイラストとテキストで構成されています。想像力をくすぐるようなミステリアスさと、現実と非現実が混ざった不思議な感覚で楽しめます。

• Toy(e)氏 アカウントページ pixiv

そしてそのコミカライズ版では、区役所に配属された主人公である如月千騎と職員たちとの交流と共に、イラストだけでは語られなかった物語と戦いが描かれています。

Toy(e)氏本人による画集『Art File』シリーズと共に読むと、一層世界観が広がります。

氷漬けとなった世界で戦う、少年とロボット
『スノウボールアース』

特撮好きには、メカ好きと怪獣好きどちらが好きかで分かれるようですが、本作は前者……メカ好きな人に特にお勧めの作品。

流鏑馬鉄男（やぶさめ てつお）は銀河怪獣と戦うために、ユキオと名付けた巨大ロボットと共に戦っていました。最終決戦後に脱出ポッドで地球にたどり着いた鉄男が見たのは、雪と氷に覆われ、怪獣が跋扈するようになった地球でした……。

鉄男はロボットユキオと生き残った人類と共に、怪獣と戦い地球で生き延びようとします。 ロボットと怪獣との迫力のバトル、鉄男とユキオの絆や、生き残った人類との交流がみどころの作品。

日本の古き力を宿したヒーロー
『古代戦士ハニワット』

長野県の善光寺に2メートル以上の土偶のような怪物出現。ドグーンと名付けられたこの怪物を倒すために専門の対策チームが派遣されます。それが埴輪土（はにわど）と呼ばれる土でできた戦士で、この埴輪土を操るものは埴輪徒（はにわと）と呼ばれています。

評論家の岡田斗司夫が絶賛した事で一層注目される事となった本作は、古神道や古代史をモチーフに設定を作り上げられています。 単なる怪獣ものや東洋系ファンタジーではなく、日本古来の神やシャーマニズムの概念が入っている点がユニーク。

ドグーン（正式名称は蚩尤）と名付けられた怪物は、土偶そっくりなだけでなく、感情移入しづらい気味の悪いデザインとなっている点も、本作の作者の特異な才能を感じざるをえません。

打ち切りを救え！『古代戦士ハニワット』は令和に生まれた『進撃の巨人』を継ぐマンガ 岡田斗司夫ゼミ＃ 409（2021.9.5） / OTAKING sunday talk live # 409

徹底されたリアリズムで構成された怪獣漫画
『怪獣自衛隊』

令和X年に太平洋沿岸で津波が発生、その一か月後に海上自衛隊の護衛艦が突如巨大な生物に襲われる。強靭な外殻に覆われ、強大な力を持つ怪物に、自衛隊はなすすべもなく……。しかし、それは新たな災厄の序幕に過ぎなかったのです。

本作『怪獣自衛隊』はヒット作品『BTOOOM!』の井上淳哉氏が描いています。 また企画協力として、設定考証家の白土晴一氏（※）を迎え月刊コミックバンチで連載されています。

※白土晴一氏は他に、『ジョーカー・ゲーム』や『機動戦士ガンダム 水星の魔女』等の作品に関わる

シン・ゴジラの演出にみられるような自衛隊の対応がリアルに表現されています。 自衛隊そのものを主人公としたかのような、精緻な物語構成が見どころ。

少年ジャンプ発の怪獣漫画 『ジガ -ZIGA-』

物語は、一人の少年 蜂鐘コウ（はちが ねこう）のみた……巨大な怪獣が暴れまわる悪夢……から始まります。

それまで平凡な日々を過ごしていたコウですが、幼馴染である天城星羅（あまぎ せいら）とのデート中に夢に登場したものとそっくりな怪獣『ジガ』が現れ街を破壊。 コウは天城も、家族も失います。

少年ジャンプにて連載された本作は、迫力のある怪獣の作画や目を惹くアクションの作品。 物語の鍵を握る謎の少女『命令者』が序盤から登場しているなどしっかりとした伏線も見られ、バックボーンにはさまざまな構想・設定が在ったであろう力作である事を感じさせた作品です。 そして、これからいよいよ盛り上がる……という所で、単行本全2巻分の内容で終了してしまいました。残念。

2巻の末にはアフターストーリーも収録されています。

恋する乙女は怪獣だった 『乙女怪獣キャラメリゼ』

女子高生である赤石黒絵(あかいし くろえ)は、極端に興奮すると体の一部が異形に変形してしまう特異体質。症状が軽い時は好きな音楽（メタル）を聴きながら、好きな食べ物の事を考えて収めていますが、気になっている男子 南新汰(みなみ あらた)に急接近してしまうと、興奮は頂点に達し全長100メートルの乙女怪獣ハルゴンに変身してしまうのです。

