ケヅメリクガメの『エサ』について、都内郊外に自生する『草』編 | uzurea.net

ケヅメリクガメの『エサ』について、都内郊外に自生する『草』編

執筆: 藤井洋子 アイコン 藤井洋子

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私はケヅメリクガメを20年ほど飼っています。

このケヅメリクガメは草食でして、エサになるのは主に草です。もちろん専用の餌や野菜を与える事もあるのですが、色々な理由から新鮮な草を与える事が必要と判断し、結果として真冬を除くほとんどのシーズン、私は家の近所を草刈りをしてそれを集めて歩いています。

という事で、今回はカメの食事……餌。特に日本国内でも採取できる『草』についての話をしようと思います。

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ケヅメリクガメに適したエサについて

そもそも、私がカメを飼い始めたのは20年ほど前の事で、当時は爬虫類ブームが一段落した頃、大きめのペットショップにはケヅメリクガメの他、グリーンイグアナヒョウモントカゲモドキなどが出回っていました。

現在では「特定動物」として申請とマイクロチップの埋め込みが必須のメガネカイマン(ワニ)も、普通に店頭に並んでいた時代でした。

現在と違うのはそれだけではありません。

現在では、リクガメには原産地と同じように牧草を中心に与えるべき、という考え方が主流ですが、当時の常識は違いました。 当時、ケヅメリクガメは大きくなるので、栄養価の高いものを与えるべき、という考え方が多数派で、多くのペットショップでそのように案内されていた様です。

また、犬にドッグフードがあるように、リクガメにもリクガメフードがありますが、当時は輸入品が中心で、国産フードは少なかったように思います。

今では考えられない事ですが、当時、一部のペットショップでは、カメ専用フードが手に入らない場合は、九官鳥フード(※)を与えるように指導していた事もあるそうです。

※注:九官鳥フードは高たんぱくで、肉類まで入っているので、草食性のリクガメには適さないエサです。フルーツの香りがするので、リクガメの食欲をそそるとは思いますが……。本当に今となっては信じられないような話です。

私の場合、九官鳥フードは与えていませんでしたが、ふかしたサツマイモ(カロリーが高すぎるので、お勧めできない。サツマイモなら茎や葉を与えるべきです)などは時々与えていました。

しかしながら、原産国(ケヅメリクガメはアフリカ原産)の風土を考えるに、これらを与えるのは控えるべきだったのだろうと思います。実際、栄養価の高いエサを与えすぎると甲羅が変形するのです。

当時でも知識が豊富だった人は牧草メインのエサを与えていたのですが、初心者だった当時の私は知識が足りていませんでした。これについては深く反省し、申し訳ない事をしたと後悔しています。そんな事もあり、現在はなるべく草類を多く与えるように気を付けているのです。

ケヅメリクガメのエサに適している『草』について

ひとくちに『草』といっても、その種類はさまざま。

リクガメの場合、メインのエサとなるのは、牧草やマメ科の植物。牧草は一般にイネ科の植物であり、空き地などに茂っている丈の高い『夏草』を想像していただけると、合っていると思います。

イネ科の例

イネ科の例

マメ科の植物では、カラスノエンドウやシロツメクサの類です。

カラスノエンドウ

カラスノエンドウ

シロツメクサ

シロツメクサ (別名 クローバー)

このほかに、オオバコやタンポポなども良いエサになります。

オオバコ

オオバコ

タンポポ

タンポポ

今、ここに挙げた草の中で、皆さんがご存知のものはどれくらいあったでしょうか? ……シロツメクサは分かるけど、カラスノエンドウってどんな草? という方も多いと思います。

私は田舎育ちだったので、雑草を見分ける事も少し慣れていたのと、実家でニワトリを飼っていた事もあり、毒のある草に関する知識も都会の方よりは豊富ではないかと思います。それでも、実際に空き地で草を刈っていると「この草ってなんだろう?」と思う事も少なくありません。そんな訳で、なんだか分からない草に出合った時は、その草の写真を撮って家に帰って調べる事にしています。

まずはウェブで検索したり、愛読書『原色牧野植物大図鑑』で調べたりして、草の種類を特定します。特定できたら、その草に毒がないか、また、カメにとって好ましくない成分が含まれていないかをチェック。

さらに、カメを飼っている人のブログや、ネットのカメ飼いコミュニティーなども参考にしつつ、検討を重ねます。

問題がないと判断できたら、次からはその草も『エサ』のひとつとして採取の対象になります。

もちろん、除草剤などの薬剤が掛かっていないのも重要ですので、『草刈り場』に関しては長期的な観察をして、薬剤散布が行われていないかどうかを見極めています。面倒臭いと言えば物凄く面倒臭いのですが、何せカメの命が懸かっているので疎かにはできません。

しかも、体重50kgオーバーのカメの食欲(※)はなかなかのものでして、毎日大量のエサを必要とするのです。そこで、庭に西洋芝とシロツメクサの種を蒔いていますが、これだけで足りるものでは無く、春から秋にかけては毎朝『近所一周草刈りの旅』に出る事になる、という訳です。

スーパーのレジ袋いっぱいの草を採取しても1日でペロリと平らげるので、足りない時は草に加えて小松菜などの野菜を加えて与えています……。

朝の日課 『近所一周草刈りの旅』

私の朝の日課『近所一周草刈りの旅』では、イネ科の植物を中心に、春から初夏はカラスノエンドウ、初夏から夏はカラムシヤブガラシなどを採取しています。

カラムシ

カラムシ

ヤブガラシ

ヤブガラシ

秋以降は「枯れずに残っている草」が中心となってきますので、イネ科の植物の生き残りやヤブガラシが多くなってしまいます。カラスノエンドウは群生するので採取しやすい草ですが、アブラムシが付きやすく、厳選する必要があります。

カラムシは繊維が豊富で良い餌になりますし、こちらも群生するので比較的採取が簡単です。

ただ、カラスノエンドウもカラムシも時々大きな芋虫や毛虫が付いている事があり、ギョッとさせられます。虫が付いているのは薬剤散布をしていない証拠ですので、餌的な観点からはとても良いのですが、やっぱりビックリしてしまいます。

イモムシ……

イモムシ……

ちなみに……ヤブガラシは『藪を枯らす』ほど茂る事からこの名がついたそうで、繁殖力がかなり強い草なのですが、50kg超のリクガメの住まう我が家の庭では、食べる速度の方が早くなかなか茂ってくれません。

また、蚕(かいこ)のエサとして有名なクワの葉はカルシウム豊富でカメにも良いのですが、残念ながら家の近所にはあまり生えていません。

クワ

クワ

土手に一本だけクワの木があるのですが、その土手はジョギングコースになっており、早朝でも人通りが絶えません。ひたすらクワの葉をむしっていると不審人物扱いされそうで、なかなか勇気が出ず我慢しているのが現状です。

ちなみに、カメにも好き嫌いがあって、私のカメの場合、カラスノエンドウやカラムシは好きですが、どうやらオオバコはあまり好みでは無い様です。庭に自生するオオバコは食べずに残っているので、見かける度に『食べればいいのに!』と思わずにはいられません。

餌収集の雑草刈りは人間との闘い……かもしれない

このように入念に下調べをして草を刈っているのですが、時には草刈り場そのものが消滅する事もあります。

私の住む東京郊外では、自治体や地元のボランティアが定期的な除草を行っていまして、昨日までは丈高く茂っていた夏草が丸裸になっていて愕然とする事も。カメを飼っていない人達(=世間の大多数)にとっては邪魔な雑草ですし、もちろん私の所有地ではないので、文句を言える立場にありませんが……。

草刈りをして、それを集めている所はやはり不信なのかもしれません……

草刈りをし、それを集めている所はやはり不信なのかもしれません……

また、草刈りをしていると、通行人によく声を掛けられます。

よくある質問は「何を採っているの?」「その草を採って何に使うの?」です。

正しい答えは「リクガメのエサとして雑草を採っている」ですが、そう言うとなかなか理解してもらえません。世間の人が思い描く「カメ」というのはミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)の類らしく、『リクガメが草食で草を食べる』という説明をしているととても時間が掛かります。

出勤前に草刈りをしている身としては、ゆっくり相手をしている時間はありません。とはいえ先方に悪気がないのは確かですので、あまり素っ気ない態度もとれません。悩ましい。

まさに「相手変われど主変わらず」。訊く方は一度だけのご興味で話しかけていただいていると思うのですが、私は何度も同じ答えを返さなくてはならず、やや辟易しているというのも正直な所です……。

中には親切な方が「その草ならあっちに沢山生えているよ」などと教えてくれたり、一緒に草を採ってくれたりして(折角親切にしていただいて申し訳ないのですが)これはこれで困りものです。