思春期の少女の初恋や悩み、感情の高ぶりなどを、怪獣に変身してしまうことで表現している作品。 話の構成として少女漫画のようなスタイルをとっていますが、そこに怪獣の要素を加えることで、破天荒なギャグマンガへと昇華してます。 黒絵がなぜ特異体質を持つようになってしまったのかも気になるところ。

怪獣オタクと、ギャルの奇妙な日常
『いに怪することなく、獣じつしたひび』

眉毛の太い女子高生の倉田さんは怪獣が大好き。カメのキーホルダーを見ればガメラを思い浮かべ、掃除をしていればヘドラのことを考えてしますうなど、目の前の出来事をなんでも怪獣に例えてしまうほどの怪獣オタク。

そんな彼女といつも一緒にいる北川さんはいわゆるギャル。いつも不機嫌顔で彼氏の話ばかりしている。 ふたりの話が合うわけもない……のですが、なぜか妙に仲が良い。そんな性格の違う女子達の日常を描いています。

オタクにありがちなの空想に浸る日々を青春漫画として描いた作品。 怪獣好きな人なら思わず倉田さんに共感してしまうのではないでしょうか。

本校では怪獣が飼育されています
『怪獣の飼育委員』

日高唯音（ひだか いおん）と御統宙（みすまる そら）は、多々来（たたら）女学園に通う女子中学生。同校のある多々来市は怪獣と共生している町で、学園では怪獣を馴らす専門家である『テイマー』を育成しています。

日高と御統の二人は、ある日学校で飼っている怪獣の飼育員に任命されます。怪獣好きの御統に対して、怪獣のことを恐れる日高。 しかし、テイマーの適正は日高の方が高いようです。

怪獣と共生する女子中学生の日常を描いた作品で、どことなく絵本を思わせるようなほのぼのとした作風。日常と非日常が交差した不思議な世界観を描いています。

酔いどれ客はウルトラ怪獣！ 『酩酊！怪獣酒場』

とある居酒屋にバイトとして入った若者 うるま寅次郎。同僚はウルトラマンに登場する怪人ダダに怪獣ゼットン。チーフはなんとケムール人。ここは怪獣たちが働き、集まる『怪獣酒場』なのです。

『怪獣酒場』という名称からは、ウルトラマンのファンならエピソード『怪獣墓場』を連想せずにはいられないでしょう。もちろん本作に登場する怪獣もウルトラシリーズに出てくる怪獣達ばかり。

美食家の客には知性派で有名なナックル星人、酒癖の悪いレットキング、運の悪いジャミラなど、ファンであればニヤリとさせるような設定・展開も楽しい。 最強の怪獣ゼットンが、レットキングに手こずっている姿はちょっと笑ってしまいます。

全4巻に加え、第2シーズンとなる『酩酊！怪獣酒場 2nd』も全4巻が発刊されています。

怪獣漫画を先どった巨匠の慧眼
『ゲゲゲの鬼太郎 大海獣』

最後に紹介したいのは、ゲゲゲの鬼太郎に収録されているエピソードのひとつ『ゲゲゲの鬼太郎 大海獣』。

南の島にいる大海獣の調査に同行する鬼太郎。 悪人によって大海獣の血液を注射されてしまい、自身が大海獣に変身してしまうというSF的な展開。 実は、水木しげるは貸本漫画時代にはSFを描いていたこともあるのです。

今でこそ 『進撃の巨人』や『怪獣8号』のように主人公が怪獣（海獣）になるという作品も見かけますが、これを水木しげるは何十年も前に描いていたのです。 さらに作中ではメカゴジラのようなロボット怪獣を使って大海獣と戦わせる展開になるのですが、ゴジラ作品にメカゴジラが登場するのは本作の公開から約８年後のこと。 巨匠の慧眼おそるべし！

まとめ

バトル物もあれば日常系もあり、という紹介になりましたが、いずれの作品にも共通しているのは、怪獣という存在に作者達のとてつもない思い入れを感じる点でしょうか。

動物や人間が大きくなるだけではなく、オリジナリティをもったデザインで大自然以上の脅威となる『怪獣』という概念は、ハリウッド映画にも進出し、『SSSS.GRIDMAN』や『ゴジラS・P』のようにアニメ作品でも増えてきています。

怪獣を愛する人達がいる限り、今後も怪獣はさまざまな娯楽に取り込まれ増殖・発展を遂げていくでしょう。