前述の通り、私が綿密に草について調べているのには理由があって、カメのエサに適さない草の他、毒草あり、適当に採るとそれらが混じってしまうのです。他の方が採った草を確認するのは結構大変ですし、さらに私が採取した袋に入れられてしまうと、家に帰って選別しなくてはならずこれも大変なのです。

※一度だけ、初めて会った知らないおじいさんが、毒草を見分け、選り分けながら見事にカラスノエンドウだけを採ってくれた事がありますが、これはかなりのレアケース。

親切にも教えてくださる「あっちに生えている同じ草」の方はどうかと言うと、残念ながら本当に同じ草だった事は少ないのです。

「私が採っているのはカラムシでして、あっちに生えているのはイタドリです。イタドリはシュウ酸(※)が多いからカメの餌に適さないんです」

……などという説明は大変ですので、草刈り場のご案内には「あとで行ってみます」とお愛想を言っています。

イタドリ

イタドリ

※注:シュウ酸:植物に含まれる有機化合物の一種。摂り過ぎると、カルシウムの吸収を阻害したり結石の原因になったりすると言われています。カメには甲羅があるのでカルシウムは重要ですし、ケヅメリクガメは結石の発生率が高いので、シュウ酸を多く含む草は避けたいところです。

意外に多い毒草について

さて、上でも少し書きましたが、草の中には毒があるものや、カメのエサに適さないものがありますので、折角ですのでそのあたりもご紹介しておきます。

そもそも、園芸植物にも毒のあるものが多く、水仙やスズランが有名です。あまり知られていないところでは、アジサイにも毒があります。

また、人間にとっては毒ではないけれど、カメには毒になるものも多くあり、シダ類やニラ、ノビルなどがそうです。人間だってシダ類はアク抜きしないと食べられませんが、カメが食べると「シダ中毒」になります。ニラやノビルも、犬猫にネギをやってはいけないのと同じで、カメにとっては毒となるのです。

そして実際のフィールドでは、毒のない草と毒のある草が混然一体となって「草地」を形成しており、しかも植生は日々変化するものですので、去年はカラスノエンドウとカラムシばかりだった草地が、今年はワルナスビばかり、というのも珍しくありません。

ワルナスビ

ワルナスビ

ワルナスビのように分かりやすくトゲトゲであれば、触った瞬間「駄目!」と分かりますが、緑色のイヌムギの中に緑色のノビルが混じっていると、見分けるのに苦労します。地べたにしゃがみ込んで目を見開き、鼻をくんくんさせて、毒草を避けるしかありません。

家に持ち帰った草に毒草が混じってしまったら、その袋は諦めて全部捨てる……という事もあります。ごく少量なら問題ないのかもしれませんが、カメに何かあってからでは遅いので、とにかく安全第一、の心がけです。

そんな訳で、草刈りを始めてから、私は植物に詳しくなったし注意力が増したと思います。

ちょっと脱線……クイズ・毒草を探せ!

実はこの写真、イネ科の植物に混じって、「カメにとっては毒になる草」が生えているのですが、どこにあるか分かりますか?

毒草を探せ!

↓ ↓ ↓

実は、ここでした!

実は、ここでした!

赤で囲んだ部分に生えているのは、野生のニラかノビルです。花が咲かないと見分けにくいのですが、鎌で切るとニラっぽい臭いがするので気づく事ができます。

まとめ

ケヅメリクガメが草を食べている写真……苦労が報われる瞬間

苦労が報われる瞬間です

以上、特定の方以外には興味がない上に、苦労ばかり感じられるであろう多い草刈りの話でした。

しかし、一般に草食動物は肉食動物に比べてエサの苦労が少ないと言われており、同じ爬虫類でも生餌しか食べないヘビを飼っている、といった方に比べれば、カメ飼いはまだ楽な方かもしれません。そして、採ってきた草をカメがムシャムシャと喜んで(?)食べているのを見るのは、苦労が報われる瞬間です。

カメは犬猫のように「一緒に遊ぶ」事ができないので、エサやりは数少ないコミュニケーションなのです。それに、草刈りをしていると季節の変化が肌で感じられるし、早起きになって私自身の健康にも良いのではないか、と思っています。

毎日の事で大変ではありますが、慣れればなんとかなるもの。

もし皆さんが、朝に道端で熱心に雑草を採取している不審な中年女を見かけても、そっとしておいていただけると嬉しく存じます……。

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